今年(2021年)で第34回を数える「東京国際映画祭」。今回のジャパニーズ・アニメーション部門は、生誕50周年を迎える「仮面ライダー」を大特集している。11月1日には、歴代仮面ライダーシリーズで主演を務めた俳優3人(村上弘明、速水亮、菅田俊)が大集合を果たし「昭和仮面ライダー」をテーマとしたトークイベント「仮面ライダー50th 仮面ライダーアニバーサリー in TIFF」が催されることとなった。

  • 左から菅田俊、村上弘明、速水亮

上映された映画は2本。平成ライダー15人と昭和ライダー15人が結集し、地下帝国バダンの恐るべき計画を阻止するため大暴れする『平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊』(2014年)と、8人目の仮面ライダー=スカイライダー/筑波洋が先輩ライダーと力を合わせ、宇宙からの脅威・銀河王の魔手に挑んでいく特撮アクション巨編『仮面ライダー 8人ライダーVS銀河王』(1980年)である。

トークショー前半では、『平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊』でひさびさに「仮面ライダー」映画に出演を果たした速水亮(仮面ライダーX/神敬介役)と菅田俊(仮面ライダーZX/村雨良役)が登場。子どもたちのヒーローを演じた若手時代の苦労話や、先輩ライダーとなって若き「平成ライダー」たちと接した映画『仮面ライダー大戦』での出来事について、熱く語り合った。

1号、2号、V3、ライダーマンに続く5番目の仮面ライダーで、深海開発用改造人間(カイゾーグ)という設定の仮面ライダーX/神敬介を演じた速水亮は当時を振り返り、「1号の藤岡弘、さんが大人気となって以来、仮面ライダーになった俳優はスターになるという流れがあったから、主役に決まったと知ったときは“やった!”と喜んだ」と、二枚目アクション派俳優の登竜門たる「仮面ライダー」の主役に選ばれたときの喜びを語った。

撮影で危険だったことは?という質問については「爆発ですね。とにかく今まで経験したことがないし、カメラに向かってまっすぐ進んだら目の前でドカーン!とやるもんだからびっくりしました。歴代ライダーで、火薬が大好きだという人がいて。V3(宮内洋)っていうんですけど(笑)、オートバイアクションにしても爆発にしても『V3のときはやったぞ』とスタッフが言うもんだから、こちらもやるしかない。たぶん爆発に関しては、V3を除く歴代の仮面ライダーみんなが嫌がっていたと思いますよ」と、派手な爆発で吹き飛ばされる危険なアクションシーンを積極的に演じたい仮面ライダーV3/風見志郎役の宮内洋が前例となって、自分もそれに負けないくらい危険な撮影をこなすことになったと苦笑しつつ話した。

テレビ以外のメディア(雑誌、レコード、ラジオ、アトラクションショーなど)で約1年間(1982~1983年)活躍した後、1984年1月3日のテレビスペシャル『10号誕生!仮面ライダー全員集合!!』で初めてテレビに登場した仮面ライダーZX/村雨良を演じた菅田俊は、『仮面ライダースーパー1』(1980年)の最終オーディションで沖一也役を高杉俊介と競った経緯があった。

惜しくも主役になれなかった菅田だが、平山亨プロデューサーから声をかけられ、10号ライダーを引き受けることになった。菅田は「ZXは、仮面ライダーのファンの方たちが、原作者の石ノ森章太郎先生に“10号ライダーを作ってほしい”と願ったのがきっかけで生まれたライダー。いわばファンが生んだ仮面ライダーなんです。1年くらい、ショーであちこちの遊園地を周りまして、ようやく一度だけ、お正月の朝にスペシャル番組を作ってもらえたんです」と、本来はテレビシリーズの予定がなかったところ、仮面ライダーの熱烈なファンの要望が製作サイドの心を動かしたために形になったZXの誕生経緯と、紆余曲折の末テレビ化が叶ったZXの不思議な生命力について説明した。

『仮面ライダー大戦』で神敬介は漁村の町医者を務めており、自身の生きる希望を見失っていた仮面ライダーファイズ/乾巧の心の支えになる重要な役柄となった。そして村雨良は、かつて『仮面ライダー』(1971年)で猛威をふるったショッカー大幹部・地獄大使(演:潮健児)の従兄弟にあたる暗闇大使(演:潮健児)と同じ出で立ちとなり、バダンシティで歴代仮面ライダーのロックシードを集める謎めいた動きを見せた。

正義のヒーローだけでなく凶悪なキャラクターをも演じることになった菅田は『仮面ライダー大戦』の暗闇大使役について「僕が東映に入って初の舞台を観に来てくれたのが潮健児さん。それ以来、東映で仕事をするたび潮さんからアドバイスをいただきました。僕にとって潮さんは『仮面ライダー』の地獄大使ではなく、任侠映画のスターだったんです。そして、僕が役者を志してからの兄貴分である大杉漣さんも、地獄大使を演じられていました。尊敬するお2人の役を継承させていただけて、感無量でしたね。歴代の怪人たちを前にして暗闇大使がスピーチをしたシーンでは、身震いしました」と、ZXの宿敵・暗闇大使役の潮健児、そして『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』(2009年)や『仮面ライダー1号』(2016年)で新たな地獄大使を演じた名優・大杉漣の名を出し、2人の恩人に思いを馳せた。

昭和の仮面ライダーといえば、変身前の俳優にも危険なアクションが付き物である。当時のアクションについて速水は「撮影所(生田スタジオ)の内田有作さんに会ったとき、お前は立ち回りやったことあんのか!?と聞かれたから、ありません!と答えた。そうしたら、大野剣友会で稽古しろ!って言われて、もう鬼みたいな人相をした男たちが揃っている大野剣友会の道場へ行って、1日だけ稽古しましたよ。僕も激しい立ち回りをずいぶんやりましたけれど、何よりすごいのは大野剣友会のみんなです。全員、命をかけて危険なアクションに挑んでいました」と、荒くれものだがアクションや立ち回りのプロフェッショナルである大野剣友会のメンバー各氏の心意気と、命がけの仕事ぶりを称えた。

危険だった撮影については第33話「恐怖!キングダークの復しゅう!!」の「渓谷の吊り橋シーン」を挙げ「2人以上乗っちゃいけない吊り橋があって、そこでおやじさん(立花藤兵衛)役の小林昭二さんが先に乗っていたところに、監督から『速水ちゃん、そこ走って!』って言われたんです。カンベンしてくれよ~と思いながら走っていったら、案の定板が一本ポロリと落ちた(笑)。まあそんなことしょっちゅうありましたね」と、一歩間違えればとんでもない目に遭うような危険な撮影がひんぱんにあったことを明かしていた。

菅田は村雨良を演じるにあたって「1年くらいATCに通わせてもらって、バック転やトランポリンを練習していました。今自分がやっているアクションのベースになっていると思います。源馬(均)さんをはじめとするメンバーの方々にはお世話になりました」と、『ZX』で培ったアクションスキルが、現在の俳優業にも生かされていると笑顔を見せながら話した。

『10号誕生!』での危険だった出来事としては「バイクで崖を駆け降りていくシーン」を挙げ「岩のゴツゴツしたところを走ったんですが、バイクが4サイクルだったもので、オイルが抜けて走らなくなっちゃった。それなのに、その日の撮影が終わったらスタッフが帰ってしまい、自前のバイクなものですから困ってしまって、翌日にトラックでバイクを運びに行きました」と、自身の愛車を撮影に使用したことで起こった意外なアクシデントを回想した。

最後に速水、菅田はMCからのリクエストを受け、それぞれの「変身ポーズ」を披露することに。速水は『仮面ライダーX』第1~27話の変身方法「セタップ(セット・アップ)」をスマートに決めてみせ、菅田は『10号誕生!』での変身ポーズをシャープにこなした。