既報の通り、NVIDIAはGeForce RTX 3080 Tiを6月3日より$1199で発売開始する。これに先駆けて試用する機会に恵まれたので、その性能をレポートとしてお届けしたい。
ベンチマークテストの環境
まず最初にスペックを表1に示す。GeForce RTX 3080 TiはGeForce RTX 3080/3090同様にA102コアを使った製品で、構成的にはかなりGeForce RTX 3090に近い。性能差が出るとすればメモリ周りであって、メモリバスそのものはGeForce RTX 3090と同じく384bitながらメモリ容量は半減の12GB。またメモリクロックも9.5Gbpsに下げられており、GDDR6X 19Gbps動作(GeForce RTX 3090は19.5Gbps動作)となる。これがどの程度性能に影響するか、というのは実際に確認してみる必要があるが。
■表1 | ||||
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RTX 3070 | RTX 3080 | RTX 3080 Ti | RTX 3090 | |
コア | GA104 | GA102 | GA102 | GA102 |
SM数 | 46 | 68 | 80 | 82 |
CUDA Core数 | 5888 | 8704 | 10240 | 10496 |
Tensor Core数 | 184 | 272 | 320 | 328 |
RT Core数 | 46 | 68 | 80 | 82 |
Texture Unit数 | 184 | 272 | 320 | 328 |
ROP数 | 96 | 96 | 112 | 112 |
GPU Base Clock(MHz) | 1500 | 1440 | 1365 | 1395 |
GPU Boost Clock(MHz) | 1725 | 1710 | 1665 | 1695 |
Memory種別 | GDDR6 | GDDR6X | GDDR6X | GDDR6X |
Memory Clock(MHz) | 7000 | 9500 | 9500 | 9750 |
Memory容量(GB) | 8 | 10 | 12 | 24 |
Memory Bus(bit) | 256 | 320 | 384 | 384 |
TGP(W) | 220 | 320 | 350 | 350 |
ちなみにTGP(Total Graphic Power:TDPにほぼ同じ)は350Wと、これもGeForce RTX 3090と同じになっている。
今回はFounders editionを利用しての評価となった関係で、見かけそのものはGeForce RTX 3080の時と大差ない(Photo01~11)。ちなみにカード寸法は385mm×97mm×35mm(実測値)で、これもGeForce RTX 3080と同一。重量は1363.6g(実測値)で、以前試したGeForce RTX 3080(1352.5g)よりわずかに重いが、GDDR6Xチップが1個増えているあたりが要因かもしれない。それにしても、同じTGPが350WだったGeForce RTX 3090が一回り大きなサイズだったのに対し、GeForce RTX 3080 TiはGeForce RTX 3080とほぼ変わらない(というか、見た限り同一?な)ヒートシンク構造になっており、これで大丈夫なのか? という疑問はやや残るころである。
GPU-Zでの表示(Photo12)を見る限り、GeForce RTX 3080と同じRevision A1ダイであり、有効コア数が増えた分やや動作周波数を落としている感じである。またPower Adjustment RangeもGeForce RTX 3080の-69%~+16%から、-71%~14%とやや控えめになった(Photo13)。
その他のテスト環境は表2に示す通りだ。以前のGeForce RTX 3080のテストの際と構成は近いが
- CPUを更新(Ryzen 7 5800X)
- マザーを交換(TUF Gaming X570-PLUSが変な挙動をするので、X570 Pro4に交換)
- OSをWindows 10 21H1に更新
と大幅に環境が異なっているので、GeForce RTX 3070/3080についても今回改めてデータを取り直した。ちなみにGeForce RTX 3090は手配が間に合わないので今回見送りとさせていただいた。
■表2 | ||
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CPU | AMD Ryzen 7 5800X | |
M/B | ASRock X570 Pro4 | |
BIOS | P4.00 | |
Memory | Micron 16ATF2G64AZ-3G2E1(DDR4-3200 16GB CL22)×2 | |
Video | NVIDIA GeForce RTX 3070 FE NVIDIA GeForce RTX 3080 FE |
NVIDIA GeForce RTX 3080 Ti FE |
Driver | GeForce Driver 466.27 DCH WHQL | GeForce Driver 466.54 DCH |
Storage | Seagate FireCuda 520 512GB(M.2/PCIe 4.0 x4) (Boot) WD WD20EARS 2TB(SATA 3.0)(Data) |
|
OS | Windows 10 Pro 日本語版 21H1 Build 19043.985 |
なお、以降のグラフでは、
3070 :GeForce RTX 3070 Founders Edition
3080 :GeForce RTX 3080 Founders Edition
3080 Ti :GeForce RTX 3080 Ti Founders Edition
と表記している。今回は全部NVIDIA製品なので、使えるものはDXRT Onにし、またDLSSも基本的には有効にしている(例外はShadow of the Tomb Raiderであるが、これは後述)。また本文中の解像度表記は、いつものように
2K :1920×1080pixel
2.5K:2560×1440pixel
3K :3200×1800pixel
4K :3840×2160pixel
とさせていただいた。
◆3DMark v2.18.7154(グラフ1~4)
3DMark v2.18.7154
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/3dmark
細かくバージョンアップを繰り返す3DMark。最新版ではWildLife Extremeが追加になっている。
ということでまずグラフ1でOverallを見ると、GeForce RTX 3070/3080/3080 Tiの3製品がほぼ同じ程度の差で並ぶという、ある意味判りやすい結果になっている。何しろCPUが一緒だから、性能差は主にGraphics Test(グラフ2)の結果によるわけで、まぁこちらも判りやすい。逆にPhysics/CPU Score(グラフ3)は当然ながらGPUによるCPUの性能差などないわけで、違いは誤差の範囲。Combined Test(グラフ4)も、基本CPUの性能差が無いからほぼGPUの性能差になる訳で、これも実に判りやすい結果となった(FireStrikeの性能差が乏しいのは、GPU負荷が軽すぎてCPUネックに陥っているためである)。まぁ、判りやすい結果になったというべきか。
◆SuperPosition v1.1(グラフ5~11)
SuperPosition v1.1
Unigine
https://benchmark.unigine.com/superposition
次はSuperPosition。今回はShaders Quality/Texture Quality共にHigh、Depth of Field/Motiron Blur共に有効という環境で実施した。
さて、平均/最大/最小(グラフ5~7)のフレームレートを見ると、GeForce RTX 3080 Tiの性能の高さはここでも明白である。平均フレームレートが4Kで60fps超えはこれまでGeForce RTX 3090のみ(Radeon RX 6900XTでも微妙に60fpsを切っていた)だったので、かなりGeForce RTX 3090に近い性能であると想像される。
フレームレート変動(グラフ8~11)を見ても明確にGeForce RTX 3080とグラフが分離しており、4K(グラフ11)ですらGeForce RTX 3080 Tiはめったに60fpsを切らないというあたりはかなり優秀として良いかと思う。
◆Bright Memory Infinite Ray Tracing Benchmark(グラフ12~18)
Bright Memory Infinite Ray Tracing Benchmark
FYQD Personal Studio(飛燕群島個人工作室)
https://store.steampowered.com/app/1409670/
テスト手順はこちらのBright Memory Infinite Ray Tracing Benchmarkの項目を参照。ちなみに以前はRadeon RX 6000シリーズと混在の関係でDLSSを無効化していたが、今回は
- RTX Quality: High
- DLSS: Performance
としている。この関係で結果は以前とまるで異なっている事に注意されたい。
ということで平均/最大/最小(グラフ12~14)フレームレートを見ると、GeForce RTX 3070ですら3Kまでは使い物になるし、GeForce RTX 3080は4Kまでそれなりのスコアが出るが、GeForce RTX 3080 Tiはそこから更に上乗せが行われた格好である。
フレームレート変動(グラフ15~18)を見ると結構変化が激しい(22~23秒あたりが一番負荷が厳しい)が、GeForce RTX 3080 Tiは4K(グラフ18)でもほぼ45fps以上、殆どの場合で60fpsを維持している。GeForce RTX 3080→GeForce RTX 3080 Tiでかなり性能の底上げがなされた、と判断して良いかと思う。