――唯阿といえば、あの立ち姿も印象的なのですが、演出があったのでしょうか。

5、6話で柴崎貴行監督(柴崎監督の「崎」は立つ崎が正式表記)回の時にホン読みがあったんですけど、そこでセリフについての指摘はなかったんですが、柴崎さんから姿勢のことをすごく言われたんです。その場で「ちょっと立ってみて」って。「立ち姿がきれいじゃないよ」ってすごくずっと言われました。

それまでは、セリフの口調や声のトーンに重きを置いていたんですけれど、立ち姿というのは考えていなくて、そこからすごく意識するようになりました。藤田さんにもアドバイスをもらいながら徐々に唯阿の立ち姿が作られていきました。姿勢を意識したのは、唯阿が常にスーツだったことも大きいですね。柴崎さんにはあのタイミングで教えていただけて本当によかったと感謝しています。

――一年にわたるシリーズの中で変身ポーズが変化していくキャラクターもいますが、唯阿の場合はどうでしたか?

キャストによってはフォームで変身ポーズをアレンジするというのもあったと思うんですけれど、唯阿はあえて変えずにいこうと思いました。主役に比べて変身する機会が少ないので、同じポーズにすることで少しでも定着してほしいなと思って。プログライズキ―を回転させる動作も唯阿しかしていなくて、すごく好きだったので変えずに貫いていました。

――『仮面ライダーゼロワン』で唯阿主役のスピンオフが作られるとしたら、どんなお話が見たいですか?

唯阿の過去が気になります。どんな生き方をして、どういう人と出会って、何があってこの仕事しているのか。何があって今の人格が形成されていったのか。唯阿のことをもっと知りたいですね。

――井桁さんが『仮面ライダーゼロワン』に出演して、得たものはどんなことでしょう。

1年間同じ役を演じることは、役の向き合い方も当然違っていて、改めて演技の難しさを痛感しました。一方で、「仮面ライダー」は視聴者の方の声が届きやすい作品なので、自分の演技がちゃんと届いているなということもわかる作品でした。それだけに、演技で嘘をついていたり、自信がなかったりすると、それも伝わってしまうので、お芝居の大事な部分を学べた、いい意味で初心にかえることができた作品です。自分はまだまだなんだと思うところと、伝わるところはちゃんと伝わるんだということも感じられる作品だったので、俳優という仕事のおもしろさ、やりがいを改めて感じられたなと思います。

――ファンのコメントで印象的だったものは?

辞表を出すシーンは反響があって、同じように自分の意志に反して我慢をしている状況にある方から勇気をもらえたというコメントをいただいたのはうれしかったですね。社長を殴る必要はないと思うんですけど(笑)。

――最後に、今後の目標を聞かせてください。

とにかくいただけるお仕事はなんでも挑戦したいです。『ゼロワン』ではアクションにも挑戦できました。銃さばきも銃を持った動きも、アクション自体も初めてでしたけど、なんでもやってみないとわからないんだなと思うくらい印象が変わりました。自分が戦うシーンが想像できなくて、「仮面ライダーなんてできない」と最初は思っていたんですけれど、やってみるとすごく楽しかったんです。だから、プライベートもお仕事も限界を決めずに、やればやっただけ実にもなるので、その幅を広げられたらいいなと思っています。

――井桁さんのプロフィールで過去のお仕事を拝見していると、銃を撃っている姿が一番遠いですもんね。

そうですね(笑)。まさか……という感じで。なので、この1年半を経験したことで、「なんでもやってみたいな」と思えるようになりました。そういう気持ちになれたのが、一番得たものかもしれませんね。

(C)石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映