女優の堀田真由がドラマ初主演を飾る『サロガシー』が、フジテレビで24日(24:55~25:55 ※関東ローカル)に放送される。坂元裕二、野島伸司、安達奈緒子、野木亜紀子など、数多くのドラマ界を支える脚本家を輩出したシナリオコンクール「フジテレビヤングシナリオ大賞」で、的場友見さんが大賞を受賞した作品だ。
監督を務めるのは、脚本家と主演と同じく今作が初めての演出となるフジテレビの清矢明子氏。これまで『独身貴族』(13年)や、『モンテ・クリスト伯―華麗なる復讐―』(18年)、『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』(19年)などの作品に、演出補として参加してきた。
そんな初メガホンをとった清矢監督に、今作への意気込み、『サロガシー』に込めた思い、そしてドラマ監督を目指したきっかけなどを聞いた――。
■登場人物の感情の機微を繊細に描いている
今作は、代理母出産(=サロガシー)を決断する女性・環(堀田真由)が主人公で、そのきっかけも“子供が欲しいと願うゲイの兄のため”という、一見ショッキングで難しいテーマを内包した作品のように思える。だが、自分らしく生きていこうとする登場人物たちを、丁寧に、時におかしく軽やかに描くことに成功した。
初めてこの脚本を読んだときの印象を尋ねてみると、「書き出しが“兄の子供を妊娠した”という良くも悪くもキャッチーな設定だと思いました。だけど、読み進めていくうちに、そのテーマ性だけで作られた本ではなく、登場人物の感情の機微を繊細に描いている作品だなと感じました」という清矢氏。「シリアスとコミカルが混在しているのもこの本の個性だと思ったので、その面白さを削がないように、緩急をつけて作ると決めました」と撮影前のプランを明かす。
だが、テレビドラマとして、放送時間内に収めなければならず、シナリオを削っていく作業もあったという。
「『シナリオ大賞』という大前提があるので、あまり手を加えたくはなかったのですが、この本は捉えようによっては群像劇のようにもなりえたものを、代理母出産をする主人公の環を軸とした家族の話に凝縮した作りにしました」
その作業の中で、“シナリオを削ることに抵抗はなかった”という脚本の的場さんと対照的に、「作中に、“過去”と“未来”のシーンがあるんですが、そこはすごく感じるものがあったので、どうしても残したいと思いました」。その“過去と未来のシーン”は、一見同じようだが、印象が全く異なるものになっているので、ぜひ注目して見てもらいたい。
■多様な価値観が世の中に存在していい
では、演出する上で苦労した部分はどんなところだったのか。
「当たり前のことではあるのですが、環の気持ちに寄り添うことをすごく大事にしました。環は言葉数が少ないというのもあるんですが、サロガシーという思い切ったことをするのに、本音を素直に言えない、装っている部分もあるので、もしかしたら観る人に理解されない人物のまま終わってしまう危険性もあります。だから、環の心情にちゃんと寄り添い、1つのセリフ、1つのしぐさの意味をきちんと表現することを意識しながら演出しました」
今作は、代理母やゲイカップル、その決断をした娘と息子を持つ親の葛藤など、複雑な人間模様も見どころの1つ。監督は、この様々な思いを持った登場人物たちをどう捉えていたのだろうか。
「私自身、多様な価値観が世の中には存在していていいと思っていて、このドラマの見方も正解があるわけではないし、1つじゃなくていいと思っています。だから“こういう思いで見てほしい”というものはありません」