令和版が制作されることを聞いた第一印象は、「どうやるんだろう?」という興味だった。
「女性の働く環境はずいぶん変わってきているし、麻理鈴が目指していたものが今でも実現されていないところがある中で、今同じように麻理鈴を登場させてどんなキャラ作りやストーリー運びにしたら人々の心に響くんだろうと、すぐ作り手の気持ちで考えちゃうんです」
そんな山本氏の目に、令和版はどう映っているのかを聞いてみると、「素晴らしいです。特に今田美桜さんのフレッシュさが際立っていて、魅力的でいいなと思います」と絶賛。新旧の麻理鈴の違いを「石田ひかりさんはもうちょっと正体不明で人を喰ったような感じ。明るいけど、どこかドシッとした芯があるような感じがしましたけど、今田美桜さんの場合は本当に素直で、またアクティブな部分がパワーアップされているような気がします」と話す。
そして、「プロデューサーの方が、自分が赤ちゃんの頃の作品を発掘して、今に光らせるというチャレンジはすごいことだし、それを局に通したのもすごいことだし、そういう意味で今“無敵”なんだと思います。30年前の自分を思い出します(笑)」と目を細める山本氏。
撮影が続く現場へ、「強い原作ですから、自分たちのイメージで思い切り育ててほしいです。現場に行ったときに、かつての僕らのチームのような若さがみなぎっていて、すごくエネルギーを感じました。視聴率は後からついてくるものですし、自分が面白いと思ったものをやらないと絶対にお客さんも面白いと思ってくれないので、そのまま突っ走ってほしいと思います」とエールを送った。
■様々な指標に“かんじがらめ”になっていないか
現在もドラマ制作の現場に立ち続ける山本氏。長年携わってきた立場で、ドラマ作りにどのような変化を感じるのか。3つの演出面の例を挙げて解説してくれた。
「テンポがすごく速くなってきて、緩急の“緩”が非常に少なくなってきたと思います。今の視聴者は心情を見せるようなところになるとチャンネルを変えてしまうところがあるので、どんどん進んで行かなければならないというのがあるんです」
「わりと音楽を多用するようになったと思います。かつては、我慢して我慢して“ここぞ”というときに使うやり方でしたが、今はすごく賑やかにして埋めていくという感じがありますよね。ドラマとしてはかえって平板になる感じがしています」
「視聴率に対する怖さからなのか、ナレーションをいっぱい使ったり、説明ゼリフを多用したりして、語りすぎる部分があると思います。登場人物の心情を説明してしまうことで、『そんなもんか』と、かえって視聴者離れを起こしているのもあるのではと思います」
予算の削減、若者のテレビ離れという環境の中での苦労を思い、「役者さんもNetflixとかどっしりとした作り方をするところに目が向いてしまうし、その中でもドラマを作り続けなければいけないというのは、すごく大変なことだと思います」と同情。
さらに、「視聴率だけじゃなく、配信サイトで何回再生されたとか、昔よりいろんな指標が出てきて、それに作り手ががんじがらめになっている。僕は読売テレビ時代、主役や脚本家にいつも新人を起用していましたが、今はそういう冒険ができず、自由度が減ってきていると思います」と見解を語った。