●20分アニメの予定がまさかの30分アニメに

──そうた監督の作品はプレスコというイメージがありますが、今回はアフレコだったんですね

そうた監督 CGが先に出来ていたので、今回はアフレコで収録しました。Bパートのアドリブ大喜利のところは音声に合わせてCGを作ることになりますが、そこはあまり時間も掛からないので。それで声も録って、Bパートまで出来上がった段階でTOKYO MXさんに連絡したら、20分枠の予定がいろいろ相談していくうちに30分枠に変更になり、放送も半年後に決まりました。

──作品自体は出来上がっているわけですから、後は座して待つという感じでしょうか?

そうた監督 いやいやいや。よく考えたら、プロデュース業とか根回しとか、そういうものが何にも出来ていなかった。普通ならクラウドファンディングとかYouTubeを使った宣伝とか、いろいろあるじゃないですか。半年なんてあってないような時間ですから、これはちょっとやばいなって。だから、できる範囲でブラッシュアップしようと思い、どうせならトコトン良い人に協力してもらおうということで、オープニング映像を友人の大月壮くんに、エンディングの映像をビームマンPさんにお願いしました。

──TOKYO MXでの放送の最後に『ネットミラクルショッピング』が流れるのは枠が拡大された影響だったんですね

そうた監督 実はそうなんですよ。足りない10分をどうしようと思ったとき、“人生の集大成”として発表するなら、初めてアニメの監督を務めた『ネットミラクル』もあらためて皆さんに観ていただきたいなと。サイズ的にもちょうどだったので、ビクターさんとMBSさんに連絡して、放送させてもらえることになりました。これは本当に感謝ですね。

●原作者としての自分とアニメ監督としての自分

──実際に『5億年ボタン』をアニメ化してみての感想はありますか?

そうた監督 20歳の頃の自分が観たら、「あれ?なんでキャラが女の子になってるの?!」って驚くかもしれません。若い頃はめちゃくちゃクールに斜に構えて、ひねくれてて、女っ気ゼロで、女になんか興味がない、みたいなスタンスでやっていたのに、めちゃくちゃ女の子大好きじゃん、みたいになってますからね。だから、20歳の頃から応援してくれている人からすると、こんなのは違う!と思う人も中にはいるかもしれませんが、30歳くらいからめちゃくちゃ萌えカルチャーが好きになったので、今の自分にとっては、このバランスがいい感じなんです。

──萌えを追求した結果なんですね

そうた監督 その折衷案として、前半パートでは哲学多めの硬派な感じにして、後半パートで女の子を愛でられるような構成にしている部分はあります。やはり、緊張と緩和はお笑いの方程式なので、ギャグとしてもこれくらいの緩急がちょうど良いのかなと思っています。ただ、実際に観ている人がついていけなくなっているようなところもあって、前半は好きだけど、後半は嫌だ、みたいな人もいますね。特に前半を面白がってくれている人からは、後半があるせいで損をしているみたいなことを言われることもありますが、後半も自分が本当にやりたいことなんですよ。ニコニコでは後半が「ほんへ(本編)」と言われるくらい盛り上がってますし、中の人(声優)の魅力でキャラがめちゃくちゃ愛せる形式になっていますし。だから、前半で頭をフル回転させて、後半でとろけさせるみたいな感じで、ひとつの番組としての緩急を楽しんでほしいです。

──菅原そうたの集大成という意味で言えば、『ネットミラクルショッピング』があって、『gdgd妖精s』があって、その中で培われてきたテイストの集大成じゃないかと思います

そうた監督 例えばアドリブパートの場合、長尺で回して、本当に面白いところだけをつまむという方法もありますが、今回は上手くいかなかったところや、ちょっとダレてしまったところも、できるだけそのまま見せるようにしています。そのあたりのリアリティって逆に面白くないですか?あと、アドリブパートは緩さと生感を浮き彫りにするために、CGもわざとクオリティーを落としていたりもします。背景を質素にしたり、解答者のテーブルを無個性の無味乾燥なものにしたりして、なるべくクオリティーを下げることで、中の人に焦点があたるような作りにしています。少しの綺麗さも、少しのおしゃれさも、笑いの邪魔になる可能性がありますから。