山本氏は40歳を過ぎ、管理職に進むか、まだ現場でドラマを作り続けるかと考えた結果、後者を選択し、読売テレビを退社。現在も代表を務めるドラマデザイン社を設立したが、ドラマ制作だけでなく、人材育成にも力を注いでいる。

「読売テレビ時代は、常に企画に困っていた状況があったんです。長年、月曜10時が制作枠で、裏が『SMAP×SMAP』(フジテレビ)だったので、エッジの立った強い企画が必要になる。でもそれをゼロから開発するのに売れっ子の脚本家は相手にしてくれないので、若いライターと一緒にいくつも企画を作って勝負していました。独立したときに他のプロデューサーも同じように企画で悩んでるんじゃないかと思って、脚本家を育成する事業『シナリオ・インキュベーション』を立ち上げました」

ここから、清水友佳子氏(『最愛』『エール』など)、徳永友一氏(『翔んで埼玉』『ルパンの娘』など)、大北はるか氏(『ラジエーションハウス』『ナイト・ドクター』など)といった、第一線で活躍する脚本家を多数輩出しており、「そういう人たちと関わりを持っているということは、会社にとってすごく頼もしいことです」と大きな財産に。

一方、新人俳優を積極的に起用した経験から、女優育成プロジェクト「アクトレス・インキュベーション」も展開。裏方・演者の両方で、ドラマ界に若い力を送り出している。

  • 山本和夫氏

●山本和夫
1955年生まれ、京都府出身。慶應義塾大学卒業後、79年に読売テレビ放送入社。『木曜ゴールデンドラマ』や、朝の連続ドラマ『花いちばん』『京一輪』などの演出を手がけ、92年『悪女(わる)』で連続ドラマ初プロデュース、演出。その後『オンリーユー 愛されて』『ストーカー 逃げ切れぬ愛』『冷たい月』『心療内科医・涼子』『奇跡の人』などを手がけ、99年に同局を退社。00年にドラマデザイン社を設立し、『R-17』(テレビ朝日)、『14ヶ月』(読売テレビ)、『だいすき!!』(TBS)『松本清張ミステリー時代劇』『山本周五郎人情時代劇』(BSジャパン)、『薄桜鬼』(WOWOW)などのドラマをプロデュースする。