「山田孝之13年濃縮79倍仕込み増し増し替え玉ちょい残しインスパイア系デザイア。」

俳優の山田孝之が、38歳の誕生日となる20日に朗読CD付き詩集 『心に憧れた頭の男』(ワニブックス 1,980円)を発売した。ベストセラーとなった山田初の書き下ろし本『実録山田』から5年。月刊誌『+act.(プラスアクト)』の隔月連載を一冊にまとめた今作では「山田孝之」がまったく違う姿で現れる。

冒頭の一文は、詩集発売が決定した際に山田が寄せたコメントだ。最初目にした時は解釈に困った。しかし、彼に直接話を聞くことで、ユニークかつ巧みに詩集の内容を言い表したものだということがわかった。

  • 山田孝之 撮影:島本絵梨佳

詩集巻末の解説ページには、詩の創作はiPhoneのメモ機能を使い「撮影現場で夜空を見ながら」「トレーニングとミーティングの間の15分でというものもあった」などと記されている。その時々のシチュエーションも詩に表れているのかと聞くと、山田は「してるんじゃないですかね」とどこか他人事のように答え、詩集のページをパラパラとめくっていく。

「その(撮影現場で夜空を見ながら書いた)詩を書いた時のことも覚えてますよ。『ゾッキ』の撮影期間中で、竹中さんのパートを学校で撮影している時でした。自分の監督パートはまだだったのですが、僕は監督未経験だったので、先輩の撮影現場を見て学べるものがあればと、見学させていただいていました」

映画『ゾッキ』(21)は、漫画家・大橋裕之氏の初期短編集のエピソードを多数織り交ぜ実写化した作品で、竹中直人、齊藤工、そして山田の3人が監督を務めた。山田はその撮影時に書いたという詩のページを見つけ、改めて読み返し、「マインドが大橋裕之さんの世界に入っていますね」と嬉しそうに語る。詩は「雲の切れ目から伸びる手招き」から始まり、「体がフワッと浮いた」という一文で終わる。

「単純にずっと撮影を眺めているだけなんですけど、そこに今の主観の自分、それを見ている自分、さらにまた、それを見ている自分がいて、それぞれの動きが全く違うように感じたんですね。それぞれの視点の感情というか、それぞれの自分に『どういう気持ちでこっちを見て、こういうことを言ってきたんだろう?』と意識を飛ばして、『なるほど』と理解して、また別の自分に意識を飛ばして……。意識を飛ばしていて、全部自分ではあるんですけど、『じゃあ、そもそも今の自分ってどれ?』と思った時に、体がフワッと浮いた気がしたんです」