• 「階段落ち」の図面(左から 新、旧)

最も大変だったというのは、志村さんが監督、加藤がスタントマンを演じる「階段落ち」。図面は残っていたが、階段部分の仕上げに手間がかかったという。

「図面を見ると、階段の1段1段に(安全への配慮のため)ウレタンが敷いてあって、そこに色を塗って周りに合わせるんです。でも、リハを何度もやるので、演者さんが踏んでいくうちにどんどんハゲていってしまって、そのたびに直していくという作業をしていきました」

階段の右側に描かれていた大きなドラゴンの絵も忠実に再現。「威勢のいい風呂屋」の富士山と同様、このデザインも図面からは分からないため、やはり当時の映像を見て描くことになった。「サイズもかなり大きいので、大道具さんは相当大変だったと思います」と思いやる。

これだけ大掛かりな2階建て構造で、かつ演者が激しく動き回るコントのため、セットの強度を確保する工夫も行っている。通常、階段のセットは、1段1段分割して運び込み、スタジオで組み立てるが、そうすると強度が弱くなってしまう。そこで、今回は工場で丸ごと階段を作り、それをトラックに乗せてスタジオに持ってきた。「これほど重いものをスタジオに上げるというのは、なかなかないですね。人が落ちたり転がったりしないのであれば、一発もの(=丸ごと)で作ることは避けると思います」と、異例の措置をとったのだ。

■図面が残されていたからこそ分かったこと

「ひげダンス」は公開収録だったため、図面は残っていなかったが、背景にレンガが並んでいるシンプルなセットのため、再現の難易度はそれほど高くなかったそう。当時の映像を見て似たようなレンガの色の壁紙を探し、床の色も近づけた。

  • 「ひげダンス」のシーン(左、(C)フジテレビ)と今回作成したセット図面

それでも、セットを再現するにあたって、図面の重要性を改めて認識したという。

「『この上に天井がかかっていたんだ』とか『こんなところも補強していたんだ』とか、映像で映っていないところの発見が図面からたくさんあったので、残っていなかったら今回のコントシーンは相当大変だったと思います。『威勢のいい風呂屋』の湯船も、一から水槽を作っているんだと知って驚きました。普通だと鉄骨のサイズに合わせて中にビニールを敷いて養生するという感じでやると思うんですけれど、ちゃんと水槽を作るといろいろな加工ができるのが分かりました。これは、図面を見なかったら作っていなかったですね」