このスムーズな進行を裏側で支えるのが、料理スタッフだ。スタジオ内には、収録用とは別に何人も同時に作業できる超ロングの調理台があり、そこで食材を切ったり茹でたり下ごしらえの作業や、差し替え分の調理が行われている。用意が早すぎてもいけないし、当然遅れてはいけないため、料理スタッフたちはモニターで収録の進行具合を見ながら、1分1秒単位で計算して食材の準備を進めるというプロの技を発揮していた。

  • 下ごしらえや差し替え分の調理を行う料理スタッフ

長年の放送で培われた熟練の技は、他にも随所で見られた。講師の右隣には、カメラが映らない位置に常に料理アシスタントがおり、最適なタイミングで食材を差し出したり、フライパンに食材を入れて空になった器を瞬時に下げたりと、陰で作業を支えている。

調理台の手前には、フロアディレクターが細かい指示を出すと同時に、調理台が汚れたらキッチンペーパーでサッと拭き、講師の手が汚れるとスッとふきんを渡すなど手際よく動いており、「何十年のチームワークなので、もう“あうんの呼吸”ですね。先生とフロアディレクターは、本番中にアイコンタクトしながら調理をしているんです」という。

  • フロアディレクター(左)と料理アシスタント(右手前)

料理中には講師とアナウンサーがまな板とコンロを行き来するが、3台のカメラも同時に平行移動。両サイドの2台のカメラは調理の状況を撮るため、カメラマンが箱馬(=木製の箱型の台)に乗って覗き込むように撮影しているが、移動の際はその箱馬に乗ったまま、まるでキユーピーちゃんがお尻でダンスをするかのように、音を立てず上手にスライドしている姿が印象的だ。

  • 調理を撮影するカメラマン

そして出来上がった料理は、番組冒頭の料理紹介の撮影へ。何百枚もある中から選んだランチョンマットを敷き、皿の向きや配置、料理の断面、照明の角度などを何度も変えながら、湯気が収まらないようスピーディーにおいしそうな画作りを追求していた。

  • 完成料理の撮影(左)と何百枚ものランチョンマット

■“天気予報”のように提案するのが料理番組

最近は、レシピサイトや動画がインターネット上で充実しており、自分の好きな料理の作り方をいつでもどこでも見られるようになった。そうした時代における料理番組の役割というのは、どのように考えているのか。

「“天気予報”のように、季節や事柄に合わせて料理を提案し、『これなら作ってみようかな』と思ってもらい、おいしく食べてもらうことですね。先生もおっしゃるんですが、やはりできたての家庭料理は圧倒的においしいし、それで食卓が明るくなるし、家族の健康にもいいですから、それを日々続けてもらえるようにしたい。キユーピーさんのキャッチコピーである“愛は食卓にある。”という食卓が、少しでも増えればいいなと思っています」

また、講師とアナウンサーのコミュニケーションも、テレビ番組ならではの要素と言える。

「定点カメラやテロップとかだけでなく、先生が作りながら説明して、アナウンサーがポイントを聞いて、いかに分かりやすく伝えるかというのを考えています。他にも、『甘いいい匂いですね』という感想や、材料を混ぜて『ゴムベラを通した後に戻ってこない状態まで』といった表現で伝えることも大切にしていますね」