そう、『おかえりモネ』の脚本家は『サギデカ』の安達奈緒子氏だ。『サギデカ』は、詐欺犯を摘発しようと心血を注ぐ警視庁の女性刑事が主人公の社会派ヒューマンドラマだったが、玉置は両作を含め、安達脚本の魅力をこう語る。
「例えば『サギデカ』のような作品では、通常は善と悪の対立関係や、やっかみやねたみなど、主人公チームに対立する人たちとのぶつかりあいだけが描かれる展開になりがちだと思いますが、安達さんの脚本はちょっと違うんです。どちらにも正義と悪があり、それをお互いに抱えたまま物語が進んでいく点が秀逸です」
『おかえりモネ』についても「モネたちも悲喜こもごもいろんなものを抱えていて、それが解決する時もあれば、 誰かのひと言で救われたり、 逆にもっと煮詰まっちゃったりもします。朝ドラはスパンが長いので、いろんな思いが渦巻くし、視聴者さんも一緒に観ていて『頑張れ!』と応援したり、『そんなふうに考えなくていいよ』と思ったりもする。人に寄り添える脚本になっているのが、安達脚本の醍醐味だなと思っています」
朝岡役の西島秀俊も安達脚本について「とても繊細」だと表現していたが、その分、演じる側にも深いところまで読み取るスキルが求められるのではないか。
「そうですね。脚本にト書きも含め、登場人物のすべてを書いてくださる方もいらっしゃいますが、安達さんの脚本は、行間みたいなものを自分で探り、役を自分で組み立てていく作業をきちんと残してくださっている。すごく懐の深い脚本で、そこに取り組んでいけることがとても楽しいです」
後半戦で物語がよりうねりを見せていく『おかえりモネ』。今後、沢渡の人となりも深掘りされていきそうで実に楽しみだ。
1985年3月22日生まれ、東京都出身。劇団「柿喰う客」のメンバーとして活躍するほか様々な舞台に出演。近年はドラマや映画にも出演し、2019年、映画『教誨師』で第73回毎日映画コンクール スポニチグランプリ新人賞を受賞。近作のドラマは、『シェフは名探偵』(21)、『ひきこもり先生』(21)など。連続テレビ小説は『花子とアン』(14)に続き、2度目の出演となる。
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