『青天を衝け』が大河ドラマというより朝ドラのようだという声もあるが、合戦がなくホームドラマ的だから、ということではなく、主人公がピュアで未だこれからの可能性をもった人物だからであろう。栄一を視聴者が育てるような気持ちで見ることが、朝ドラを見ているように感じるのだと思う。大河でも朝ドラでも変わりなく、主人公に、応援したくなるフレッシュさが大事なのではないか。そういう意味で、吉沢亮はとてもふさわしい。
また、吉沢演じる栄一と対比になる慶喜役の草なぎ剛にも、同様の無垢さがある。彼は吉沢と比べたらベテランのキャリアではあるが、なぜか不思議と擦れた感じがなく、いつまでもピュア。野心家の父とは真逆の欲のなさは、諦念とも受け取ることができるが、淡々と徳川の宿命を受け止める能面のような表情は、いろいろなことを想像させる。草なぎは薄幸を演じさせたら天下一品である。
これからの希望に満ちた栄一と、100年もの歴史を背負い、時代の終わりを担う慶喜の孤独。吉沢亮と草なぎ剛の透明感は無敵だ。
第3回では、第1回で栄一に「この国を変える」必要性を説いた高島秋帆(玉木宏)が釈放された後、再び栄一と会う。秋帆もまた国を変えるという希望に満ちた澄んだ顔をしている。『青天を衝け』の登場人物たちは良きことをしよう思う心の美しさが顔に出てる人たちばかりだ。
さて、冒頭の出番を栄一に譲った徳川家康(北大路欣也)。今回は出ないのかと思ったら、ちゃんと出て、好きな外国人のことを解説した。背後では、黒い服を来た黒子(ダンサー)がパフォーマンスをして、ちょっとしたコンテンポラリーダンスのようで洒落ている。黒船の影響で、家康コーナーも欧米化という進化が起こっているようで面白い。
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