◆ RMMT 1.1(グラフ69~70)

RMMT 1.1
Rightmark.org
http://cpu.rightmark.org/products/rmma.shtml

  • グラフ69

  • グラフ70

今回もRMMTのみ。DDR5-5600の効果は絶大で、Read(グラフ69)で90GB/sec、Write(グラフ70)でも47GB/secもの帯域が確保されており、これが性能の底上げに貢献している事は間違いない。強いて苦言を呈するとすれば、定格(つまりOC無し)でDDR5-5600を達成できるメモリがまだ市場に出回っていない事だろうか? 2023年中に出てくるか? というと個人的には微妙な気がする(DDR5-5200は何とかなりそうだが)。OCメモリ前提で定格をDDR5-5600、というのはどうだろうという気がするのだが。

◆ 消費電力測定(グラフ71~78)

最後に消費電力測定を。グラフ71がSandraのDhrystone/Whetstone実施中、グラフ72がCineBench R23(All CPUとOne CPUの両方)、グラフ73がTMPGEnc Vide Mastering Works 7で4streamのX.265エンコードの最初の180秒、グラフ74がLinpack(Size/LDA=60000の条件で繰り返し1回)、グラフ75が3DMark FireStrike、グラフ76がMetro Exodus Enhanced Editionの、やはり2Kでのベンチマークの実効消費電力変動を示したものである。グラフ77がそれぞれの平均消費電力(と一部ピーク時消費電力)、それと待機時の消費電力をまとめたもの、グラフ78が個々の消費電力と待機時との差をまとめたものである。

  • グラフ71

  • グラフ72

  • グラフ73

  • グラフ74

  • グラフ75

  • グラフ76

まずグラフ71~76を見て頂くと判るが、Core i9-13900KはCore i9-12900Kと比べて間違いなく消費電力が増している。これまでCPU Benchmark(SandraのDhrystone/WhetstoneとかCineBench)で400Wを超えるのは稀だったし、TMPGEnc Video Mastering Works 7の様に全コア+DRAMフル駆動のアプリケーションでも500Wを超える事はなかった。実際TMPGEnc Video Mastering Works 7において、Core i9-12900Kだと、PL2の時でも450W程度でしかない。ところがCore i9-13900Kだと550Wほど。GPUを使わないのに100Wの上乗せはかなり大きい。Linpackでも同じで、Core i9-13900KはCore i9-12900Kに100W程度の上乗せがある。要するに「性能はあがるが消費電力もかなり増える」である。CPU負荷の少ない3DMark FireStrike Demoではそれほど差はない(とは言えちょくちょく600Wに達している)が、CPU負荷の増えるMetro Exodusでは650Wを超えている。マルチGPUとかならともかく、GPU 1枚とSingle CPUでこれは結構な電力食いである。

  • グラフ77

  • グラフ78

この傾向は平均消費電力(グラフ77)や平均消費電力差(グラフ78)を見るとより明確である。性能向上は上がったが、消費電力が増えた分で打ち消している感もある。例えばDhrystone/Whetstoneの効率(性能/消費電力比)を計算したものを表2に、Linpackの効率と消費電力量を計算したものを表3に示す。まずDhrystone/Whetstoneでは、WhetstoneこそCore i9-13900Kの方が少し効率が良いが、逆にDhrystoneではCore i9-12900Kの方が効率が良くなっている。これはLinpackも同じで、効率はCore i9-12900Kの方が良好である。だから電力量、つまりLinpackでSize/LDA=60000の計算を完了するまでの消費電力×時間は当然Core i9-12900Kの方が少なくなる。純粋に処理時間だけを見れば勿論Core i9-13900Kの方が高速だが、その分電気代は上がるという訳だ。時間を取るか、電気代を取るかでどちらが優秀かの判断が切り替わる訳だ。

■表2
Dhrystone Whetstone
Score 消費電力 効率 Score 消費電力 効率
GIPS W GIPS/W GFlops W GLlops/W
Core i9-12900K 683.28 222.2 3.08 466.25 220.8 2.11
Core i9-13900K 975.79 327.6 2.98 705.24 297.4 2.37
■表3
Linpack Score Power 効率 所要時間 電力量
Gflops W GFlops/W sec W・sec
Core i9-12900K 658.6116 250.9 2.62 216 54194.4
Core i9-13900K 900.3783 362.6 2.48 158 57290.8

考察

今回はPreviewであるが、おおよそRaptor Lakeの基本的な性格は示す事が出来たと思う。要するに

  • 性能はAlder Lakeから大幅増
  • それを埋めるほどに消費電力も相当に激増

である。Ryzen 7000シリーズのレポートの最後で、「消費電力盛り盛りのX付より、この後登場するであろう65W/105WのXなしSKUの方が、ずっと幸せになれそうな気がするのは気のせいだろうか?」と書いたが、まさかRaptor Lakeがこれと似たような、というより更に電力増の傾向になるとは(E-Coreをフルにブン回すようにした時点で消費電力が増える事は想像していたが)想像していなかった。

性能は確かに上がるし、これから冬を迎える訳で、熱にも気兼ねせず計算をブン回したいという人にはすごく良さげな製品に仕上がったというのは、別に皮肉でも何でもない(実際筆者の仕事部屋、気温が下がってベンチマーク中の発熱問題がわりとマシになった)。何というか、もう性能を引き上げるためには消費電力を上げるしかないという現在の半導体事情を物語る製品が、IntelとAMDの両社から出てくる辺りに、現状の限界の近さを感じている。何かの救いが、今後出てくると良いのだが。