特撮テレビドラマ『仮面ライダーゼロワン』の"その後"を描く映画『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』が、『劇場短編 仮面ライダーセイバー 不死鳥の剣士と破滅の本』との同時上映で全国劇場にて公開されている。

『仮面ライダーゼロワン』(2019年)は、人工知能(AI)を搭載した人型ロボット・ヒューマギアの暴走を食い止めるために戦う仮面ライダーの姿を描く。そして序盤では、主人公・飛電或人が社長を務める「飛電インテリジェンス」、ヒューマギアの人工知能特別法違反を取り締まる特務機関「A.I.M.S.」、人類の滅亡を目論むテロリスト集団「滅亡迅雷.net」の三つの組織を中心に物語が展開された。

  • 井桁弘恵(いげた・ひろえ)。1997年2月3日生まれ、福岡県出身。数々のCMに出演し、女性ファッション雑誌のモデルとしても活躍。女優として映画『デスフォレスト 恐怖の森5』『4月の君、スピカ。』などに出演。『イソップの思うツボ』(2019年)で主演を務めた。ドラマ出演は『極道めし』『警視庁ゼロ係~生活安全課なんでも相談室~』など。特技はテニス・博多弁・美味しそうに食べること。撮影:大門徹

その一つ、「A.I.M.S.」に所属し、技術顧問を務める刃唯阿/仮面ライダーバルキリーの動向は、のちにストーリーをかき回し、視聴者の注意を引くキーパーソンとなっていた。終盤では、自分の意志で戦う心強い仲間となった唯阿。本稿では、一年にわたって唯阿を演じてきた井桁弘恵に、最終話を終えた思いと、映画の見どころを訊いた。

――テレビシリーズ最終回を迎えた瞬間はどんなお気持ちでしたか?

最終回は最後のシーンでアップしたんですけど、すごく不思議な気持ちでした。一年間毎日撮影に行って、それが習慣になっていたので、これが本当に終わるのかな……って。でも、最後のセリフになった「人間であれ、ヒューマギアであれ、心の自由は尊重されなくてはならない。互いの垣根を越えて自由のために戦う限り、お前たちは仮面ライダーだ」という言葉が、すごく最後らしいセリフだったので、言っているときが一番泣きそうだったかもしれません。これを言ったら終わっちゃうんだという感覚。でも、いざ終わりを迎えても、「これから映画があるしな」という気持ちになって、終わった感覚があったようでなかったような不思議な気持ちでした。

クランクアップの瞬間には涙は出なくて、「ああ、終わったんだな……」という感じでした。私は一度涙が出たら止まらなくなってしまうので、泣かないようにしていたというのもあったんですけど、或人役の高橋文哉くんが共演者のクランクアップを見に来てくれていて、文哉くんから花束をもらって写真を撮っていた時に、文哉くんが泣き始めてしまったんです。文哉くんは、みんながクランクアップしていくのが寂しいという感じで泣いてくれていたんですけど、それを見て私も泣いてしまいました。

――唯阿は、伏線となる謎めいた振る舞いが多く、周りを振り回していくと思いきや、彼女自身が振り回されていってしまう複雑な立ち位置でした。

最初いただいた台本では、唯阿のその後の展開はまったくわかっていませんでした。ただ第3話「ソノ男、寿司職人」では、一貫ニギローに視覚データを自動転送するプログラムを仕込むシーンが描かれていて、そうした行動が後々ZAIAのスパイであるという正体につながるということは、ざっくりですが聞いていたんです。

でも、彼女が何のためにスパイをしているのかもわからなかったですし、それが本意なのか、それともやらされてやっているのかもわからない。なので正直なところ、話を重ねるごとにわからなくなっていったというか……。1、2話が一番A.I.M.S.のメンバーとして純粋にやれていたなと、振り返ると思います。一年間を経て、もう一度一話からやってみたいなという気持ちがありますね。結末がわかった上でやると、もっとちゃんとできるんだろうなって。