TOKIOの長瀬智也主演で放送中のTBS系金曜ドラマ『俺の家の話』(毎週金曜22:00~)。『うぬぼれ刑事』以来、長瀬と脚本家・宮藤官九郎氏が同局連続ドラマ11年ぶりのタッグを組んだ話題作で、『池袋ウエストゲートパーク』『タイガー&ドラゴン』など数々の名作を送り出してきた宮藤氏が介護をテーマとした家族ドラマをコミカルかつシリアスに描いている。そんな宮藤官九郎ワールドを支えている俳優の一人が、井之脇海だ。
長瀬が演じる観山寿一に憧れプロレスの門を叩いた「プリティ原」役で、ゾーンに入ると理性を失うという、これまで演じたことのない“一生懸命なアホ”を熱演中。新境地となった現場にどのような準備をして参加したのか。また長瀬との共演、そして“不思議な縁”についても語ってもらった。
宮藤氏の作品に参加するのは映画『中学生円山』(2013年)、NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(2019年)に続き3作品目。今回のプリティ原というキャラクターの印象は「宮藤さんの脚本によくいるおバカといいますか、一生懸命なアホみたいな立ち位置。これまで僕が演じてきていない役」だったそうで、「演じる時はいつもの自分のテンションの幅から1つ飛び出してみようと思って撮影に挑んでいる。プロレスシーンを含めて自分が作品のスパイスになれたらいいと思いました」と話す。
レスラーを演じるにあたり避けて通れないのは肉体改造。井之脇は本作のために約60キロだった体重を75キロまで増量し、レスラーらしい体型を作り上げて撮影に備えた。
「長瀬さんはじめプロレスチームのみなさんといろいろお話して準備しました。体重は1カ月弱で10キロ増やし、クランクイン後じわじわと5、6キロ増やしました。トレーニングと同時に食トレをして、1日6食くらい食べていましたね。撮影の1カ月前、映画の撮影に入っていたのですが、その現場でロケ弁を毎回2ついただて、1つ食べてもう1つは2、3時間後に食べていた。胃を空腹にしないよう3時間に1回はフルで食べ、後は空いているときにプロテインを飲んだりプロテインバーを食べたり…。もう食べ物を見るのが嫌になりました。人生で初めてご飯を憎みましたよ(笑)」
体重を増やすだけではなく、リングでのシーンが映えるよう筋力もつけなくてはならなかったが、「映画の撮影現場にダンベル40キロをスーツケースに入れて持って、ホテルの部屋でトレーニングをしていました」と筋トレも欠かさなかった。井之脇は『いだてん』でも聖火リレーの最終走者を演じるため9キロほど増量の体作りに挑んでいたものの「その時にできたので、今回のドラマもいけるだろうと思っていたら想像以上に大変だった。きつかったですね~。プロレスラーを演じることはなかなかないので」としみじみと苦労を振り返る。
井之脇と同じく、長瀬もストイックな肉体改造で約13キロ増量に成功した。ピークが過ぎたレスラー役とはいえ、本物さながらのたくましい体に驚いた視聴者も多いはず。井之脇もその一人だったが、その完璧な体作りゆえ自分を追い詰めてしまうことに。「プロレスの練習に初めて行ったとき、長瀬さんの体が仕上がっていたのを見て“これはヤバい”って焦って一人で追い込んだんです」ともどかしい気持ちに。しかし、その焦りを緩和させたのも長瀬本人だった。
「長瀬さんが『プリティはプリティのペースでやればいい』と言ってくれたんです。『やらなきゃ!』と力んでいた肩の力を抜いてくれたありがたい言葉だった。どこか気負っていましたが、長瀬さんのその言葉にリラックスしつつもっと頑張らないとなって前向きに思えたんです。モチベーションにも繋がりました」と笑顔で明かす。