2002年に菅原そうたが描いたCGコミック『みんなのトニオちゃん』の1エピソードとして発表され、その登場以来、思考実験のひとつとして、長くインターネット上で議論が繰り広げられている“5億年ボタン”。
その“5億年ボタン”が、『5億年ボタン【公式】~菅原そうたのショートショート~』として、原作者・菅原そうたの手によってTVアニメ化され、2022年7月~9月に放送された。
5億年ボタン…
そのボタンを押すと100万円が出てくる…
その代わり5億年間何もない空間で過ごさなくてはならないというバイト…
しかし、5億年経った瞬間、
記憶は消され元の状態
押した本人の感覚では
一瞬で100万円というバイト…
5歳のトニオ 14歳のジャイ美 17歳のスネ子の3姉弟は
入院中の父親の治療費が払えず途方に暮れていた…
そんなとき 3姉弟の前に、
5億年ボタンをもった人物が現れるのであった…
(公式サイトより引用)
これまでに『ネットミラクルショッピング』や『gdgd妖精sシリーズ』、『なりヒロwww』、『Hi☆sCoool! セハガール』、『gdメン』、『でびどる!』など、数々のアニメ作品を手掛けてきた菅原そうたが、“人生の集大成”と位置づけるTVアニメ『5億年ボタン』。そのクレジットを見ると、ストーリー同様、ギャグのように“菅原そうた”の名前が並ぶ。
原作/監督/企画/シリーズ構成/構成/脚本/キャラクター原案/キャラクターデザイン/作画監督/音響監督/音響演出/コンテ/Vコンテ/編集/色彩設定/美術監督/プロダクションデザイン/ロゴデザイン/撮影/エフェクト/VFX/モデリング/モーション……このすべてが菅原そうた1人の手によって行われているのだ。
まさに前代未聞とも言える『5億年ボタン』がいかにして制作されたか?実際に放送されての手応えはどうだったのか?菅原そうた監督にあらためて振り返ってもらった。
●『5億年ボタン』のアニメ化は“人生の集大成”
──今回、『5億年ボタン』をアニメ化しようとしたのはなぜですか?
菅原そうた監督 “人生の集大成”ですね。20歳のころに漫画家としてデビューしたとき、いつかこの漫画がアニメ化されたらいいなと思っていた。それが漫画家時代の僕の夢。その後、CGや動画のクリエイターになり、3分や5分のアニメを作れるようになった。そして、ようやく30分のアニメを作れるようになった今こそ、20歳のころの夢を実現するタイミングなんじゃないかと。まさに、20歳のころの漫画家の夢を、40歳のアニメ監督の自分が叶えたという感じです。
──まさに長年の夢を叶えたわけですね
そうた監督 これまでにもアニメ化しましょうと声を掛けていただいたこともありますし、自分でも作りたいという気持ちはずっとあったのですが、なかなか実現はできず。そんな中、病気になり、退院後にインドに行ったり、ニューヨークに行ったりしていたのですが、ニューヨークの道端で座り込んでいるときにふと、よし作ろう!と(笑)。それが2019年の話です。
──思い立ったが吉日という感じですが、そこからはどのような制作過程だったのでしょうか?
そうた監督 まずはトニオちゃんの漫画を全部見直して、面白いエピソードをピックアップして、脚本を書くところから始めました。そして、自分の声で音声を録って聞いてみたのですが、面白い回もあれば、本当につまらない回もある。映像がないから余計なんですけど、想像してみても全然面白くならない。音声だけでも面白かったのが「シンクロ地球儀」で、だから第1話の最初に持ってきたのですが、そこから他のエピソードを足したり、引いたりの作業を繰り返して、尺を調整しながら、何とか12話分にまとめた感じです。
──実際のCG作成にはどのくらいの時間を掛けたのですか?
そうた監督 だいたい、1話作るのに1カ月くらい掛かっています。CGは、2日で作ったものより1週間で作ったもの、1週間で作ったものより1カ月で作ったもの、時間を掛けただけクオリティが上がります。自分は、そこまでCGが上手いわけではないので、5点が20点になるくらいなんですけど(笑)、それでも時間を掛けた分だけ良くなります。そして、テレビで放送する3DCGアニメだと胸を張って言えるくらいまで仕上げるのには、どうしても1カ月は掛かる。その意味で、ちゃんと1話に1カ月掛けることができたのは、自分の中でも大きかったです。
──12話で構成したということは、最初からTVアニメとして発表することを考えていたわけですよね
そうた監督 テレビで放送したいというのは最初から決めてました。テレビで放送しつつどうするかというのが次の課題で、テレビで放送しつつYouTubeにもアップするか、動画配信サイトにお願いするか。今回は配信という形になりましたが、『5億年ボタン』は本来YouTubeとの親和性が高いはずなのに、忙しさで動けず全然ちゃんとしたことができなかったので、そのあたりはもう少し考えたかったところではあります。
──当初、放送時期はいつ頃だと考えていたのですか?
そうた監督 最初は2021年の夏くらいかなって、漠然と考えていました。それで声優さんをどうしようかと考えていたら、なんと野沢雅子さんが出てくれることになり、そのほかのキャラクターも人気のある声優の方が出てくれることになった。そうなると、今度はアフレコなどのスケジュールを調整する必要が出てきて、2021年の夏というのはちょっと難しいかなって。