“信長のリアリティ”を探求することについて、今回は海老蔵が演じるということも大きなヒントになったという。
「海老蔵さんの肉体の雰囲気とか、そういうものが手がかりになりました。海老蔵さんと信長のイメージはかなり重なる部分もあったので、そういう意味でも、今回はすごく役者さんの存在が助けになりましたね」
では、海老蔵が信長を演じるということで、新たに思いを込めた部分はあったのだろうか。
「今回海老蔵さんが團十郎という大名跡を継ぐということは、歌舞伎界では天下人になるくらいの気持ちなんだと思うんです。だけど、海老蔵さんはきっと、大名跡を受け継いでそれを守っていくだけじゃなく、新しい團十郎というものを自分で作り上げていく人なんだろうという思いもあったので、信長と同じように、一から自分の世界を作り上げていける、そういう生き方の背中を押せるような作品にしたいなという思いを込めました」
■『なつぞら』以来の広瀬すず「ポテンシャルは人一倍信じている」
今作は、信長の正室・濃姫を、時代劇初挑戦の広瀬すずが演じることでも話題だ。広瀬と言えば、大森氏が脚本を担当した『なつぞら』で主演を務めている。
そんな彼女が濃姫を演じることに対しては、「書いている時は広瀬すずさんのことは全く想定していなかったので、純粋に濃姫という存在を彼女がどうアプローチして、どういう濃姫を作りあげるんだろうと思いました。彼女のポテンシャルは人一倍信じているつもりでいるので、こう演じてほしいということではなく、彼女がどう演じるんだろうという興味がすごく湧いてきましたね」と期待を寄せる。
その他、三上博史が桶狭間の戦いにおける最大の脅威、駿河の大大名・今川義元を演じているが、「特に今川義元というのは織田信長が最初に乗り越えなきゃいけない大きな壁のようなものなので、その壁が薄く見えたら非常にドラマとしても薄いものになってしまうと思いました。ですが三上さんにやっていただけて、気位が高くて旧時代の武家社会みたいなものを象徴するような、そんな人物にうまく表現してくださったと思いますね」と太鼓判を押した。
■役者の色気を引き出す河毛俊作監督
監督を務めるのは、大森氏と柳楽優弥主演の映画『星になった少年』(05年)や、香取慎吾主演のスペシャルドラマ『黒部の太陽』(09年)、時代劇では中村梅雀主演『雨の首ふり坂』(18年)でもタッグを組んだ河毛俊作氏だ。
「河毛さんは、どんな世界観を作り上げてくれるのか、いつもその楽しみを与えてくださる演出家です。常に新しい世界を追求している方なんです。だから思い切って自分の想像した世界をぶつけられる。また、演者にも信頼されているから、いい芝居を引き出せる。とにかく役者さんを色っぽく撮られる監督なので、今回も役者さん全員が素敵でしたし、特に海老蔵さんなんかは持ち前の色気っていうのがプンプンしてきて! それがドラマから感じられると思うので、その色気が信長の魅力と相まって、見てる人をすごくワクワクさせてくれると思いますよ」と予告してくれた。