テレビ各局で近年、深夜ゾーンを中心にクリエイター育成やコンテンツ開発を目的としたトライアル枠を強化させている。この10月改編でテレビ東京は、24時台の企画開発枠としては約3年ぶりとなる『ドラスティックマンデー』を月曜深夜に新設。日本テレビは、次世代の制作者の育成に主眼を置いた『フルスイング』を金曜深夜に配置した。
そうした中で、最も大胆な動きを見せたのがフジテレビ。従来の『月曜PLUS!』と『火曜NEXT!』(『水曜NEXT!』から枠移動)の2枠に加え、『火曜ACTION!』『水曜RISE!』を新設して倍増させた。
この狙いは何か。編成部企画担当の竹内誠氏と、深夜担当チーフの春名剛生氏という、ともに番組制作出身の2人に話を聞いた――。
■半年分に130以上の企画提案
フジテレビにおける近年の深夜のトライアル枠は、2020年10月にスタートした『水曜NEXT!』が1つの契機となった。「フジテレビらしい」「置きに行かない」「新しい笑いを追求」を掲げて前・後編構成を基本とし、3回目に放送された『トークィーンズ』はGP帯での特番を経て、今年4月から木曜23時台でレギュラー化。ほかにも、『日本一めんどくせぇ料理店』(GP帯の特番では『サンドの日本一めんどくさ~い料理店』に改題)、『かまいまち』、『バチくるオードリー』、『ボーっと過ごした人のへぇ~ノート』といった番組が、上の時間帯で特番化されている。
また、当時入社2年目の原田和実ディレクターが手がけた『ここにタイトルを入力』は、“収録済みのひな壇と、リアルタイムのMCの掛け合い”、“番組放送中に視聴者の意見を反映”というカオスな内容でSNSを中心に反響が集まり、社内クリエイターの刺激に。企画募集を行うと、半年分の対象に130以上の提出があったという。
こうした流れもあり、今年4月には『月曜PLUS!』を新設し、『ここにタイトルを入力』を全6回のシーズン放送。さらに、「次なるヒット番組を生む確率をより上げていく、そして多面的に生み出すべく動き出しました」(春名氏)と、今回の10月改編に至った。
■社内/外部クリエイターを対象とした裏目的
それぞれの枠の狙いを見ていくと、『水曜NEXT!』は、「次代を担うネクストクリエイターたちが、どんどん自分を磨きながら、新たな企画を世に送り出していく」(春名氏)という方針。今回の改編で『火曜NEXT!』(毎週火曜24:55~)に移行し、9月27日から人気YouTuber・コムドットの初冠バラエティ番組『コムドットって何?』(全6回)がスタートした。その後は、従来のような前・後編のラインナップを編成する予定だ。
『月曜PLUS!』(毎週月曜24:25~)は、「既存の番組に何かプラス・オンできるような新しいアイデアやバズを載せられるようなものを選んで編成する」(春名氏)という枠で、男女6人が恋愛マンガで起こりそうな様々な出来事を体験し、漫画を執筆していく新感覚バラエティ『恋愛トキワ荘』(全13回)が、9月5日からスタートした。
この2枠について、竹内氏は「『火曜NEXT!』は社内クリエイターの育成も裏目的にあって、番組の頭にプロデューサーと演出の名前を大きく入れています。一方の、『月曜PLUS!』は、外部の優秀なクリエイターの皆さんにもフジテレビで立っていただきたいという思いも、大きいです」と明かす。
また、ドラマの開発枠として、『火曜ACTION!』(毎週火曜24:25~)を新設。「バラエティは3枠ありますが、ドラマはこの枠しかないので、『火曜NEXT!』的な社内クリエイター育成の意味合いもあります」(春名氏)といい、第1弾として『アイゾウ 警視庁・心理分析捜査班』(10月11日スタート ※初回のみ25:25~、全8話)、第2弾は『ブラック/クロウズ ~roppongi underground~』(12月13・20日、全2話)を放送する。
■とにかく機会を増やすことが大事
そして、バラエティの『水曜RISE!』(毎週水曜24:25~)は、RISE=上昇するの意味の通り、「より明確な意志を持って次のGP帯のヒット番組を狙えるような企画を置きます。ある程度の話数を放送することによって、じっくり見ていく。そうすると制作者も何回か収録していくうちに変化をつけられて、実際にGP帯に上がったときのためにいろんなことを試していけるという戦略を持っています」(春名氏)。
第1弾は、誰も調べたことがないせまい歴史をプレゼンするバカリズムMC『私のバカせまい史』(10月12日スタート ※初回のみ25:15~、全6回)。第2弾は、世間で過小評価されている“もっと評価されるべき”ものを有名人がプレゼンする劇団ひとりMC『#もっと評価されるべき!審議会』(11月23日スタート、全6回)が放送される。
竹内氏は「1回や2回の単発番組で結果を出すのは、難しいところがありますが、6回というレギュラー運用をしていくことで生まれるものがあると思うんです。それはヒットコーナーの芽だったり、もしくは人気者であったり。そういう要素が出てくると、GP帯に行ったときに、スタートダッシュを切りやすいという意味合いがあります」と狙いを語った。
土曜昼帯にも、『土曜RISE!』(毎週土曜13:30~)を新設するが、「基本的には同じと思っていただいていいです。個人的には、昼のほうが浅めのGP帯、深夜のほうが遅めのGP帯を狙うという意識もありますが、『水曜RISE!』で『これは19時台のほうが向いてるな』と思ったらその編成でいく可能性もあると思います」(竹内氏)という位置づけ。
春名氏は「このように戦略を練りながら編成していきますが、正直言うと、結果がどうなるかというのは、実際に放送してみないと分からないことが多いんです。僕らがこうなってほしいと考えていたのとは全然違う角度から話題になることもあると思うので、今回の改編で枠を増やしてとにかく機会を増やすことが実は大事で、こちらとしてもできるだけフレキシブルな姿勢でいるつもりです」とした。