新年度が始まる4月1日に明ける前の3月31日深夜という放送日時は、いくつか候補があった日程から希望した。
「この作品は、夢を追う人たちの“人生の選択”を描いています。登場人物に、結婚を機に劇団を離れようとする新郎がいるのですが、そういう新しい人生の歩みに対して、それぞれがどう思うのかといったところが物語のキーにもなっています。なので、この作品が、これから新しい生活が始まる人たちへのエールになればいいなと思い、この日付を選びました」(五十嵐氏)
めったにないお目にかかれない生放送のドラマは、やはりリアルタイムで視聴するのが醍醐味だが、見逃し配信も実施。先日、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でスタッフが映り込んだ姿が放送されたことが話題となったが、「そうしたリスクは、こっちのほうがいっぱいあります(笑)」(五十嵐氏)と言うように、ミスがあってもそのまま配信される。
さらに、ドラマ本編後の番組内での振り返りや、番組終了後もFODで反省会が配信されるため、「役者の皆さんの裏話やぶっちゃけトークを聞いた上で、もう一度本編を見返していただけると、また違った見え方があると思います」(五十嵐氏)と、この番組ならではの楽しみ方を提案した。
生ドラマ中では、小劇場界で一世を風靡(ふうび)したという設定の“モノマネネタ”をTwitterで募集し、そのムチャブリを受けた勝地が即興で披露するという視聴者参加型企画を実施。また、出演者も正体を知らない“隠しゲスト”が、本番中にサプライズ登場する。
テーマソングは、草ヶ谷氏が担当した『コンフィデンスマンJP』のメインテーマを手がけたfox capture planのカワイヒデヒロに「ダメ元で『書いてくれませんか?』とお願いしたら、『ぜひ』と言っていただいて、『コンフィデンスマンJP』に負けないくらい良い曲に仕上がっています」(草ヶ谷氏)。この曲は、劇中でハラミちゃんが生演奏する予定で、「お芝居ともリンクしているので、本番でどうなるのか、我々もドキドキ・ワクワクと不安でいっぱいになっています(笑)」(五十嵐氏)と、ここでも生放送中の仕掛けを計画している。
■バラエティ×ドラマ垣根を越えた取り組みが続くフジ
フジテレビでは、3月9日・16日にも、ドラマ監督の中江功氏と、バラエティプロデューサーの中嶋優一氏&黒木彰一氏が、部署の垣根を越えてタッグを組んだ『Around the Corner 曲がり角のところで』を、深夜の開発枠『水曜NEXT!』で放送。
五十嵐氏は「この企画を出したときに、ドラマとバラエティのスタッフが一緒に作ってうまく相互作用したら、新しいものができるんじゃないかという話になったんです。この1カ月の間に部署の垣根を越えた企画が2つも放送されるというのは、フジテレビとしても化学反応を出して新しいものを作っていこうという空気をすごく感じますね」と語る。
五十嵐氏と草ヶ谷氏で、意見がぶつかることも。例えば、草ヶ谷氏から「もっとドラマの部分を前面に出したほうがいいのでは」と提案されたが、五十嵐氏としては「かつての『笑っていいとも!グランドフィナーレ』とか『27時間テレビ』とか、あの生放送の予定不調和なワクワク感によって、ドラマに興味のない人にもバラエティ的な感覚で楽しめる番組にしたかったんです」という思いがあった。
実は、最初に企画書を出したときは、「毎週いろんな劇団が生ドラマに挑む」という連続ドラマの形式だったそうだが、「実際に1本やってみると、毎週というのは何チームも組まないとなかなか厳しいなと(笑)」(五十嵐氏)と実感。それでも、草ヶ谷氏は「これを1回きりではなく、ぜひレギュラー化を狙ってやっていきたいと思います」と意気込んでいる。