夏木は、朝ドラならではの苦労について「多くのみなさんがご覧になっているので、反響が大きくて個人的には困ります」と苦笑い。

最近それを痛感したのは、サヤカが能舞台で能管を吹いたシーンでの反響だという。普段は金髪のサヤカだが、その時は髪を黒く染め上げていた。ところがその後、また通常の金髪に戻っていて、そのことにツッコミを入れるコメントがSNSで多く上げられた。「そういう朝ドラファンならではの細かい目線があるなと思います」と笑う。

『カーネーション』の撮影時と違い、今はコロナ禍ということで、感染予防対策が徹底されている分、味気なさや寂しさもあるようだ。

「打ち上げもできなさそうですし、差し入れもダメでしょ。普通は朝ドラだと地元の方が炊き出しなどをして歓迎してくださるんですが、コロナなので現場には一切食べ物が置かれてないという状況です。また、通常なら同じ時間に終わる人がいたら、ちょっとごはんでも、となりますが、いまは『じゃあね』とそのまま帰ります。それもこのご時世だからしょうがないですね」

とはいえ夏木は、朝ドラならではの楽しみも心得ている。「登米はお米と牛肉がめちゃくちゃおいしいってことを初めて知りました。ホテルから歩いてすぐのお寿司屋さんでは、牛肉のお寿司が出てくるので、そこには通い詰めました(笑)。気仙沼でもふかひれ寿司をいただいたし。私は食いしん坊なので、空き時間にごはん屋さんを探してしまいます」とのこと。

今年で69歳となった夏木。長年俳優として刻んできた年輪は、そのままサヤカという役にもにじんでいて、非常に深みを感じさせる。

「山と結婚しているような女ですから、潔さや責任感とか、人間としての大きさがあるんじゃないかと。良い台詞もいっぱいありますが、その台詞を言う時は、その人の度量が出るようにしたいから、いい人にならないように気をつけています。言い方によっては優しくなっちゃうので、そこを排除し、ドーンと頼れるようなサヤカさんにしようとはしてきました」と聞いて大いに納得。

また、サヤカにとってモネはどういう存在なのかと聞くと、夏木は「サヤカさんはずっと1人で暮らしてきましたが、そこに若いモネが来て、若者なりの迷いみたいなものを抱いていることを知って、いろんなウンチクを言いますが、自分自身もそれを確認しているようなところもあるんじゃないかと。台詞を言うたびにそう思っていました」と言う。すなわち、モネとの交流を経て、サヤカ自身も気づきがあるのだと捉えている。