「仮面ライダー」「スーパー戦隊」「ウルトラマン」といった特撮ヒーローに欠かせない玩具商品として、変身アイテムや武器などの「なりきり玩具」は常に重要な存在感を発揮している。
古くは1971年『仮面ライダー』の「光る!回る!仮面ライダー変身ベルト」(ポピー)から、最近では『シン・ウルトラマン』(2022年)の「ウルトラレプリカ ベーターカプセル(シン・ウルトラマン)」や『仮面ライダーギーツ』(2022年)の「変身ベルト DXデザイアドライバー」まで、バンダイがこの50年もの間に発表し続けてきた「なりきり玩具」は膨大な数に上り、多くのファンたちに興奮と感動を与え続けている。
2012年からは「大人のための変身ベルト」をコンセプトに、従来の「DX(デラックス)」玩具よりも造形と塗装のクオリティを高め、劇中BGM、効果音、そして新規録音したセリフなどを盛り込んだハイクオリティー商品「CSM(COMPLETE SELECTION MODIFICATION)」も登場。新商品が発表されるたび、創意工夫に満ちた精密造形、豪華音声ギミックなどが充実を見せ、今や大人気シリーズとなって多くの玩具ファンから高い支持を得ている。
50年以上にわたってさまざまなIPのなりきり玩具を発売しているバンダイが今回、「なりきり玩具」をテーマにした展示イベント「NARIKIRI WORLD(なりきりワールド)」を初開催する(2022年10月28日から30日までの3日間、東京ドームシティ Gallery AaMoにて開催)。
これを記念して、バンダイ「CSM」開発担当のフナセン氏にインタビューを実施。10月28日よりPrime Videoにて配信開始した『仮面ライダーBLACK SUN』の変身ベルト玩具「COMPLETE SELECTION MODIFICATION 変身ベルト 世紀王サンドライバー」に至るまでのCSM開発秘話や、これまで作ってきた中で特に印象深かった商品について、そして「こんな商品が欲しい」というファンの思いを受け止め、より満足度の高い商品を作り出そうとする強い思いを語ってくれた。
――フナセンさんは第14弾「CSM NEWデンオウベルト」からCSMの担当になられたとうかがっています。ご自身がCSMを作られるにあたり、意識的に変えたこと、改良したことなどはありましたか。
「音」の構成や「劇中演出」の再現です。最初のCSMは「DXから外観の出来をより劇中に近づけ、大人が巻くに相応しいものを」というコンセプトで始まり、徐々に音声面にも新しい要素を付加して進化させていったのですが、自分が担当になってからはその中でも音声面の充実に特に力を入れまして、テレビシリーズ・映画などで様々に行われたたくさんの演出をおもちゃで再現できることを狙いました。効果音については東映さんとも連携して劇中の音声データも使用させていただきまして、それはプレミアムバンダイで発売するDX玩具でも手法が取り入れられるようになりました。
――2012年にブランドが誕生したCSMは、今年で10年という節目を迎えました。最初の頃にできなかったことが、現在ではできるようになったなど、商品開発の進歩について感じたことはありますか。
技術的なことは、世の中にすでにあるものが大きく進化したわけではありませんが、単純にそれを玩具に取り入れるか入れないか、という点については、より費用をかけてでも「玩具として新しいもの」を積極的に取り入れていくようになりました。最初のころは手探りで、何をどこまでやっていいかわからなかった部分が、シリーズを続けることによってお客様から求められる要素が整理され、実装されるようになった例は多いです。今度はBGMを入れて、変身音と同時に鳴らしてみようとか、アイテム同士で通信連動させてみようとか、DXではコスト上の制約が多くて実装できないような仕様を入れ込んでいき、より高い再現ができるようになりました。
――CSMに搭載されるさまざまなギミックの中で、これはチャレンジをしたなと思えるものはありますか?
「CSMブレイバックル」のプロジェクター投影機能です。ブレイドの大きな特徴である光の板=オリハルコンエレメントをどうやって再現しようかと考え、最初は変身ベルト本体に投影用のギミックを仕込もうとしたところ、物理的に仕込むのも難しく、また投影面積も大きくできないということで頓挫しかけました。最終的に「オリジナルの外付けアイテム」で画像を投影するという手法をひらめき、なんとか実現できたのですが、劇中に登場していないアイテム(プロジェクター)をつくってしまうというのはひとつのブレイクスルーになり、今後の商品開発でも可能性の幅を広げられることだったなと思います。
プロジェクターのデザインは、これまで数多くの仮面ライダーアイテムをデザインされてきたPLEXさんにデザインしていただきました。このプロジェクターは大きな反響をいただきましたね。
――「CSMブレイバックル」「CSMギャレンバックル」は、剣崎一真役の椿隆之さん、橘朔也役の天野浩成さんによるプロモーション動画が楽しい内容になり、評判も高かったですね。
特に天野さんはコメントがほぼアドリブで(笑)。それを狙って台本は簡易にしていたのですが、想像をはるかに超えた「会心の一発」が乱発されて、非常に愛すべき動画に仕上がりました。天野さんには本当に感謝しています。天才です。
――CSMで最もヒットした商品は第18弾「CSMオーズドライバー コンプリートセット」だとうかがいました。ヒットの手ごたえみたいなものはありましたか。
「CSMオーズドライバー コンプリートセット」のヒットは、映画『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL』(2017年)で仮面ライダーオーズ/火野映司(演:渡部秀)とアンク(演:三浦涼介)のコンビが「復活」したタイミングに合わせて発売したという部分が一番大きな要因だったと思います。今年は『仮面ライダーオーズ10th 復活のコアメダル』に合わせて「ver.10th」も発売しました。過去作の新規映像との連動でCSMを作っていくことは、作品への注目度もより高まらせることにもつながるので、今後もそのような機会があれば積極的に取り組んでいきたいと思っています。必ずしも作品の周年記念で毎回CSMを発売するのは難しいのですが、商品開発と記念周年・または新規の映像作品のタイミングが合いそうなときは、意識的に連動企画を行い、商品を展開していきたいと思っています。
――CSMシリーズの中で、開発が難しかった、苦労したものはどれでしょうか。
一番苦労したのは第25弾「CSMキバットベルト」と第26弾「CSMタツロット」です。無線通信でキバットバットⅢ世とタツロットが会話をしたり、「音声認識」でキバットと会話したり、などこれまでにない新しいギミックを詰め込みました。そのためこの商品のプログラム開発は本当に苦労しました。スケジュール維持のために中国出張もしていたのですが、出先ではずっと成型物・塗装品のチェックと、プログラムの修正・デバッグをし続け、その年の暮れまで滞在し、完成させました。当初予定していた出張期間で完成せず滞在延長になってしまい、大好きなアーティストの年末ライブに行けなくなってしまうという悔しいこともありましたが、その念は商品のクオリティー向上にすべてぶつけまして、結果完成した商品はCSMシリーズの中でもクオリティー・なりきり再現度が随一の物になったと思っています。