◆消費電力測定(グラフ49~56)
最後に消費電力を測定してみた。Sandra 2021のDhrystone/Whetstone(グラフ49)、CineBench All CPU(グラフ50)、CineBench Single CPU(グラフ51)、TMPGEnc Video Mastering Works 7(グラフ52)、3DMark FireStrike Demo(グラフ53)、Metro Exodus 2K(グラフ54)の6つを測定、それぞれの平均値をグラフ55、平均値とIdle状態の差をグラフ56にまとめてみた。
バリュー向けということでRyzen 3 4100とRyzen 5 4500はTDP 65W、Core i3-12100FがBase Power 58W/Maximum Turbo Powerが89Wで、Photo05/06にある様にRyzenの側もMax TDPが88W設定になっているあたり、ほぼ同等の消費電力レンジに収まっていると考えてよいと思う。
実際に動作を見てみると、予想通りRyzen 3 4100がもっとも省電力ではあるが、次がCore i3-12100Fで、一番消費電力が高いのがRyzen 5 4500という結果になった。これはグラフ56からも明白で、Ryzen 3 4100はCineBench AllとかTMPGEnc Sustained、Dhrystone/Whetstoneなどで他に比べて10W以上低い消費電力であり、まぁ性能とのバーターと考えればこれは納得いく。納得いかないのはRyzen 5 4500の方で、この消費電力ならCore i3-12100Fと互角の性能を期待したいところだが、3年前の製品にそれを求めるのは酷だろう。むしろ3年前の製品でありながら、ここまでAlder Lakeに近い性能を出せる事を誉めるべきだろうか?
ちなみにSandraの結果は示していないが、Dhrystone/Whetstoneに関しては
Ryzen 3 4100 | Ryzen 5 4500 | Core i3-12100F | |
---|---|---|---|
Dhrystone Long | 195.62 GIPS | 292.86 GIPS | 204.33 GIPS |
Whetstone Single | 116.00 GFLOPS | 174.37 GFLOPS | 140.37 GFLOPS |
となっており、ここから効率を計算すると
Ryzen 3 4100 | Ryzen 5 4500 | Core i3-12100F | |
---|---|---|---|
Dhrystone Long | 4.42 GIPS/W | 5.07 GIPS/W | 3.62 GIPS/W |
Whetstone Single | 2.82 GFLOPS/W | 3.22 GFLOPS/W | 2.66 GFLOPS/W |
と計算される。意外にも効率そのもので言えば、Ryzen 5 4500が最高で、次点がRyzen 3 4100、一番悪いのがCore i3-12100Fとなったのはちょっとした驚きであった。
考察と総評 - とにかく今、低価格で組みたいなら
ということで、最後の消費電力効率のところで一矢報いはしたものの、基本的にRyzen 3 4100/Ryzen 5 4500はCore i3-12100Fの敵にはなり得ない。価格性能比で言うなら、もしRyzen 3 4100が$69とか$79、Ryzen 5 4500が$99で出ていれば割とバランスは良かったと思うのだが、今回の値段($99/$129)ではやや競争力に欠けると言わざるを得ない。
まぁ今回の構成の場合、Core i3-12100Fはまだやや高価なDDR5を組み合わせているのが反則ではあり、これを加味するとIntelの方がトータルで1万ちょっと値段が上がってしまう。逆にDDR4にすればここまでの性能差は無いかもしれない。ただ間もなくAMDもDDR5を利用するRyzen 7000シリーズを発表するであろうという事を考えると、今更DDR4を導入するというのもちょっと将来性に欠けるところがある。
こうした事を考えると「将来性は無くてもいいから、とにかく今低価格でPCを組みたい」というユーザーにしかお勧めできないのが苦しいところ。Ryzen 3 4100は、Gamingとか要らないから安価にという向きであるが、そうなるとそもそもDiscrete GPUが必要な時点で低コストにはなり得ない訳で、内蔵GPUが無いのがネックになる。OEM OnlyではRyzen 3 4300Gがあるが、こちらは一般に流通していないので、現実的にはRyzen 5 4600Gが最低ラインになる。割と使い方が難しいプロセッサである。
これに比べると、Ryzen 5 4500の方は、それでもGeForce RTX 3060クラスのGPUならCPUネックをあまり感じさせずに使える最低ラインをクリアしていると言える。ローエンドGaming PCを今すぐ組みたいといった場合には良い選択肢になるだろう。ローエンドだとGPUの方も、それこそRadeon RX 6400/6500とか、GeForce RTX 3050あたりも視野に入ってくる(もしくは値段の下がってきたGeForce GTX 1660クラスとか)。この辺りのGPUであれば十分対応可能なCPUであると言えるだろう。
とはいえ、現状でまだ製品が入手不可能と言うのはなかなか厳しいところではあって、これが何とかしないと話にならないのだが。