脚本や、その物語に対する監修…それらのこだわりの1つ1つを、全て最大化させることに成功したのが、羽住英一郎監督だ。
「普通の連ドラは複数の監督が担当するので、1日で何回か監督が入れ替わったりするんですが、今回は地上波の全話を羽住監督1人が担当しています。監督はいつも現場の最前線にいて、助監督よりも役者さんの近くにいるような方で、全ての現場をコントロールして、演出もして、編集も撮影準備も並行してやっているので、ホントに“超人”なんじゃないかなと思います(笑)」
そんな羽住監督の原動力は、一体何か。
「体力もそうなんですけど、すごくモチベーションが高くて、映画と撮影現場が本当に大好きな監督さんなんですね。だから今日もゲラゲラ笑いながら楽しそうにお仕事をされています。これだけエンタテイメント性があって、スケール感も出せる。そして映画だけじゃなく、1時間ドラマ10本のドラマをまとめられる監督は、日本にはなかなかいないですよね。本当に屈指の監督だなと感服しております」
「科学犯罪対策室」という組織を中心に展開する今作は、ともすれば研究室だけの閉塞感のある画になりがちだが、ロケーションを多用した映像も特徴となっている。これも、羽住監督だからこそ実現できたことだという。
「1日に同じ場所で1つの場面だけ撮るというのは実は少なくて、脚本も全話あるし、監督も1人で演出されているので、同じ場所のいろんなシチュエーションで複数の話の撮影ができて、移動が少なく、時間もかけられるんですね。それをそれぞれの話で編集すると、いろんな場所へ行っているように見えるし、画の質も高くなったということなんです」
さらに、羽住監督率いる映画チームで撮影しているため、「いわゆる地上波のドラマっぽくないというか、映画だったり海外ドラマみたいなリッチな質感が出せているなと思います」と教えてくれた。
■どの表情も説得力があるディーン・フジオカ
出演者の魅力を聞いてみると、主人公の小比類巻祐一を演じるディーン・フジオカについては、「すごく芯がしっかりしている方で、その上で実はいろんな顔を持ってらっしゃるというところだと思いますね。今回で言うと、夫や父親、仕事上でのリーダーだったりと、いくつかの顔を持つ主人公でなければいけないので、それぞれのいろんな表情がどれもすごく説得力があるなと思っています」と解説。
その中でも印象に残る一面は、娘・星来を演じる鈴木凜子ちゃんとのシーンで見せる父親の顔だそうで、「普段、凜子ちゃんといるときは本当に父親なんだなあという表情で、一緒に遊んでいたりとても温かい雰囲気なんです」と目を細める。
一方で、「ディーンさんはとてもプロ意識が高い方なので、『子役でもちゃんと現場で結果を残さないといけないんだから』ということもおっしゃっていて、そういう切り替えの部分もすごいなと思いました」と感心。今作の主題歌「Apple」を手掛けているのもディーンだが、「別人のアーティストさんに依頼したような、素晴らしい楽曲を提供してくださったので、俳優だけでなくミュージシャンであるという面も含めて、芯がしっかりしている上で、いろんな顔を持っているなと思いました」と印象を語った。
ある一件で科学界から退いた天才科学者・最上友紀子を演じる岸井ゆきのについては、「同じ世代の女優さんでも間違いなく期待値の高い方というのはもちろんなんですけど、とにかく元気な方なんですよ(笑)。現場でもずっと元気で、いつも何か食べたりしながら楽しそうに笑っている姿が印象的ですね。ディーンさんとも共演したことがあるので、最初からバディとしての相性も良かったですし、ユースケさんとの3人の関係性が、カメラが回っていないところでもとても良いんですよね。最上は闇を抱えているのにあっけらかんとしていなきゃいけないという難しい役なんですけども、さすが岸井さんという感じで、しっかり演じてくださっているなと思います」と信頼。
科学には疎いが、優秀な刑事・長谷部勉を演じるユースケ・サンタマリアについては、「天才的な対応力の持ち主ですよね。最近は悪役だったりクールな役も多かったと思うんですが、今回はコミカルなユースケさんをやってみてほしいというのがありました。羽住さんとは『踊る大捜査線』(フジテレビ)以来の関係性もあるので、久しぶりにこういったキャラクターを自由にやってくださっているという感じですね。長谷部は後半、刑事としての格好良さみたいなものもかなり出てくるので、締めるところはバシッと格好良く決まって、本当にユースケさんで良かったなと思っています」と、起用に手応えを持ったそうだ。