木月:営業を経験したことが役に立ったこととかあるんですか?
水野:『よるわまわるよ』っていう番組を土曜の早朝に1個立ち上げたんですけど、それは営業経験があったおかげですね。10秒くらいのアニメのループが15分間CMなしでずっと流れるんですよ。毎日は1日1日のループなので、1日の変わり目である朝4時くらいのなんとなく翌日なのか当日なのか分からない時間帯にループのアニメをかけましょうというのと、ループというところからサントリーさんのペットボトルのリサイクルの取り組みを訴求するというのをやってます。チョコレイト(※2)の栗林(和明)さんと話をしていたら「ループアニメを作りたい」と言ってたので、編成に電話かけて5分くらいで話をつけて、「うちの枠空けましたよ!」となって作ったんです。
(※2)…映像を軸に様々なエンタテイメントを制作するコンテンツスタジオ。
橋本:これからの時代のディレクターのあり方のすごいヒントだなと思いますね。
木月:橋本さんは営業兼務ですもんね。
橋本:はい、僕も頑張ってスポンサーさんのところに行ってプレゼンとかしてます(笑)
木月:あれだけ番組をやってて、いつそんな時間があるんだろうと思いますよ(笑)
水野:日テレで橋本さんと高橋利之さんが営業兼務になったという情報を聞いたときに、絶対うちの会社の人たちの耳には入れないでおこうと思いました。すぐ兼務にさせられちゃうから(笑)
橋本:でも、ネット時代のディレクターのあり方ってもっと自由な発想でいいと思ってるんですよね。だからどこを出し口にして、どういう尺のもので、どういう切り口でコンテンツを作るのかということもアイデアの先に考えて、どうやってお金をとってくるかとか、どういう会社と組んでやるのかみたいなことを考えていい時代に、だんだんなってきてるんじゃないかなと思って。佐久間さん(※3)なんてその先頭に立って、いろんなメディアでいろんなことやってると思うんですけど、コンテンツが先にあることで可能性がすごい広がるんですよ。水野さんがチョコレイトとこんなものをやりたいなというのがあることで、朝4時の枠が1つまた新しいメディアの場所になるし、それはテレビじゃなくて音声コンテンツかもしれないし、配信かもしれないし、僕が一生懸命やってる演劇かもしれないし。青臭い話で言うと、こんな時代こそ「こんなコンテンツが面白いと思ってるんです!」という、何を表現したいのかという思いが、メディアが増えていけば増えていくほど大事で、それがあればどこにでも出し口がある時代が、もう5年もしないうちに来ると思ってるんですよね。
(※3)…佐久間宣行氏。『ゴッドタン』『あちこちオードリー』『ウレロ』などを手掛けるプロデューサー。テレビ東京の社員でありながら、フジテレビ系列のラジオ局・ニッポン放送で『オールナイトニッポン0』を担当し、21年4月に独立。
木月:その思いを持っていることが大事ですよね。
橋本:そういう人材は大事だけど圧倒的に足りてないじゃないですか。だから、やっぱりそこを大事にしたいですよね。テレビというフィールドで勝てばいいのかとか、視聴率を追っかければいいのかということとつながると思うんですけど、根幹は「この時代の人たちに向けてこういう表現をしたい」「面白いことをやりたい」ということ。それが今はテレビが主戦場だけど、いろんな他の部署にたくましい仲間が集まってくると、「このスポンサーがお金出してくれると言ってる」とか「こういうイベントでやったほうがいいんじゃないか」ということがどんどん増えてきて、出し口が増えていくんですよ。そういう中で、いろんなクリエイティブなコンテンツというものがもっと必要になってくるのが、5年後に起きてくると思うんですよね。