きょう26日19時に開局するBS松竹東急。その名の通り、松竹グループと東急グループという長い歴史と豊富な資産を持つ両グループのコラボレーションによって、どのような放送局を生み出そうとしているのか。
編成方針に【伝統から革新まですべてを見せる映画】【誰もが楽しめて親しみやすい歌舞伎や劇場文化】【多彩な作り手とコラボレーションする挑戦的なオリジナルドラマ】という3つの柱を打ち出し、まっさらな状態から1年かけて番組表を作ってきた中村敦史執行役員編成局長に、話を聞いた――。
■他社映画・洋画もラインナップ
【伝統から革新まですべてを見せる映画】では、松竹の持つ豊富な映画資産を活用する番組として、レギュラーの映画枠『よる8銀座シネマ』(3月28日スタート、毎週月~金曜19:54~)と『日曜ゴールデンシアター』(4月10日スタート、毎週日曜18:30~)を放送。
無料放送でゴールデンタイムにレギュラーの映画枠を持つのが日本テレビ『金曜ロードショー』のみという現状の中、「松竹グループの特色を出し、無料でいい映画をお届けしたい。1日だけじゃなく、月~金曜毎日放送することで、“平日夜7時54分にBS松竹東急をつけたらいい映画が見られる”という視聴習慣をつけていただきたいと思っています」(中村局長、以下同)と編成した。『よる8銀座シネマ』は、「山田洋次監督特集」や「松本清張作品特集」など、1週間通しのテーマ設定を想定している。
両番組とも2時間半の放送枠を確保して原則ノーカットとなり、大の映画好きとして知られる落語家・柳亭小痴楽による解説パートを本編前・後に構成。『よる8銀座シネマ』は時代を越えて愛される名作、『日曜ゴールデンシアター』はアカデミー賞受賞などヒット作というすみ分けを予定しており、「松竹の映画だけでなく、他社さんの作品や洋画ももちろんラインナップして、古今東西すばらしい映画をお届けしたいと考えています」と意気込む。
近年はサブスクのインターネット動画配信サービスが発達しているが、その潮流の中で新たに開局するテレビ局が映画番組を放送する意義について聞くと、「たしかに、配信の世界もすごく有意義だと思うのですが、自分で作品を探しに行かないといけないという側面があると思います。自分の知っている作品はすぐに見つけられるが、その先のまだ埋もれている作品たちを自分で発掘するのはなかなか大変なので、我々の映画番組のプロデューサーたちが厳選して、テーマを持たせて1週間お届けすることで、スイッチを入れるだけでテレビの前でお楽しみいただけるのではないかと思います。そこがテレビの一番の良さだと思います」と強調した。
年間300本近くの映画放送を計画しているだけに、「映画のプロデューサーたちは作品を選んで、プレビューして、編集するのに加え、解説パートも作らなければいけないので、みんな大変です(笑)」とのことだ。
■テレビをきっかけにリアルの歌舞伎・演劇へ
【誰もが楽しめて親しみやすい歌舞伎や劇場文化】は、「もちろん歌舞伎や演劇はライブで観るのが一番いいし、感動が伝わると思うのですが、コロナで劇場まで足を運べないとか、地理的な問題で行きづらいこともあると思うので、テレビ放送することで親しみを持ってもらう入口になるのではないか。そこからライブの歌舞伎や演劇にハマっていただければ次の放送も楽しくなってくるという形で、リアルとテレビのサイクルを作っていければ」と狙いを語る。
その中心となるのが、『土曜ゴールデンシアター』(毎週土曜18:30~)。初心者でも楽しめる“入門編”に適した歌舞伎や演劇をラインナップし、映画枠と同じく解説パートを設ける。
この時間枠では、東京・渋谷のBunkamura・シアターコクーンで行われる「渋谷・コクーン歌舞伎」を、4月2日から3週連続で放送。3月27日(12:00~)にも、開局編成として2公演を放送することになっており、「民放の無料放送でここまで歌舞伎を放送する局は他にないと思いますので、我々のチャンネルイメージにつながる番組になると思います」と期待をかける。