――本作でビアは新しいビジネスパートナーを得ますが、自分の作家性を見失いそうになります。お二人は、これまでキャリアの分岐点で、迷いや戸惑いはありましたか?

哀川:俺は流れに逆らわないで来た感じかな。最初はグループ(一世風靡セピア)で活動していて、歌から入ったけど、解散してからは、俺個人にいろんなオファーがもらえるようになった。そこで、せっかく自分に声をかけてくれたのなら、その期待に応えたいと思ってやっていったら、俳優の道が開けていった。

――例えばそのなかで、やりたくないお仕事はなかったのですか?

哀川:そんなに嫌なことは要求されなかったし、すごく嫌じゃなければ何事もやったほうがいいというのが俺の考え方。Vシネマの立ち上げ当初も、トレンディドラマが全盛期な時代だったけど、こっちは任侠ものでドンパチをやろうぜ! とやっていたら、そこを求める人がいてくれた。100作目が『ゼブラーマン』で、それを宣伝するためにバラエティ番組に出たら、そこからどんどん番組のオファーももらうようになった。

千葉:哀川さんのお話はすごく面白くて、勉強になることばかり。哀川さんは0から1を作った人だから、説得力が違います。僕なんてできあがったものに乗っかってやってきただけなので、本当にすごいと思います。

――お二人は一見、全く違うタイプの俳優さんという印象を受けますが、例えば舞台挨拶や会見などで、ちゃんと周りの空気を読んで、面白い発言をされるという印象があります。

哀川:いやいや、俺は面白いことをしゃべろうとは思ってないし、実際に素は本当に面白くないよ。

千葉:いや、そんなことはないです! でも僕は、自分が面白い人間だとは思ってないし、実際に面白いことをできないのがわかっているからこそ、バラエティ番組に出させていただく時、せめて向こうから投げていただいた球は、ちゃんと打てるように準備をしておきたいという思いはあります。

哀川:その心構えがいいんだよ。俺もそうで、常に打ち返そうという意欲は持っていたい。だからいつも油断はできないけど、そうやって打っていけば、きっと結果が出るから。

千葉:確かにそうかもしれないです。

哀川:やっぱり終わったあとに後悔したくないから。ただ、竿をたれているだけじゃ魚は釣れない。どうすりゃいいんだろうと試行錯誤する人が釣るわけよ。そういう意味では、遊びも一生懸命やったやつが勝つと思う。

――哀川さんはいろんな趣味にも全力投球されている印象があります。千葉さんはいかがですか?

千葉:僕は哀川さんみたいに突き詰めた趣味はないんですが、コロナ禍で家にいる時間が増えたので、自分をクサらせないように、家で楽しむ充実感みたいなものは上げたいなとは思っています。僕はカラオケが好きなので、家でできる環境を整えたし、料理もいろいろと作るようになりました。和食だけではなく、先日はガパオやタコライスなども作りましたし。そうすると、だんだん器などにも凝り出してきて、楽しくなってきました。

哀川:いいじゃない! 遊びも仕事も一緒だよ。

千葉:そうですね。今日はなんだか哀川さんとお話をさせてもらって、すごく元気が出ました。ありがとうございます!

■千葉雄大
1989年3月9日生まれ、宮城県出身。2009年に『天装戦隊ゴセイジャー』の主人公アラタ/ゴセイレッド役で俳優デビュー。主な出演映画に『帝一の國』(17)、『スマホを落としただけなのに』(18)、『人間失格 太宰治と3人の女たち』(19)、『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』(20)など。日本テレビ系『MUSIC BLOOD』(毎週金曜23:00~)にレギュラー出演中。『千葉雄大のラジオプレイ』(YouTube)が配信スタート。
■哀川翔
1961年5月24日生まれ、鹿児島県出身。一世風靡セピアの一員としてレコードデビュー。俳優としてドラマ『とんぼ』(88)で注目される。1990年、東映Vシネマ『ネオチンピラ・鉄砲玉ぴゅ~/高橋伴明監督作品』が大ヒットし、以後、数々のヒットシリーズに出演。『この胸のときめきを』(88)で映画デビュー。『復讐』『DEAD OR ALIVE』『デコトラの鷲』『ゼブラーマン』などの映画シリーズで主演を務めている。『ゼブラーマン』(04)で第28回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。