東京ドームの約19倍という広大な敷地で、観覧車などのアトラクションやお花畑、動物とのふれあい、バーベキューまで楽しめるテーマパーク「東京ドイツ村」(千葉県袖ケ浦市)。落とし穴を掘ったり池に落下させたりと、バラエティ番組の派手な仕掛けに対応可能で、スタッフの間では“聖地”とも呼ばれているが、コロナ禍の今、ロケ地としての需要がさらに高まっているという。
なぜ、家族で楽しめるテーマパークがバラエティ番組と親和性が高いのか。東京ドイツ村の担当者と、常連のバラエティ番組スタッフに話を聞いた――。
■落とし穴を“たくさん”掘らせてくれる唯一の場所
東京ドイツ村では、現在年間約10~20本程度のロケがあるそうだが、圧倒的にバラエティ番組が多いという。そのきっかけは、『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ)の落とし穴ドッキリ企画「全落オープン」だ。
2010年6月24日放送の第1回大会から、この東京ドイツ村を舞台に開催。園内の中心に位置する芝生広場に6カ所程度の落とし穴を仕掛け、芸人らが次々に落ちていく様子が1時間番組でまるまる放送されると、テレビ業界で「あそこ、掘っていいんだ」という認識が広まった。それまでは情報番組でお出かけスポットとして紹介されるロケが多かったが、バラエティ番組からのオファーが急増するようになったという。
テーマパークの広場に人が落ちる規模の大きな穴を掘るというのは、他の施設なら大抵NGだろう。しかし、東京ドイツ村の山尾隆一総支配人の「近所の方や来園者のお客様に迷惑をかけなければ」という判断で、柔軟に受け入れるようになった。
『みなさんのおかげでした』のディレクターだったフジテレビの中川将史氏は「演出のマッコイ斉藤氏が、落とし穴だけの大スペシャル(全落シリーズ)をやりたいとのことで、スタッフ総出で関東近郊で落とし穴を“たくさん”掘らせてくれる場所をリサーチした結果、唯一OKを頂いたのが東京ドイツ村さんでした」と振り返る。
■総支配人が率先して穴掘り作業
実際に穴を掘るのは、なんと東京ドイツ村のスタッフ。「地中には水道管や電気配線等が通ってるので、それを把握している我々がやるんです」(東京ドイツ村 イベント・広報担当の古神子幸彦氏、記載なければ以下同)といい、初期の頃は総支配人自ら率先して穴を掘っていたという。
平均的なサイズは、縦横2m×3mに深さ2.5m程度。ユンボなどの重機を稼働し、作業人数にもよるが、朝9時から夕方5~6時頃までに穴掘りを完了させ、そこに、番組スタッフがクッションになるスポンジを敷き、穴を隠すフタを付けるなどして完成となる。
ロケが終わると、穴を埋めるのも東京ドイツ村のスタッフの仕事。何度も使用してきた『みなさん』のスタッフとは、「連携が取れているので、スムーズに作業できました」と、良好なチームワークが形成された。
落とし穴に落ちる「全落オープン」から、水に落下する「水落オープン」に企画が移行すると、今度はボートのある池が大活躍。「あそこには数十人は落ちてますね」と、東京ドイツ村で引き続きロケが行われていた。
中川氏は「かなりムチャな提案もしたのですが、むしろこちらが驚くくらい快く協力していただき、以後、全落シリーズは番組の名物企画として続いていくことになりました。感謝はもちろんですが、スタッフ一同、ドイツ村さんのことが大好きになってしまいました(笑)」と常連になった経緯を明かす。