◆PCMark 10 v2.1.2519(グラフ77~82)
PCMark 10 v2.1.2519
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/pcmark10
最後に一応確認のためにPCMark 10を。Ovearll(グラフ77)で、PCMark 10 Extendedで差が出るのはおそらくFireStrikeの結果であろうと判るのだが、PCMark Express/PCMark 10でも微妙な差が出るのはなぜ? ということでTest Group(グラフ78)を見ると、Productivityで妙にRadeon RX 6600 XTのスコアが悪い(逆になぜかDigital Contents CreationではRadeon RX 6600 XTが一番スコアが良い)。Essentials(グラフ79)ではApp Startupで微妙な差がついているが、逆にVideo ConferencingではRadeon RX 6600 XTが一番高速だったりする。ただEssentialsの結果は大きな差ではないから、これは測定誤差のうちとみなすこともできる。誤差とは言えないのがProductivity(グラフ80)であるが、差があるのはSpreadsheetsのみ。やはり予想通りOpenCL周りであった。
実データで示すと表2の通り。これはビル設計/株式市場/モンテカルロシミュレーション/エネルギー市場という4つのデータの再計算の時間を測定したもので、単位は秒。前半2つがCPU、後半2つがOpenCLということでGPUを使うものとなる。NaviアーキテクチャはOpenCL的なワークロードに最適化されていない、というのはAMDも公式に認めている話であるが、MonteCarloとかEnergyMarketでは6.5秒とか9秒とかを要しており、こうなると「OpenCL使わない方が早いんじゃね?」という気もしなくもない。
■表2 | |||
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テスト項目 | GeForce RTX 3060 | GeForce RTX 3060 Ti | Radeon RX 6600 XT |
Building Design CPU | 0.36 | 0.37 | 0.36 |
Stock History CPU | 0.68 | 0.67 | 0.70 |
MonteCarlo OpenCL | 0.63 | 0.51 | 6.50 |
EnergyMarket OpenCL | 0.96 | 0.79 | 8.95 |
(単位:sec) |
この性能の低さ(というか所要時間の長さ)には、冒頭にも書いた「I/FがPCIe Gen4 x8」であることも多少寄与しているとは思うが、仮にx16だったとして半分になるか? といえば疑わしいし、半分になってもまだ遅い。とはいえ、これがネックになるか? というと、例えば筆者がOpenCLを使う用途は? というと、PhotoshopとそのPlugInのNeatImage、それに写真現像用のDxO Photo Labsだけだし、こうした用途を考えているユーザーにはそもそもRadeon RX 6600 XTはあまりお勧めとは言い難い事を考えれば、あまりボトルネックにはならないように思う。
逆にDigital Contents Creation(グラフ81)では、Radeon RX 6600 XTは高いスコアを出しており(これもこれで今一つ理解しにくいのだが、例えばOpenCLを使ったVideo Deshakeの所要時間はRadeon RX 6600 XTが一番短い)、現実問題としてあまり意識する必要はないと思う。実際Application Test(グラフ82)を見ると、ExcelやWord、PowerPointなど「現実に広く使われている」アプリケーションではほぼ性能差が無い。まぁ総じて「ここでは性能差は無視できる範囲」として良いかと思う。
◆消費電力(グラフ83~88)
最後に消費電力測定を。3DMark FireStrike Demo(グラフ83)、F1 2021 2K(グラフ84)、Metro Exodus Enhanced Edition 2K(グラフ85)、Shadow of the Tomb Raider 2K(グラフ86)の消費電力変動の様子である。それぞれのフル稼働時の消費電力の平均値をグラフ87に、それと待機時消費電力の差をグラフ88にまとめた。
さて、もう見て明白なのが明らかに低いRadeon RX 6600 XTの消費電力である。3Dゲームをフル稼働している最中のシステム全体の消費電力が滅多に300Wを超えない(Shadow of the Tomb Raiderで2回、一瞬だけ超えた程度)という省電力ぶりは素晴らしいと言わざるを得ない。CPUがそれなりに多いRyzen 7 5800Xと組み合わせてこれだから、Ryzen 5 5600XとかRyzen 7 5700Gとかと組み合わせたら、200W台で安定稼働するシステムができる事になる。
グラフ87で見ると、大体フル稼働時の消費電力差は250~280W程度で、まぁ間を取って2270Wとするとして、ここからCPUやメモリの分を引くと概ね180~190W程度。Photo02でTBDが最大192Wとしているから、辻褄はあっている計算だ。CPUの構成によるが、350W電源でも安定して利用することができそうである。少なくともこの消費電力の点は、400Wクラスが欲しいGeForce RTX 3060や、450Wクラスが最低条件になりそうなGeForce RTX 3060 Tiよりも優れていると言える。
考察
そもそもGPUの性能は、色々細かい事を無視していってしまえば、シェーダの数×動作周波数で決まることになる。ということで今回試した3製品のシェーダ数と動作周波数(Boost Clock)から性能比をまとめてみたのが表3である。この比で言えば、Radeon RX 6600 XTはおおむねGeForce RTX 3060の8割強の絶対性能しか無い、ということになる。
■表3 | |||
---|---|---|---|
GeForce RTX 3060 | GeForce RTX 3060 Ti | Radeon RX 6600 XT | |
Shader(CUDA Core/SM)数 | 3584 | 4864 | 2048 |
Boost Clock(MHz) | 1771 | 1670 | 2589 |
Shader×Clock比(GeForce RTX 3060=1.0) | 1.000 | 1.280 | 0.835 |
もっともこれはCUDA CoreとSM(Streaming Processor)が同等のIPCを持っている、という前提での話である。ただ以前Radeon RX 6800 XTのベンチマークを行った際の結果で言えば、Radeon RX 6800 XTがGeForce RTX 3080と同等以上の性能であった。この際の比較で言えば、
GeForce RTX 3080 :8704 CUDA Core×1710MHz
Radeon RX 6800 XT:4608 SM×2250MHz
という構成なので、1SMの性能が大体1.44 CUDA Core程度になると計算すると辻褄があう。この比率をそのまま適用すると、Radeon RX 6600 XTの性能比はGeForce RTX 3060比で1.2倍ほどになり、GeForce RTX 3060 Tiにはやや負けるものの、GeForce RTX 3060には十分に勝てる、という計算になる。
では結果は? というとここまで見てきたように、GeForce RTX 3060との性能差は非常に少ない。試しに2Kでのゲームベンチ(+SuperPosition)での平均フレームレートをまとめてみたのが表4である。殆どのテストでGeForce RTX 3060 Tiが最高速なのはまぁ当然として、2番目のポジションをGeForce RTX 3060とRadeon RX 6600 XTで分け合っている格好だ。試しにこのフレームレートの平均を取ったところ、これも94.1fps vs 96.8fpsと、辛うじてRadeon RX 6600 XT辛勝となったが、GeForce RTX 3060 Tiの112.4fpsには遠い事は間違いない。
どうしてこんな結果になったか? というのは割と簡単に推察できる。メモリバスが128bitしかなく、これをInfinityCacheで補っているが、そのInfinityCacheも32MBしかないため、2Kでも場合によっては足りないし、2.5K以上では明らかにInfinityCache不足で、低いメモリ帯域がそのまま性能に反映されてしまっている、ということだ。これが48MB位あれば、2Kでの性能はもう少し引きあがるだろうし、64MBあれば2.5Kでもそこそこの性能になったと思う。32MBというのは、ギリギリGeForce RTX 3060に勝る程度でしかなく、しかも2.5K以上の解像度には適さない。AMDは"1080pに最適なビデオカード"と説明しているが、"1080pを超えると使えない"という方が正確だと思う。
もっともその分消費電力はGeForce RTX 3060よりも常に30W以上低い訳で、このあたりはGDDR6を128bitに抑えた事も大きな要因だと思う。少なくともエントリ向けのビデオカードとしては、悪くない結果ではあると思う。
個人的には、これがGeForce RTX 3060と同じ価格で販売されていたらかなり迷うと思うのだが、実際にはこちらで説明したように想定小売価格は50ドルほど高い訳で、ここで50ドル高いのであれば、2.5Kでもそこそこ使えるGeForce RTX 3060の方に惹かれてしまう。あとは日本での実売価格次第だろうか? GeForce RTX 3060もいまだに品不足のためか7万円台で普通に売られている事を考えると、これより安く出るようであれば絶対に買いなのだが。