そして、完全な“はじめまして”の状態で本番へ。遊牧民をイメージした衣装を着せられた大悟から「テレビモンゴル」というパワーワードが早速飛び出し、「これは面白くなるという雰囲気が現場に流れました」と、手応えを持ってロケがスタートした。
完全初対面だったポポと大悟は、すぐに打ち解けた。30分に1回のペースで発生するフンの掃除も大悟が行うことにしており、1回目は「初めてやなあ」と構えていたそうだが、2回目以降はすっかり慣れて受け入れていたという。そんな姿に加え、大悟の優しさが随所で見られた。
「町の人からポポにみかんを頂くと、農薬が付いてないかを確認して自分の服で拭いたり、新しい雑草を食べようとすると『これ食べて大丈夫ですか?』と一緒に来てくれたヤギ業者の人に確認したりと、本当に優しくて“ヤギファースト”なんです」
そんな“ヤギファースト”の姿勢は、スタッフにも。
「ヤギが動くまでは、僕らスタッフも動かないというのを決めました。ヤギがこの草を食べたいんだったら食べさせる、あっちを歩きたいんだったら歩かせる。スタッフが『次はこっちに行きましょうか』と誘導するのはやめようというのをこの番組においては共通の意識として、大悟さんにもお願いしました」
ロケは朝9時から日没の夕方5時くらいまでを想定していたが、雑草を食べまくったポポは4時過ぎに眠なくなってしまい、ここで撮影終了となった。
■9割以上の時間はヤギが映っているように
台本も段取りもないスタイルのロケを終えると、編集ではその空気感を生かし、「あんまり速いテンポで進むような構成にせず、ナレーションも付けずにゆったり見てもらうというのを意識しました」。バラエティにありがちな、ヤギにアテレコして心の声を出すことや、CM前のあおりも必要ないと判断した。
何より大事にしたのは、「どのタイミングでテレビをつけても“ヤギが主役”というのが分かるように、9割以上の時間はヤギが映っているようにしました」と、ここでも“ヤギファースト”の精神が。サイドテロップも、【ヤギが大悟を引き連れて――】とヤギを主語にした文言にしたが、「本当に引っ張られるそうで、大悟さんは『想像以上に体力使うな』と言ってました(笑)」と、看板に偽りなしだ。
番組が放送されると、OA中に「#ヤギと大悟」がトレンド入りするほどの反響。その後の見逃し配信も好調で、視聴者の間で自然と生まれた「追いヤギしてます」という言葉で、何度も見返しているとの報告が公式Twitterに寄せられた。メッセージの中には、「反抗期の娘との会話のきっかけになりました」「リビングで流していると子どもが泣き止んで子守になるんです」といった声もあったという。
さらに、「ウルフルズさんの『笑えれば』をテーマ曲で使用させてもらったんですけど、ファンの方がトータス(松本)さんのラジオにお伝えしてくれて、その翌週の放送でトータスさんが『見ましたよ! 面白かった!』と言ってくれたんです。こんなふうにつながることがあるんだ!と思って、すごくうれしかったですね」と反響は各方面に広がり、ギャラクシー賞では月間賞・21年度テレビ部門入賞を果たした。
第2弾の放送は、見逃し配信の好調を受けて早いうちに決定したが、ポポ×大悟を、別の動物×芸人に変更する発想はなかったという。
そんな今回は、春の千葉県大多喜町を訪問。「前回以上に緑が多い季節なので、ポポもすごく喜んで雑草に目移りしちゃって、めちゃくちゃいっぱい食べてます。大悟さんがさらに翻ろうされて、前回以上にしゃべっていると思います(笑)」と予告した。