また、自分の仕事に情熱を注ぐ“仕事人間”の共働き夫婦である咲と紘一に、かなり感情移入していったという北川。「うちも共働きの夫婦なので、お互い仕事の大事な時期が重なってしまった時の気持ちはよくわかりました。第5話で、夫が帰ってきたのに、咲がずっと仕事の電話をしていたり、夫が話したいのに時間が取れなかったりするのは、共働きの夫婦間でよくあることかなと。夫と向き合えないと、自分自身が自己嫌悪に陥ったりもするだろうし。かといって家庭に尽力しようとすると、仕事面でより一層頑張らなきゃいけないと思い、パンクしちゃう。そのバランスが難しいと思うので、あの回はすごくリアルでした」
紘一が咲に対して「仕事をやめて家庭に入ってもらえないか」と詰め寄るシーンについても「私自身も共感できました」とうなずく。「咲としては、自分の仕事の相手である(カリスマ恋愛小説家の)水無月先生(白洲迅)にも、夫にも誠実に向き合いたいんです。ただ、水無月先生は外の方だけど、夫は100歩譲って家族だからわかってくれるだろうと、どうしても家族に甘えがちになってしまう。そこもすごくリアルで、自分も気をつけようと思いなら演じました」
北川自身も咲と同じように、以前は仕事が最優先だったと言う。「結婚するまでは全然悩むことなく仕事だけに生きてきました。私は17歳でデビューしましたが、休みの期間が長いと不安だったし、休んでいる間に同年代の女優さんが活躍しているのを見ると、こうしていてはいけない、怠けずに働かなきゃと思ってしまう仕事人間でした。それこそ『仕事が命』という考え方が、この世界で生きていくうえで当たり前だと思っていました」
その後、DAIGOと出会い、29歳で結婚し、昨年9月に母となった。「入籍してからも、結婚前に決まっていた仕事が2~3年分あったので、その後もスタンスは変わらずに仕事を優先してきました。夫もすごく忙しい人だったし、お互いの仕事の状況をわかったうえで結婚したので、そこは2人とも干渉はしなかったです。やりたい仕事ももちろん反対しないし、海外ロケも必要であれば行くし、子供ができるまでは同居人みたいな感じで、お互いを尊重する形でやってきました。そういう意味では、子供ができた時に、一番迷いました。こんなに休まなきゃいけないけど、大丈夫かなと思って」と胸の内を吐露する。
出産後、わずか半年のスピード復帰を果たして、『リコカツ』の主演を務めた北川。仕事と家庭の両立というテーマを真っ向から描くドラマで、今の北川が葛藤するヒロインを演じたからこそ、多くの人々の心を揺さぶったのではないだろうか。「これまでの私は、職業ものやバリバリ働く強い女性を描くドラマが多かったんです。こういうホームドラマは初めてやらせてもらい、すごく難しかったのですが、やって良かったと思える作品になりました。やはり視聴者のみなさんが応援してくださったし、この作品がより自分を成長させてくれたと思いますし」
そんな北川だが「ここ数年、このペースで仕事をするのは、年齢的に難しいなとも思い始めました。子供が生まれたし、家庭とも向き合いたいという気持ちにようやくなってきました」と心境の変化も明かす。
「今回主演ということで、4カ月間、家を空ける時間が長かったのですが、子供もいるので、夫はもちろん、自分の親や相手の親など家族に協力をしてもらい、なんとか育児と家庭を回していったというか、それこそ総出でやってもらった感じでした。だから、このドラマが終わったら、まずは家族に『みんなのおかげでやれたので、ありがとう』と言いたいです。ずっと負担をかけて、我慢させてるなと思いながらの4カ月間だったから、本当に感謝でいっぱいです」