俳優の吉沢亮が主演を務める大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)の第3回「栄一、仕事はじめ」(脚本:大森美香 演出:黒崎博)は、まだ10代ながら、父・市郎右衛門(小林薫)から仕事の片腕として当てにしてほしいと願う渋沢栄一(吉沢亮)の活躍と、父・斉昭(竹中直人)の野心の当てにされていることに辟易する慶喜(草なぎ剛)を対比して描いた。

  • 『青天を衝け』第3回の場面写真

栄一と慶喜はこの時代における商人と武士の代表のようなもの。冒頭、栄一は父と江戸に来て、「この町は、商いでできている」と目を見張る。「お武家さまがまるで脇役だ」となかなか鋭い意見を述べて、それを聞いた武家の平岡平四郎(堤真一)は機嫌を悪くするが、実際、武家の立場は徐々に商人の台頭に押されてきているのだろう。

平四郎を演じている堤真一はいかにも堅物な武士という印象ではなく、飄々とした江戸っ子の町人風な空気を放ち、武士と町人の間のような存在に見える。だからこそ、そののち、慶喜の側近となり、栄一と慶喜の仲を繋ぐ(第1回冒頭)ことにも強い説得力がある。

栄一が江戸から血洗島に戻ってから、ペリー(モーリー・ロバートソン)が「アメリカの力を見せつけてやる」と黒船に乗って浦賀にやって来る。千代(橋本愛)の兄で、栄一の従兄弟・尾高惇忠(田辺誠一)が外国の脅威を感じている。千代も兄に負けずに勉強しようとしている。

幕末ドラマの面白さは、男性のみならず女性も外国の影響を受けながらもっともっと勉強しようとする若者たち(主に庶民)の姿で、彼らが学べば学ぶほど新しい世界が広がり、それがドラマを活気づかせる。

『青天を衝け』はまさにそうで、若い俳優たちが空に向かって顔をあげ、瞳をキラキラさせている表情が清々しく気持ちいい。彼らの時代を変えようという気迫が伝わってくる。