◆PCMark 10 v2.1.2535(グラフ53~58)

PCMark 10 v2.1.2535
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/pcmark10

性能ベンチマークの最後はPCMark 10で、一応2Dアプリケーションで性能差が無い事の確認である。ついでに言えばOpenCL周りの性能の間接的な確認も出来るからだ。

  • グラフ53

  • グラフ54

  • グラフ55

  • グラフ56

  • グラフ57

  • グラフ58

Overall(グラフ53)を見ると、まぁドングリの背比べである。Test Group(グラフ54)で見ると、当然Gaming(3DMark FireStrike)のみ明確な差があるが、それ以外は誤差の範囲といったところ。Essentials(グラフ55)のApp StartupはGPU性能差には無関係だし、その他は誤差の範囲。Productivity(グラフ56)のSpreadsheetsの結果は、OpenCLを使う関数2つでGeForce系列の方が高速になっている

3060Ti 3070 6650XT 6700XT 6750XT
SpreadsheetMonteCarloOcl 1.06 0.91 1.25 1.28 1.23
SpreadsheetEnergyMarketOcl 0.6 0.67 0.79 0.78 0.76
(単位:sec)

が、同じOpenCLでも次のグラフ57のPhoto Editingの場合には

3060Ti 3070 6650XT 6700XT 6750XT
PhotoEditingBlurOcl 0.35 0.31 0.25 0.23 0.23
PhotoEditingUnsharp2Ocl 1.29 1.29 0.64 0.67 0.67
PhotoEditingContrastOcl 1.25 1.09 1.27 1.11 1.05
PhotoEditingDenoiseOcl 0.92 0.72 0.28 0.26 0.25
(単位:sec)

という具合に、むしろRadeon系列の方が高速で、そう考えるとどっちが高速とも俄に言いにくい。最終的にはOverallで殆ど変わらない、という事は均すと同等、という判断で良いかと思う。

Application(グラフ58)でもExcelのみ妙にバラけるが、その他はほぼ同等である。で、バラける要因であるが、殆どは誤差の範囲。違うのは

3060Ti 3070 6650XT 6700XT 6750XT
Pcm10ExcelCopyCompute2 0.1 0.13 0.16 0.1 0.14
Pcm10ExcelResize 0.4 0.44 0.35 0.44 0.58
(単位:sec)

の2つ。CopyCompute2の方はCPUでの計算処理でGPUにはあまり関係なく、これは誤差の方だと思うが、Resizeは2Dの再表示処理が入り、ここでなぜかRadeon RX 6750 XTの性能が悪い。ただResizeはWordとかPowerPointなどでもあり、こちらはほぼ同等になっている辺りは、別にRadeon RX 6750 XTの性能が低いという訳でもなさそうだ。あまり深くこの差の理由を追い求める必要は無い様に思われる。

◆消費電力測定(グラフ59~64)

最後に消費電力を比較してみたい。今回は

3DMark FireStrike Demo(グラフ59)
Borderlands 3 2K(グラフ60)
F1 2021 2K(グラフ61)
Metro Exodus PC Enhanced Edition 2K(グラフ62)
Shadow of the Tomb Raider 2K(グラフ63)
Tom Clancy's The Division 2(グラフ64)

の6つの消費電力変動を測定。それぞれの稼働時平均消費電力と待機時電力をまとめたのがグラフ65、待機時電力との差を計算したのがグラフ66となる。

  • グラフ59

  • グラフ60

  • グラフ61

  • グラフ62

  • グラフ63

  • グラフ64

さて、一見して判るのがRadeon RX 6750 XTの消費電力の多さと、Radeon RX 6650 XTの消費電力の低さである。今回利用した3枚で言えば、定格は

Radeon RX 6650 XT 180W
GeForce RTX 3060 Ti 200W
GeForce RTX 3070 220W
Radeon RX 6700 230W
Radeon RX 6750 XT 250W

という事になっており、まぁほぼこの定格の消費電力の順に消費電力が増えている感じではあるのだが、Radeon RX 6750 XTに関してはOCモデルという事もあってかもう少し引っ張っている感じで、Radeon RX 6700 XTとの差から考えると実際は280W近くになっている様に思える。先にPhoto29で示されている様に、定格の15%増しまで電力増加を許す設定になっており、なので実質300W近いと考えるべきだろう。

性能/消費電力比で考えれば勿論Radeon RX 6650 XTとかGeForce RTX 3060 Tiの方が好ましい訳だが、今度はそれなりに性能も落ちる事になる。ちなみにAMDのガイドラインによれば、Radeon RX 6650 XTを使う場合は500W電源、Radeon RX 6750 XTを使う場合は650W電源が推奨とされる(Radeon RX 6950 XTは850Wだそうだ)。このあたりは性能と消費電力のどちらを優先するか、次第かと思う。

考察 - 性能は十分、趨勢は市況次第

まずRadeon RX 6650 XTについて。多分GPU Clockの向上よりもMemory Clockの向上の方が性能に効果的に効いている様に思うが、GeForce RTX 3060 Tiとしばしば互角の成績を出しているあたりはちょっと驚きで、GeForce RTX 3060との比較であれば十分競合できる性能だと思う。「ただし2Kに限る」というのはもうNavi 23の弱点である「Infinity Cacheが32MBしか無い」に関しての強化はもはやどうしようも無いわけで、あくまで解像度は2Kで十分、というエントリモデルのGaming向けには手頃な製品と言えるだろう。

ついでRadeon RX 6750 XTについては、確かに2.5Kまででは結構な性能で、GeForce RTX 3070と互角上のシーンも多々見受けられるのだが、このクラスだともう少しRay Tracingでの性能が欲しかったところ。とは言え、それをNavi 22に求めても無理な話で、Navi 3世代以降に期待したいところ。逆に言えばRay Tracingはいいや、というユーザーにとっては中々お手頃である。ものによっては4Kまでのプレイも可能だし、2Kでいいならかなり解像度を上げても十分利用できるだろう。

気になるのは流通量と価格である。やっと最近になって、GPUの価格高騰が収まってきたようで、割と現実的な価格で入手可能になってきた。ということはGeForce系列も、以前の「明らかに割高」から「割安感は無いが、リーズナブルな価格」で入手できるわけで、その値段の落ちたGeForceと競合できるだけの値付けがなされ、かつ十分な数量が流通するのか? が一番の関心事である。

AMD/NVIDIA共に、次世代製品の投入までにはもう少し時間が掛かる(現実問題として今年末~来年頃だろう)。そこまで待てない方の繋ぎとして、製品ラインナップが増える事そのものは歓迎したい。ちゃんと出れば...であるが。