◆消費電力(グラフ118~128)

最後に消費電力の確認結果を。まずはGeForce RTX 3080を使った場合である。テスト項目はSandraのDhrystone/Whetstone(グラフ118)、TMPGEnc Video Mastering Works 7で4streamの同時エンコード(グラフ119)、3DMark FireStrike Demo(グラフ120)とMetro Exodus PC Enhanced Editionを2Kでベンチマークした際の消費電力変動(グラフ121)である。これらの平均値と待機時消費電力をまとめたのがグラフ122、そこから待機時消費電力との差を求めたのがグラフ123となる。

  • グラフ118

  • グラフ119

  • グラフ120

  • グラフ121

  • グラフ122

  • グラフ123

まずDhrystone/Whetstoneは妙にスパイクが多いのだが、これは(後述の理由で)CPUではなくGPUが何か突発的に動いたのかもしれない。あとグラフ119で、冒頭25~26秒のみXFRが動いて消費電力が240W近くまで上がるが、そのあとは160Wあたりで安定する。このXFRの動く時間が30秒未満で抑えられているというのは、勿論性能を稼ぐには不利(特にベンチマークなどで)だろうが、安定利用の観点からすると好感が持てる。

それはともかくとして、平均値(グラフ122)を見ると、Ryzen 5000Gシリーズの消費電力はRyzen Pro 7 4750Gと大差ない、として良いかと思う。厳密に言えば微妙に増えている(特にグラフ123で比較すると差が顕著)が、性能の向上分を考えればこれは十分許容範囲かと思われる。TMPGEnc稼働時の平均消費電力差は95~100W前後に達しており、TDP 65Wはどこに行った? とか思われるかもしれないが、この時はメモリもフル稼働、ストレージもガンガン動いているという状況なので、この分を抜くと純粋にCPUの消費電力はギリギリ65W位に収まっていると思われる。その意味では、TDPの表記が信用できるCPUということになる。

次に内蔵GPUを使った場合を。やはりSandraのDhrystone/Whetstone(グラフ124)、3DMark FireStrike Demo(グラフ125)、それとFFXV Benchmarkの1K(グラフ126)の消費電力変動を示す。グラフ127が待機時消費電力+それぞれの平均、グラフ128が待機時消費電力との差である。

  • グラフ124

  • グラフ125

  • グラフ126

  • グラフ127

  • グラフ128

さて、先にSandraのDhrystone/WhetstoneにGPUの影響がでているのでは? と書いたのは、グラフ124を見るとスパイクが綺麗に消えているからだ。実際平均値をまとめてみると

外部GPU 内部GPU
Dhry Whet Dhry Whet
Ryzen Pro 7 4750G 83.8W 81.0W 78.6W 74.2W
Ryzen 5 5600G 73.3W 70.1W 73.2W 70.2W
Ryzen 7 5700G 80.2W 88.9W 78.5W 84.6W

という感じで、スパイクの出ないRyzen 5 5600Gはどちらもほぼ同じ。対してスパイクが出ているRyzen Pro 7 4750GやRyzen 7 5700Gは5W程度の上乗せという事になっている。おそらく測定値としては内蔵GPUを使った方が正確なのだろう。

考察

ということで、一通りRyzen 5000Gシリーズの性能を確認してみた。すごくざっくり言えば

  • Ryzen 5 5600G:Ryzen Pro 7 4750Gとほぼ同等(シングルスレッド性能ではやや上乗せあり)の性能を6コアで実現。
  • Ryzen 7 5700G:Ryzen Pro 7 4750GからCPU性能を相応に強化している。とはいえ、動作周波数はそれほど変わらないし、TDP 65W枠をきちんと守っている関係で、それほど大きな性能向上は無い。またGPUに関しては、若干改善はあるものの、過大な期待は禁物。

というあたりだろうか。もうRyzen Pro 7 4750Gの購入は難しい(一応今もAmazonで若干販売されている)が、昨年9月に筆者が購入した時の金額が\43,980である。一方Ryzen 5000Gシリーズの価格は先のPhoto01にあるように$359と$259である。AMDによれば国内販売価格はRyzen 7 5700Gが\51,800、Ryzen 5 5600Gが\36,800(どちらも税込)だそうで、Wraith Stealthが付属してくる事を考えると、Ryzen Pro 7 4750GとRyzen 7 5700Gの価格差は実質4~5,000円程度だろう。それでこの性能であれば申し分ない。

また、とりあえず安く新規にマシンを組みたい(そして後でアップグレードしたい)というエントリユーザーには、Ryzen 5 5600Gはかなりお勧めできる。値段は手ごろで、それでいてそこそこ使える(本格的にFPSを遊ぶとかは無理があるが、F1 2021位ならなんとかこなせる)内蔵GPUと、Ryzen Pro 7 4750G並みのCPU性能を持っており、オマケに消費電力は低い。

今回IntelのRocket Lakeとの比較は行っていないから性能面での言及は避けるが、これを考えると省電力性では選びやすいCPUではないだろう。このあたり、GPUを内蔵しないRyzen 5000は結構消費電力的に攻めた設定になっているのに対し、GPU統合のRyzen 5000GはTDP枠をかなり厳密に守っているようで、省電力を志向するユーザーにもお勧めできる。

その意味では、厳密にはRyzen 5000GはIntelのRocket Lakeとは競合しないのかもしれない。消費電力が多くても構わないし、3Dゲームを内蔵GPUで使ったりしない、というユーザーはむしろRocket Lakeの方が好ましいだろうし、そこそこの内蔵GPU性能が欲しいとか消費電力はきちんと低いまま維持される方が良いといったユーザーにはRyzen 5000Gという選択肢になるだろう。とりあえず筆者はこのRyzen Pro 7 4750G、どうしよう?