乗り心地は秀逸
気になる点もあるC5エアクロスSUV PHEVだが、街に出ると少し大きさは感じるものの見晴らしはよく、すいすいと走り抜けられる。最も感銘を受けたのは乗り心地だ。ふわっとした、何とも形容できない心地よさがある。
これには「プログレッシブ・ハイドローリック・クッション」が大きく貢献している。ショックアブソーバーの中にセカンダリーダンパーが組み込まれている(つまり、ダンパーが2つ組み合わされている)ことにより、ショックをうまく吸収しつつ、しなやかな乗り心地を提供することが可能なのだ。さらに、この乗り心地に貢献しているのが、前述したぶ厚いシートであることは間違いない。
この乗り心地だが、実は注釈が必要だ。ドイツ車のように少し固めで路面の凹凸をきちんと乗員に伝えてくるタイプではなく、段差などを文字通りふわっと乗り越えて、そのときに若干の姿勢変化も伴うものなので、慣れるまでは違和感を持つ人もいるかもしれない。しかし、慣れてしまうと、全てに身を任せどこまでも走っていきたくなるような、そんな快適さを感じられるようになる。
街中から高速道路に走行シーンが変わっても、印象はほとんど同じだ。魔法の絨毯さながらに、快適にA地点からB地点まで乗員を運んでくれるのだ。
バッテリーとモーターを積むPHEVは重くなるのが避けられない運命で、C5エアクロスSUVでも200キロから300キロの重量増となる。特に、リアシート下にバッテリーを搭載する影響でクルマの後ろ側が重くなっているのだが、C5エアクロスSUV PHEVは全くそれを感じさせなかった。パワーにおいても過不足はない。
ただ、少々不思議だったのは、ガソリンモデルと比較して、電力分のパワーアップがほとんど感じられなかったことだ。もしかしたら、それが重量増を相殺しているのかもしれない。
大きく差が感じられない燃費
さて、ここで燃費について触れておきたい。C5エアクロスSUV PHEVは実測値で市街地:10.3km/l、高速:18.5km/lという結果だった。
この数値は電力を使い果たし、ハイブリッドモードで走行して計測したものだ。ちなみに、走り出した時はフル充電の状態だったのだが、実際にエンジンがかかるまでの走行距離は41.7キロであった。
今回はスケジュールの都合上、郊外路の計測はできなかったが、WLTCモード燃費と比較すると高速はかなり近く、市街地では若干悪化している程度なので、郊外路はWLTCモード燃費を参考にしていただければと思う。ちなみに市街地燃費が悪化した理由は、事故渋滞に遭遇し、30分以上もストップ&ゴーの繰り返してしまったからで、これが下限値と考えてもらえればと思う。
さて、この数値をどう評価するかだが、ガソリンと比較するとわずかに伸びているものの、ディーゼルとはそれほど大きな差はない。約41キロは電力で走行できるが、それ以外には、あまりメリットが感じられないようだ。
充電に関しては単相200V、6kWまでの普通充電に対応。所要時間は3kWで約5時間、6kWではその半分である。
何度も述べてきたように、現在、C5エアクロスSUVにはガソリン、ディーゼル、そしてこのPHEVの3つのパワートレインが存在する。長距離を走ることが多い方にはディーゼルがお勧めだが、ディーゼルならではの振動や音が気になる人や、それほど長距離は走らないという人にはガソリンがいいだろう。
では、PHEVは誰向けのクルマなのか。非常に悩むところなのだが、まずは充電器が身近にあり、常にクルマを満充電にしておける状況にあることが重要だ。そして、日常では街中のお買い物程度で、休日にたまに遠出するという使用状況の人ということになるだろうか。つまり、日常では常にモーターで走行し、遠出の時には最初はモーターで、その後はハイブリッドで走るというシーンが多い方にはお勧めだろう。
価格差を見ると、PHEVの車両本体価格は同じ装備レベルのディーゼルバージョンからプラス74万円となる550万円だ。PHEVのみに適用される自動車税減税と、クリーンエネルギー自動車補助金の恩恵で、実質価格差は50万円程度にまで圧縮できる。環境省事業や自治体による助成金を含めれば価格差はより縮まる。
惜しいのは、PHEVを選んでも走りにおいて大きな差異が感じられないところだ。例えばプジョー「3008」のように、PHEVを選択すると4WDになるなどの違いがあれば比べがいがあるのだが、C5エアクロスSUV PHEVはFFなので、ほかのパワートレインと変わらない。そのうえでこの価格差を踏まえると、果たしてどういったユーザーが実際に購入するのか、興味のあるところである。