レンズは望遠、超広角、広角の3つ

最近のXperiaシリーズは、Xperia 1/5/8/10といった具合に分けられていますが、ハイエンドのXperia 1とXperia 5の最大の違いがカメラです。

今回のXperia 1 IIIとXperia 5 IIIも、基本的な機能は共通化しながら、Xperia 1 IIIにしかない機能が盛り込まれています。

それが望遠側のレンズです。Xperia 1 IIIは4つのレンズを搭載するクアッドカメラですが、正確には「3つのセンサーに4つのレンズ」という仕組みになっています。

  • 一見するとカメラは3つですが、一番左の望遠カメラが可変式になっており、2つの焦点距離をカバーしています

搭載されているレンズは、35mm判換算で16mmの超広角カメラ、24mmの広角メインカメラ、70mm、105mmの望遠カメラの4つです。このうち、70mmと105mmのレンズは、「世界初」という可変式望遠レンズを採用しています。

  • メインレンズで撮影。質感も良く彩度も派手になりすぎず、過度に強調しない自然な写りです。背景のボケが少し気になるところ ※以下、写真作例は1,200ドットにリサイズ。画像クリックで原寸大へのリンクが表示されます)

  • 超広角で撮影してみると、画面左上の外に太陽があるためか、少しゴーストが発生してコントラストが低下していますが、狛犬の描写は十分

望遠レンズは70mm、105mmの可変式に

スマートフォンの一般的な望遠カメラは、それぞれ焦点距離の異なる単焦点レンズを個別のセンサーに配置します。

しかし可変式レンズの場合、レンズユニット内でレンズを動かして焦点距離を切り替え、1つのセンサーに対して2つの焦点距離を実現しています。

通常のカメラの場合、無段階でレンズの位置が変わるズームレンズを使うことで、複数の焦点距離をカバーできますが、今回の可変式レンズは70mmと105mmの2段階に切り替わるもの。

なので、途中の焦点距離はカバーできません。その代わり、1つのセンサーで済むので、2つのセンサーを用意するより省スペースです。

その分、レンズユニットは長くなるのですが、厚み方向にレンズを押し込むのではなく、屈曲光学系を採用して、センサーを横に配置し、横方向にレンズユニットを搭載することで、厚みを増やさずに可変式レンズを実現しています。

内蔵レンズユニットの模型を見ると、レンズ後方の2群のレンズが前後に動くことで焦点距離を切り替えているようです。レンズからセンサーまでの距離が短い方が広角、長い方が望遠になるため、70mmの時はレンズが後方に動き、105mmの時はレンズが前方に動くことで、焦点距離が切り替わります。

  • NTTドコモがXperia 1 III端末発表時に展示していたレンズユニットの模型。横方向にレンズを設置し、一部を左右に動かすことで2つの焦点距離を切り替えます

ズームレンズではないので、無段階で焦点距離を変えられないのは残念ですが、センサーが同じでレンズユニットも1つということで、画質的にはあまり差がないというのはメリットの1つでしょう。

一般的なズームレンズでも焦点距離が変われば画質は変化するので、可変式レンズでも同様でしょうが、センサー自体が異なるスマートフォンの従来の仕組みよりも、画質変化は少なそうです。

  • 超広角(16mm相当)で撮影。超広角レンズということで周辺はやや流れていますが、このあたりはしょうがないでしょう。中心部の画質は良好で描写も十分なもの

  • 広角(24mm相当)で撮影。こうした遠景の風景だと画素数の少なさが感じられますが、全体的な画質は良好

  • 【写真上下】それぞれ70mm相当(上)と105mm相当(下)の望遠。画質差はそれほどなく、どちらのレンズでも十分な描写となっています

画素数は3レンズ全て1,220万画素

搭載された3つのセンサーが全て1,220万画素・デュアルPDによる位相差AFに対応している点もその一環でしょう。

センサー自体は各レンズで異なり、センサーサイズも違うので、厳密には同じ画質にはなりませんが、どのレンズに切り替えても、機能や画質が近しくなるという設計思想は好印象。「メインカメラじゃないとあまりきれいに撮れない」という弊害はなさそうです。

実際に使ってみると、可変式といっても使い方は普通のカメラと同じで違和感はありません。描写はクリアで質感高く、1,220万画素と抑えめの画素数なので、無理のない描写です。ズーミングしてもそれほど画質は変わらない印象です。

  • 105mmの望遠端で撮影。バランスの良い描写で見た目通りに再現してくれています

  • 同じ場所から70mmで。描写の傾向は同じで、どちらも十分な画質