◆消費電力追試、N5プロセスの特性(グラフ90~91)

最後にもう一度消費電力測定だが、今度は絶対的な消費電力ではなく、ちょっとTSMCのN5プロセスの特性を調べてみるべく、動作周波数と消費電力の関係を測定してみた。ちょっと前になるが、Comet LakeとZen 2コア製品の比較と同じやり方だ。今回は表1の環境のまま、Ryzen 7 7700Xのみを対象に行ってみた。

  • グラフ90

  • グラフ91

やり方は簡単で、Ryzen Master(Photo40)を利用して動作周波数を600MHzから100MHzづつ引き上げながら、AIDA64を利用してCPUとMemoryに負荷を掛け、その際の温度変化をCoreTempを使って確認する、というやり方で確認した(Photo41)。消費電力そのものはシステム全体のものを測定している。負荷は概ね2分ほど掛け、うち最後の1分の平均を取った格好だ。

  • Photo40: これは2.5GHzでの状況。ちなみにRyzen MasterはZen 4に対応したBuild 2.10.0.2201を利用した。

  • Photo41: AIDA64の最新版でもCPU温度が測定出来なかったため、CoreTempを併用した。ただCoreTempの方も、消費電力測定の方は明らかにおかしかったので、こちらの数字は無視した。ちなみにこれがギリギリ駆動できた限界(4.9GHz)である。

で、そもそもZen 2の世代も、動作周波数と消費電力の関係が割とリニアというか、Intelと違ってあまり指数曲線的に増えない傾向があったが、ではZen 4は? というのがこちら(グラフ90)。なんでか1.4GHz→1.5GHzで消費電力が減る、という不思議な傾向があったのだが、それはともかくとして4.9GHzまで割とリニアに消費電力が増えてゆく傾向が今回も確認できた。ちなみに5GHzは、Ryzen Masterで設定する事は可能だったが、AIDA64で負荷をかけた瞬間にシステムリセットが発生したので、4.9GHzで打ち止めである。破線は近似であるが、傾きは15.827W/GHz程で、これはRyzen 7 3800X(21.541W/GHz)に比べてだいぶ低くなっている。また4.5GHzで打ち止めだったRyzen 7 3800Xから400MHzほど上に伸びているあたりも、プロセスそのものの変更が低消費電力化と高速化に貢献していることが確認できると考えて良いかと思う。

ちなみにグラフ91はCoreTempを用いて測定した、動作周波数とCPU温度のピーク値の関係である。こちらでも1.4GHz→1.5GHzで微妙に温度が下がっているのは、やはり消費電力が減ったためと考えられる。それはともかくとして、4.9GHzで105℃に達しており、このあたりが動作的に限界だったと考えられる。ただこちらも周波数に合わせて単調増加になっており、傾きは概ね13.389℃/GHzといったところ。OC動作とかになればまた跳ね上がるのだろうが、普通に使う分にはこの程度で収まっているのはやはり低いと言える(ちなみにこれは8コア全てがフル動作での温度なので、1~2コアのMax Boostとはまた状況が異なる)。とは言え、これ360mmラジエターを搭載した簡易水冷クーラーでの数字である事を考えると、やはりもう少し消費電力を減らさないと発熱的に厳しい感じだ(そもそも5GHzに到達しなかったのは、消費電力よりも発熱がネックになったためと思われる)。

考察

ということで駆け足にRyzen 7000シリーズの性能をご紹介した。簡単にまとめると

  • 性能は確かに上がった。
  • その分消費電力も増えた。

という事に尽きる気がする。性能の向上はもう説明の必要もなく、Alder Lakeを凌いでいる。これで次のRaptor Lakeに勝てるか? というとまだ未知数な部分はあるが、モノによっては良い勝負になりそうに思える(Raptor LakeのSTで15%、MTで41%という性能向上はどんな場合にも通用するものでもなさそうだからだ)。

その一方で、場合によってはAlder Lakeを凌ぐ消費電力になってしまったのは、ちょっと残念である。どちらかと言えば、消費電力盛り盛りのX付より、この後登場するであろう65W/105WのXなしSKUの方が、ずっと幸せになれそうな気がするのは気のせいだろうか?

あとは、ご時勢なので仕方ないのだが、非常に残念なのが日本国内向けの価格である。AMDの公式発表によれば

  • Ryzen 9 7950X:\117,800
  • Ryzen 9 7900X:\92,500
  • Ryzen 7 7700X:\66,800
  • Ryzen 5 7600X:\49,900(いずれも税込み)

となっている。換算レートは(消費税の分を抜いても)\151/$~\153/$と結構高めである。まぁこれは何といっても円安が影響しているという話もある訳で、AMDの責任ではないのかもしれないが、ちょっと厳しいところだろう。