――特に悩まれていたのはどの時期だったのでしょう。
お仕事五番勝負あたりの時期ですね。やっぱり最初は"戦う女性"として、仮面ライダーとして戦っていたんですけれど、気づけば戦わなくなっちゃって、A.I.M.S.だと思っていたのがZAIAでって。最初に思い描いていた唯阿が全然違う形になっていく……。その違った先が見えたらよかったんですけれど、違った先がどういう唯阿なのかが見えなくなってしまったのがその時期でした。
天津垓のもとで、戦いはしないけど悪に加担しているみたいな。それが本意かもわからない。演技をするときって、その役がどういう感情でやっているか、どういう気持ちでそのセリフを言っているかということをすごく考えるんですけど、唯阿はそれがまったくわからなくて、やっている側としては本当にきつくて……。
そういうのって見ている方にも伝わって、「唯阿がどうしてこんなことをしているのかわからない」というお声もいただきました。それを言われるのはすごくよくわかるし、私もわからないんです……って思いながら、自分で落としどころを探していました。そこが一番難しかったですし、そういった自信のなさが視聴者の方にも本当に伝わるので、お芝居って嘘つけないんだなということを実感しました。
今考えると、良くも悪くもいろんなことを学べた時期だったと思うんですけど、その最中は本当に「もう早く終わらないかな……」と思ってました。当時は、このままこの『仮面ライダーゼロワン』という作品にいていいのかな、私の役が入ることで乱してないかなって。そういう悩みはずっとありました。
――その悩みが晴れてきたのはいつだったのでしょう。
唯阿の垓に対する嫌悪感が出てきたあたりからだと思います。彼女の隠していた感情が見えてきてから演じやすくなってきました。唯阿のことがわかってきたというのはそのあたりだったと思います。作品の後半では、いままでそんなポンコツなところを見せてしまってきていた唯阿をどれだけカッコよく見せられるか、というところも意識して演じていました。
――難しい役どころですね。
そうですね。そのぶん達成感がありましたが、もっとやれたんじゃないかって後悔も多い作品でした。
――唯阿の印象に残っているシーンは?
第36話「ワタシがアークで仮面ライダー」で、アークゼロと戦って敗れて負傷した唯阿が、病室で或人たちと話すシーンですね。唯阿って、諫以外には弱味を見せてこなかったと思うんです。それが、或人たちにも赤裸々に感情をさらけ出した。あそこは唯阿を演じてきた中で、一番唯阿に寄り添えていたシーンでした。あのシーンがあったことで、諫と或人たちが協力してアークゼロを倒すという流れになった場面でもあったと思いますし、あそこのシーンは演技をしていて、「演技が楽しいな」と思えたところでもあったので、すごく好きですね。
――最終回後に行われた「仮面ライダーゼロワン ファイナルステージ」も反響が大きかったですね。
ファンの方の前に立つのは「超英雄祭」以来でした。みなさんが『ゼロワン』にどれだけハマっているのか、どれくらいのファンがいるのかということを実感する機会がいままでなかったので、大変な時期にもかかわらずあれだけの数の方たちに来ていただけてうれしかったですね。
――『ゼロワン』に出て、ファン層が変わったという印象はありましたか。
一番は海外にファンの方ができたことです。普通に活動していると海外の方の目に触れることってないと思うんですけれど、本当にこの一年で海外のファンの方からのメッセージがすごく届くようになって、それは本当にこの作品の影響力を感じましたし、言葉が通じなくても、表情などで少しでも伝わっているのかなとすごくうれしかったです。
――現在公開中の映画ですが、撮影はいかがでしたか。
撮影自体はテレビシリーズの撮影が終わって1か月後くらいだったのでそれほど久しぶりという感じではなかったんですけれど、私は映画では亡とシェスタと一緒にいるシーンが多くて、テレビシリーズではあまりなかった組み合わせだったんです。『ゼロワン』を撮っているようで新しい別の作品を撮っているような感覚になって、新鮮な気持ちで取り組めました。ただそのぶん或人やイズ、ゲスト出演者の方との絡みがなかったので、どんな作品になっているのか視聴者としての楽しみが強い作品でもありました。
――井桁さんおススメのシーンはどこでしょう。
アキラ100%さんが出ているところです。お笑いが好きなので、あの社長室に3人ものお笑い芸人さん――児嶋一哉さん、アキラ100%さん、なかやまきんに君さんがいらっしゃるなんて……行きたかった!って思いました(笑)。作品の中でもすごく面白いシーンになっていて、すごく笑ってしまいました。あっちに映画の感想をもっていかれそうになるくらい好きなシーンでした。
あとはやっぱり5人での同時変身です。5人も並ぶと圧巻で、変身後に仮面ライダーサウザーから順番に映されていくシーンで、仮面ライダーバルキリーを演じるスーツアクターの藤田慧さんがすごいカッコいい感じで締めていて、「藤田さんさすが!」って思って。あそこも好きですね。
――藤田さんとも1年にわたってとてもいいコンビでしたね。
唯阿がアクションをするときには、細かい手の動きに至るまで、いろんなことを教えていただきました。手の角度や体の向きも、本当に丁寧に細かく教えてくださって、専属コーチみたいになっていました(笑)。