お笑い芸人・志村けんさんの半生を描くフジテレビ系スペシャルドラマ『志村けんとドリフの大爆笑物語』(27日21:00~)。この中では、志村さん役の山田裕貴をはじめ、ザ・ドリフターズ役(いかりや長介さん=遠藤憲一、加藤茶=勝地涼、高木ブー=加治将樹、仲本工事=松本岳)の面々が、『ドリフ大爆笑』(フジテレビ)の数々の名コントを演じている。

そのコントセットは、『ドリフ大爆笑』放送当時の図面から忠実に再現されたもの。コントシーンの美術現場担当であるアートコーディネーター・平山雄大氏(フジアール)が、その貴重な資料を元に、今回のセット製作の裏側を明かしてくれた――。

  • 『ドリフ大爆笑』オープニングシーンより(左から 山田裕貴、松本岳、遠藤憲一、勝地涼、加治将樹) (C)フジテレビ

    『ドリフ大爆笑』オープニングシーンより(左から 山田裕貴、松本岳、遠藤憲一、勝地涼、加治将樹) (C)フジテレビ

■撮影当時を知る大道具スタッフにヒアリング

現在の番組において、セットの図面はパソコンで制作するが、当時は紙に手書きという時代。それもほとんどの番組では廃棄されてしまっているが、『ドリフ大爆笑』に関しては、平山氏の先代に当たる故・山根安雄氏が、丁寧にファイリングして保管していた。

そのおかげで後年、『志村けんのバカ殿様』『志村けんのだいじょうぶだぁ』などの番組で、「あの時のあのコントのセットを参考に新しいコントを作りたい」という話になると、当時の図面を引っ張り出し、それを元にブラッシュアップしてセットを作るということがよくあったという。図面には、デザインや大きさ、配置だけでなく、天井から水や雪を降らせるといった「仕掛け」まで書き込まれており、そうした技術も受け継がれてきたのだ。

一方、今回のドラマで演出を担当した福田雄一監督からの希望は、サイズも含めて「できるだけ当時と同じように再現してほしい」ということ。しかし、図面だけでは分からない部分や、資料が残っていないコントもあるため、様々な工夫を凝らして製作を進めた。

まず、5人があのテーマソングを歌う『ドリフ大爆笑』のオープニングは、スタジオに建てたときの俯瞰(ふかん)の図面はあったものの、横から見る図面がほとんど残っていなかった。そのため、撮影当時を知る大道具スタッフにヒアリングするなどして、足りない情報を補っていった。

色味の再現は、図面で色の指定がされていても難しいという。「壁紙の品番が書いてあっても、古いものなので探すことができないんです。そうすると、当時の映像を見て、近い色で作っていくしかないんですね」(平山氏、以下同)

また、当時のアナログ放送は画面サイズが4:3であったのに対し、現在のデジタル放送は16:9になったため、オープニングは当時よりも若干横のサイズを広めに取ることで、画面上の違和感を取り払っている。

  • 『ドリフ大爆笑』オープニングセットの俯瞰図面

  • 後方の装飾図面(左から 新、旧)

■いかりや長介さんが突き落とされるお風呂のサイズは…

いかりやさんを他の4人が過剰なサービスで無理やり銭湯に入れる「威勢のいい風呂屋」は、過去3回放送されているが、94年の図面が残っていた。だが映像を見ると、風呂場内の背景に富士山が描かれていたり、紅白幕で覆われていたりとそれぞれ違うため、福田監督に相談したところ、「富士山を描いてほしい」と要望が。ただ、そのデザインを図面から読み取ることは不可能であるため、これも映像を見ながら描いていくことになった。

脱衣所にはロッカーがあるが、既製品で同じようなサイズのものがないため、新たに製作。「結構長い時間映っているので、これが別の物になると雰囲気が変わってしまうんです。図面があったので、これは助かりました」。

また、いかりやさんが突き落とされる浴槽は、奥行きを90センチ長くした。「当時のサイズだと、浴槽の端に頭をぶつけてしまうかもしれないと思ったので、安全には十分配慮をしました。演じていて動きが大きくなってしまうかもしれないので」と、万が一の事態に備えた。

  • 「威勢のいい風呂屋」 (C)フジテレビ

  • 「威勢のいい風呂屋」の図面(左から 新、旧)