本番は、実際に営業されている都内のカラオケボックスの店舗を使うため、全体での稽古ができるのは、局のリハーサル室で1日、現場で3日にとどまり、通常の演劇と比べても「かなりタイトなので、俳優部には大変プレッシャーをかけて申し訳ないと思っています(笑)」(五十嵐氏)という。

こうした制約に加え、ネットの生配信と違って中継車の手配や放送用の大掛かりな機材が必要となる生放送は手間もかかるが、むしろその状況が、出演者・スタッフを燃えさせる要素になっているようだ。

そんな現場を座長として引っ張るのが、勝地涼。昨年末放送された『志村けんとドリフの大爆笑物語』(フジ)の加藤茶役が大きな話題を集め、今年1月期は『ドクターホワイト』(カンテレ)、『となりのチカラ』(テレビ朝日)と2本の連ドラにレギュラー出演したのに加え、『全っっっっっ然知らない街を歩いてみたものの Season2』や『水曜NEXT!「Around the Corner 曲がり角のところで」』のショートドラマ『だるっ!』(いずれもフジ)へ立て続けに出演するなど、今一番乗りに乗っている役者だ。

起用の狙いについて、草ヶ谷氏は「若手でもないし、熟しきっているでもない世代として一線で活躍され、13歳からお芝居を始められて、舞台も数多く経験されているので、共演する劇団員の方たちを座長として引っ張ってもらうのは、勝地さんしかいないと思いました」と説明。続けて、「前髪クネ男(『あまちゃん』)のようなコミカルなお芝居から、ニヒルな役までやれてしまう、今を代表する名バイプレイヤーという位置にいる人だと思うので、今回のような笑って泣ける作品をうまく表現してくださるのではないかと思います」と期待を寄せる。

勝地は出演発表の際、「稽古でいろいろ試してみたい」とコメントしていたが、五十嵐氏は「短い稽古期間ではありますが、監督といろいろ話をされて、草ヶ谷とも『もっとコメディに寄せたお芝居のほうが良いのか、リアルな方向のほうがいいのか』と、まさに試していらっしゃいます。“芝居は1人で作るものじゃない”ということもおっしゃっていて、今回初めて劇団献身の方や舞台を中心に活躍されている俳優さんたちと対峙(たいじ)するので、どうやって一緒に芝居を作っていくかを試行錯誤されていて、空気感を大事にされているのをすごく感じます」と感服した。

  • 五十嵐元プロデューサー(左)と草ヶ谷大輔プロデューサー

■主演が生放送当日に来れなくなったら…

コロナ禍の今、勝地が生放送当日に体調不良で出演できなくなってしまうという可能性はもゼロではない。

それでも、「勝地さんが演じる主役の飯島は、30代になって周りが家族を持ったりして、座長としてこのまま劇団を続けていくべきなのか、役者をやっていくべきなのかと苦悩を抱えている役柄で、まさに今の奥村さん自身を投影してるんです。それを演じるのは同世代の勝地さんだからこそできるし、ワンカット生放送というものすごく演技力が必要で、リスクやプレッシャーのある役を受けてもらった勝地さんに感謝しているので、それを思うと勝地さんの代わりというのは考えられないですね」(五十嵐氏)と悩ましい。

この取材時点(3月23日)で、具体的に代役想定は決めていないが、草ヶ谷氏は「リスクはゼロではないので、ちゃんと考えないといけないですね。そう言えば、舞台経験のある五十嵐は『ごくせん』(日本テレビ)などにも出てたので、もしかすると彼の登場があるかもしれません(笑)」と、まさかのプランを示唆した。