WEBドラマへの出演を重ね、2020年には『小説の神様』で映画デビューを果たした莉子。女優のやりがいをどう感じているか尋ねると、「最初は演技のお仕事をしたくなかったんですよ(笑)」と意外な本音が返ってきた。
「楽しさを感じなかったんです。そもそも演技をするということが、よくわかってなかった。私はモデルがしたいとしか思っていなかったので、人前で何かをすることが嫌でした。演技って割り切らないといけなくて、羞恥心を捨てないといけない。それがまったくできなかった。ほかの誰かになるというレベルではなかったですね。小さい頃から演技が嫌でした」。
演技に対する苦手意識が消えないまま、オーディションに通う日々を送った。「オーディションに行くようになったけれど、それでも嫌でした。今思うと中途半端な気持ちでやっていたと思うけれど、頑張ろうと思っても頑張れなかった。やる気が出なかったんです」。そしてある時、突然転機が訪れる。前述の映画『小説の神様』である。
「主演の佐藤大樹さんの妹役を演じさせていただいた時に、そこで初めて本当の演技を知ったような気がしたんです。橋本環奈さんなど共演者の方たちにも圧倒され、その時に役作りの方法も教えてもらいました。私、基礎を知らなかったんです。それでどんどん演技が嫌になり、ワークショップも基礎がわからないままの状態で行っては怒られ、なんとなくやっていたと思います。そういう自分も嫌でした。『小説の神様』でいろいろと教えてもらい、すごく変わりました」。
それから見違えるように演技に集中するようになったという。「今はカメラの前に立つことが楽しいです。さらにそれが作品としてみなさんに届くと達成感も感じます。撮っている時、放送後の反応を知ることも楽しい。今は本当に演技が楽しいです。こんなに変わるとは自分でも思っていなかったです」と笑顔を浮かべる。
その一方で仕事として女優をしている自分のことについて不思議な感じがするという。「普段は莉子として学校へ行ったりしていますけど、撮影期間にはもうひとりの自分がいるような気がします。現場でカメラ前に立つと、ふとスイッチが入る。家で泣く練習をしてもダメなのですが、現場ならすぐ涙が出るんです。今回で言うと、愛波に瞬間でなれる。それは今回の現場で初めて感じたことでした。本当にこの作品に出会えてよかったです。クランクアップが寂しいです(笑)」。