映画『朝が来る』(2020)で国内の映画賞を総なめにし、NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』(2021)やTBS系金曜ドラマ『妻、小学生になる』(2022)での好演も話題となった女優・蒔田彩珠。最新作はアニメーション映画『君を愛したひとりの僕へ』(公開中)で、ヒロイン・栞役を務めた。2度目の声優挑戦でその面白さを感じたという蒔田にインタビュー。本作出演の感想や、「天職」だという女優業への思い、子役時代からの転機、さらに今後について話を聞いた。
『僕が愛したすべての君へ』と同日公開された『君を愛したひとりの僕へ』。乙野四方字氏の小説を原作とする2つの作品は、“並行世界”を行き来することができる世界で、1人の少年がそれぞれの世界で別々の少女と恋に落ちるラブストーリー。『僕愛』『君愛』2作品の主人公・暦を宮沢氷魚が担当し、『僕愛』で暦と恋仲になるヒロイン・和音を橋本愛、『君愛』で暦と恋仲になるヒロイン・栞を蒔田彩珠が演じた。
蒔田は、主人公の少女・カンナ役を演じた『神在月のこども』(2021)で声優に初挑戦し、その難しさを痛感。「1人で声を入れるというやり方ですごく難しくて、やり終えたときに『これは私たちの仕事じゃない!』と思いました(笑)」
だが、「今回お話をいただいて脚本を読んだらすごく素敵だったので、また挑戦してみたい」と、『君愛』のストーリーに引き込まれて2度目の挑戦を決意。「若いゆえに突発的に行動してしまったことで2人が悩まされていくそのはかなさがすごく切なくて、素敵だなと思いました」と語った。
本作では、主人公役の宮沢との掛け合いで収録。「1人でやるのと違って寂しくないというのが大きいです。演技の面でも、もともと入っている声に合わせるとそれと同じテンションになるように調節しないといけないのですが、掛け合いだとお互い息を合わせながらできるのでやりやすかったです」
演じた栞は、主人公・暦の父が務める研究所の所長の娘。「8歳から14歳まで演じたので、子供のときの声と成長したときの声の差を意識しました」。栞は自身と比べて「真逆の女の子」だと言い、「私は兄が2人いるのでサバサバとした男っぽい性格ですが、栞ちゃんはかわいらしいので似てないですね」と話した。
そして、2度目の声優挑戦で前回より面白さを感じたという。
「今回も難しかったですが、声優のお仕事だといろんな役になれる。いつもは自分がいて、このルックスでできることは限られていますが、声のお仕事だと男の子にもなれるし、人間ではないものにもなれる。普段のお仕事ではできない役になれるのでとても刺激的で、またやりたいなと思いました」
『僕愛』と『君愛』は並行世界をテーマにした物語で、2つの世界が絡み合い交差して、お互いがお互いの世界を支え合っている。
もし並行世界が存在したらどんな世界に行ってみたいか尋ねると「この仕事をしていない世界に行ってみたい」と回答。だがすぐに、「この仕事以外は全然想像つかないです」と言い、女優業は「天職です」と笑顔でさらりと言い切った。