テレビは、基本的に“べき”を伝えないほうがよいメディアだと言われてきた。それは、送り手が「こうするべき」と考えると、受け手の視聴者が見たいものから遠ざかって独善的に陥ってしまうという考えがあるからだ。

しかし、『週刊フジテレビ批評』においては、“べき”があっても良いのではないかというスタンス。番組の後半では様々な特集コーナーを組んでいるが、ここでは「“テレビというのはこう作るべきではないか”と考えるテーマを選ぶようにしています」といい、「The 批評対談」ではテレビやメディアのあるべき姿勢を提言したり、「ドラマ放談」では識者が求められるドラマ作りに遠慮なく意見したりしている。

当然、コメンテーターには自由闊達に意見してもらうことを心がけており、番組に出演するドラマ解説者の木村隆志氏いわく「日本一忖度を求められない番組」。荒木CPは「今の時代はフジテレビのドラマを褒めてもらうと、視聴者の方に“やらされてる感”が伝わってしまうので、むしろフジのドラマばかり褒められると不安になってしまいます(笑)」と胸の内を語った。

■津波報道のクレームから対談テーマを設定

また、「先日、トンガの噴火があって、夜に津波警報が出て緊急特番を組むということがあり、『なぜドラマを中断するんだ』とか『結局大きな津波は来なかったじゃないか』といったクレームをかなり頂きました。視聴者からそうした声が届くというのは、なぜ津波が来るのか分からない状態で緊急特番までやって、警報・注意報の画面を入れっぱなしにするのかというのを知りたいのではないかと考えて、『災害報道の現場と今後』という対談をやりました」と、冒頭で紹介した“視聴者とテレビ局がお互いに語り合いながら番組作りを進める”という精神を体現。

北京オリンピックでは、スノーボード・平野歩夢選手の金メダルの瞬間がNHK総合のサブチャンネルで放送されたことに大きな批判が巻き起こったが、「あれがもしフジでの中継だったら、『週刊フジテレビ批評』で取り上げ、なぜあそこでニュースを放送したのか、サブチャンネルとはどういうシステムなのか、といった疑問に答える特集を放送することになったと思います」と話す。

取り上げるテーマは、「今は2回に1回くらい、配信やネットが関わってくるようになったと思います。災害報道も、テレビだけが報じる時代ではないのでネットではどうだったのかという視点が出てきますし、海外ドラマのヒットの理由もそうですよね」と、30年の間に大きく変化。それだけに、「昔と違って今はテレビが一択のメディアではないのだとより謙虚になって、他のメディアとどう協力していくべきなのかということを主眼に置くようにしています」と、テーマ設定における意識を明かした。