俳優の宮沢氷魚が、アニメーション映画『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』(10月7日公開)で声優に初挑戦した。2015年に『MEN'S NON-NO』専属モデルとしてデビューし、2017年より俳優としても活動。先日最終回を迎えたNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』ではヒロインの夫を演じるなど、着実に存在感を高めているが、声優挑戦は自身にとってどんな経験になったのか。また、俳優デビューから5年での成長・変化や、今後についても話を聞いた。
乙野四方字氏の小説を原作とする2つの作品は、“並行世界”を行き来することができる世界で、1人の少年がそれぞれの世界で別々の少女と恋に落ちるラブストーリー。『僕愛』『君愛』2作品の主人公・暦を宮沢氷魚が担当し、『僕愛』で暦と恋仲になるヒロイン・和音を橋本愛、『君愛』で暦と恋仲になるヒロイン・栞を蒔田彩珠が演じた。
――声優初挑戦となりましたが、オファーを受けたときの心境から教えてください。
うれしさと不安と両方ありました。最初は正直、自分の声でお芝居できる自信がなかったので、どうしようと思ったのですが、台本を読んでとても面白いなと。これやりたいと思い、僕に声をかけてくださった皆様に感謝しています。
――ご自身もパラレルワールドについて考えることがあり、パラレルワールドがテーマの物語に惹かれたそうですね。
毎日考えているわけではないですけど、ふとした瞬間にこの世界線だけがすべてではないんだろうなと考えることがあります。この物語ではパラレルシフトが可能で、しかもオプショナルシフトという、自分が行きたいところに行けるというのはとても面白いなと。僕が生きているうちに移動できるようになる可能性もあるのではないかなと思いました。
――パラレルシフトが可能になったらどうしたいですか?
すごく近いところにシフトして、自分の周りの環境がどう変わっているのか、自分の日々の小さい選択の積み重ねがその瞬間の自分を作り上げていると実感できたら満足です。物語の中でも、遠いところに行くとトラブルが起こってしまうということだったので、それは起こしたくないです。
――いつか声優をやってみたいという思いはあったのでしょうか?
よく朝のテレビ番組で俳優さんがアニメに挑戦した公開収録の様子を見て、これは難しそうだなと。皆さん「難しい」とコメントされているので、やりたいやりたくないということ以上にできないだろうと思っていました。しかも、自分に声がかかるとは思ってなかったので。今となっては本当にやってよかったなと思います。
――本作のイベントで「普段お芝居をするボリュームよりも上を目指して出さないと自分の声が画に負けてしまう」と声優の難しさを話されていましたが、面白さは感じましたか?
面白さもたくさんありました。やっているときはいっぱいいっぱいで、この日できるものを出し切って帰ることしか考えられなかったですが、自分が声を乗せることによって作品がどんどん成長していく過程を見ると、自分が大きく関わっている作品になったなと感じることができましたし、改めて声の重要さを感じました。
――声の重要さについてはどう感じましたか?
普段の芝居だと、声や表情、動きなど、体の表現すべてで演じることができますが、今回は声だけだったので、声ですべてを表現する難しさをすごく感じました。今まで演じた作品でも声や言葉を大事にしていましたが、どこかほかの表現に甘えていた部分もあって、声だけで勝負となったときにまだ納得できない瞬間がいくつもあって、自分の声のキャパシティーをもっと広げていこうと、それに気づかせてくれた作品になりました。
――声のキャパシティーを広げていくことは、普段の演技にもプラスになりますよね。
そうですね。悲しいシーンは泣いたり、うれしいシーンは笑顔になったりして、だいたい気持ちが伝わりますが、声だけでどういう感情なのか、どういう物語なのか伝わるくらい極めていきたいです。