お笑いトリオ・パンサーの尾形貴弘とモデルのゆきぽよがMCを務める、フジテレビの新たな特番『パンサー尾形の通販バラエティ BUY or BYE』が、23日(25:25~25:55 ※関東ローカル)に放送される。通販番組を“プレゼン”という切り口でエンタテインメント化するという異色の内容で、仕掛けたのは『めちゃ×2イケてるッ!』でチーフプロデューサーを務め、同番組のキャラクター“ガリタさん”でも知られる明松功(かがり いさお)氏だ。

現在は営業局ローカル営業部企画担当部長として活躍し、「月1のレギュラーにしたい」と意気込む同氏に、成立の裏側に加え、広告営業という立場から見る番組制作の意識なども聞いた――。

  • フジテレビ営業局の明松功氏

    フジテレビ営業局の明松功氏

■海外のプレゼンショーをヒントに

バラエティ制作から営業局に異動し、「今までのように番組本編と広告が無関係であるのではなく、番組はCMのおかげで、CMは番組のおかげで、より面白く魅力的に見える方法はないのか? 番組制作を経験してきた自分にしかできないことは?」と考えていた明松氏が、企業コラボ番組として最初に手がけたのは、本編のストーリーの中にCMを融合させるという新たな手法を使った『突然コマーシャルドラマ』。国内最大の広告賞であるACC賞でブロンズ賞を受賞し、18年6月、19年4月の放送に続く第3弾も企画が進むなど、一定の成果を上げた。

この企画を一緒に立ち上げた電通のクリエイティブ・ディレクター中尾孝年氏(神戸大アメフト部時代、明松氏の3年後輩)と、ドラマ以外で新たな展開を考える会議の中で、「海外のプレゼン番組『TED』のようなプレゼンショーをできないかという話になったんです」と、今回の番組のきっかけを明かす。

そこから、オランダ発のボーカルオーディション番組『ザ・ヴォイス』の、審査員が挑戦者に背を向けて声だけを聴き、容姿を見たくなったらボタンを押して振り返るというシステムをヒントに、“人を振り向かせる”、“セールストーク”というキーワードが浮かび、「目の前にいる一般客50人が、セールストークをまずは耳だけで聞き、商品を見たくなったら振り返るというエンタテインメントショーを『商品見せて』という仮のタイトルで考えました」と企画を固めた。

だが、これをそのままバラエティ番組として放送することはできなかった。広告をCMという形で番組本編と区別できていないため、民放連が定めた放送基準に反するのだ。そこで、通常の番組とは規定が違う「通販番組」として成立させることに。スタジオに集めるはずだった一般客はコロナウイルスの影響でリモートでつないで遠隔でプレゼンを審査。30人いる客のうち、5人が「“いらない”ボタン」を押した瞬間にプレゼンは強制終了という形にブラッシュアップし、制作されることになった。

  • MCのゆきぽよ(左)とパンサー・尾形貴弘 (C)フジテレビ

■タレントにはない“ホント”の熱量

通販番組と言えば、タレントや通販会社のプロが商品を紹介するのが一般的だが、この番組は商品の開発者が自らプレゼン。

その狙いは「もちろんタレントさんが商品のことを理解して上手に説明するというのも購買意欲につながると思うんですけど、商品開発者がどういう瞬間にアイデアを思いついて、どんな熱量で商品化までこぎつけたのか、のエピソードには、どこまで行っても“ホント”しかないので、その“ホント”の熱量を背負える人がプレゼンするのが面白いと思ったんです」と説明する。

この開発者の物語は、まさに“ドキュメンタリー”。それにプレゼンをショーアップするという“エンタメ”を掛け合わせる手法は、明松氏が長年携わってきた『めちゃイケ』のイズムとも言える。

そして、この番組を演出面でサポートするのが、バラエティ制作を担うフジテレビ第二制作室のスタッフだ。

通常、通販番組は情報番組などを制作するスタッフが担当するが、「情報をカチッと伝えるところを第一主義にするなら情報番組にお願いするんですが、今回はエンタメを入れるので、バラエティのスタッフの方が得意だろうと思って希望したんです。第二制作としても、スポンサーとガッツリ向き合って番組を作るのは、やったことがないパターンだと思うんですが、必ず良い経験になると思って」ということで、制作体制も固まった。