Radeon RX 6800/6800XTに続き、Radeon RX 6900 XTもついに発売である。というか、もうすぐ販売開始(PCショップ筋からは販売解禁が12月11日という情報も出ている)だろうに未だに日本での価格が伝えられてないあたりがいつものAMDという気はするのだが、それはともかくとして評価機は問題なく入手できたので、性能評価をお届けしたい。ちなみに今回テスト環境は、先のRadeon RX 6800/6800 XTをそのまま継承。一部テストを除きテストデータも流用している。
テスト環境 - Radeon RX 6000シリーズとGeForce RTX 30シリーズをまとめて
まずパッケージはRadeon RX 6800 XTと殆ど見分けがつかず(Photo01)。開封した状態(Photo02)も同じであるが、中蓋を取るとRadeon RX 6900 XTがマウスパッド(?)に包まれた状態で入っていた(Photo03,04)。さて外観はこんな感じ(Photo05~11)であるが、Radeon RX 6800 XTと更に見分けがつかない。実際外寸は285mm×102mm×50mmで、Radeon RX 6800 XTと全く同一。思うのだが、多分部材(外装パーツ、基板、メモリチップ)などはRadeon RX 6800 XTと6900 XTで完全に同一であり、チップのみが違うという格好なのではないかと思う。ちなみに重量は実測値で1507.5gで、Radeon RX 6800 XTの1501.9gよりもちょっと重い。誤差の範囲の可能性もあるが、ひょっとすると電源のPhase数が1つ多いとかの可能性もある(Radeon RX 6800 XTではパターンだけあって実装されていなかったところに実装したというパターン)。ただ今回は分解不可なので、部品配置がどうなっているかまでは確認が出来なかった。
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Photo01: 右上の"RADEON RX 6900 XT"の文字以外、Radeon RX 6800 XTと同じ外観。
GPU-ZではRadeon RX 6900 XTと正常に認識されている(Photo12)。Power Limitは-10%~+15%の範囲(Photo13)とされており、TDPは通常300Wなのでピークで345W位まで上げられる設計になっているようだ。
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Photo12: こちらで紹介した通り、80CU/5120SP構成。動作周波数そのものはRadeon RX 6800 XTと同じなので、性能差はCUの数ということになる。理論上は25%向上する筈だが、さて。
ところで対抗馬であるが、今回はMSIよりGeForce RTX 3090 GAMING X TRIO 24Gを借用した(Photo14~23)。当然OCモデルで、GeForce RTX 3090 Founder Editionが定格 1400MHz/Boost 1700MHz駆動のところを、Boost 1785MHzまで引き上げている。ちなみに原稿執筆時点におけるAmazonでの価格は\228,586であった。
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Photo15: 3連大径ファンがそれなりのインパクト。ただ大径ファンのおかげか、フル稼働中も騒音は非常に低かった。外寸は325mm×127mm×57mm、重量は1570.5g(いずれも実測値)だった。
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Photo17: チップ真裏。MLCCの塊と化している。以前評価したASUSのROG-STRIX-RTX3090-O24G-GAMINGとはまた異なっているが、特にテストで問題になることはなく安定していた。
その他の環境は表1に示す通りである。冒頭に述べたように、基本的には前回のテスト結果をそのまま継承しながら、新たにRadeon RX 6900 XTとGeForce RTX 3090を追加した格好である。ただ前回時間の関係で省いていたテストをいくつか追加している。
■表1 | |||
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CPU | Ryzen 9 5950X | ||
M/B | ASUS ROG CROSSHAIR VIII HERO | ||
BIOS | Version 2402 | ||
Memory | CFD W4U3200CM-16G×2 (DDR4-3200 CL22) | ||
Video | GeForce RTX 3070 Founder Edition GeForce RTX 3080 Founder Edition MSI GeForce RTX 3090 GAMING X TRIO 24G |
Radeon RX 6800 Reference Radeon RX 6800 XT Reference |
Radeon RX 6900 XT Reference |
Driver | GeForce Driver 457.30 WHQL DCH | Radeon Software 20.45.01.12-11.6 Beta | Radeon Software 20.45.01.14RC8-Nov29 |
Storaga | Intel SSD 660p 512GB(M.2/PCIe 3.0 x4) (Boot) WD WD20EARS 2TB(SATA 3.0)(Data) |
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OS | Windows 10 Pro 日本語版 Version 2004 Build 19041.572 |
なお、以下のグラフでは
- RTX 3070:GeForce RTX 3070 Founder Edition
- RTX 3080:GeForce RTX 3080 Founder Edition
- RTX 3090:MSI GeForce RTX 3090 GAMING X TRIO 24G
- RX 6800:Radeon RX 6800 Reference
- RX 6800XT:Radeon RX 6800 XT Reference
- RX 6900XT:Radeon RX 6900 XT Reference
と表記している。またDXRTを利用するシーンにおいては
- RTX 3070(RT):GeForce RTX 3070 Founder Edition。DXRT有効、DLSS無効
- RTX 3080(RT):GeForce RTX 3080 Founder Edition。DXRT有効、DLSS無効
- RTX 3090(RT):MSI GeForce RTX 3090 GAMING X TRIO 24G。DXRT有効、DLSS無効
- RX 6800(RT):Radeon RX 6800 Reference。DXRT有効
- RX 6800XT(RT):Radeon RX 6800 XT Reference。DXRT有効
- RX 6900XT(RT):Radeon RX 6900 XT Reference。DXRT有効
となっている。解像度表記は何時ものごとく
- 2K:1920×1080pixel
- 2.5K:2560×1440pixel
- 3K:3200×1800pixel
- 4K:3840×2160pixel
とさせていただく。またテスト環境やテスト方法などは(追加したテスト以外)前回と全く同一にしているので、今回説明は割愛する。
◆3DMark v2.15.7088(グラフ1~6)
3DMark v2.15.7088
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/3dmark
前回はv2.15.7078だったが、今回はv2.15.7088にアップデートしている。ちなみにこのv2.15.7088からResult Screenが大幅に改定されたのだが、その代わりバッチで複数テストをまとめて実施すると結果が表示できなくなるという「仕様」(これはUL Benchmarksに確認した。将来は対応するけど、現時点では1テスト分しか表示できないとの事)になっており、ちょっと不便な感じである。それはともかく、このv2.15.7088でテストデータを取り終わった段階になって、v2.16.7133がリリースされたのだが、さすがにこれに切り替えてやり直している時間はなかったので、v2.15.7088のまま実施している。
さてまずグラフ1がOverallである。今度はちゃんとRadeon RX 6800でもWildLifeが動作した。全体の傾向としては、Radeon RX 6900 XTは確かに高速で、GeForce RTX 3090と甲乙つけがたい。一つ言えるのはPort Royalのスコアの低さで、GeForce RTX 3070こそ追い抜いているものの、GeForce RTX 3080には及ばない程度。まぁRay Tracingの第一世代としては健闘している方、としてもいいのだろうが。Graphics(グラフ2)、Physics/CPU(グラフ3)、Combined(グラフ4)も大体傾向としては同じである。
DXRT Feature Test(グラフ5)はRadeon RX 6000系の弱点がモロに露呈しているテストで、こちらだとRdeon RX 6900 XTはGeForce RTX 3070にも及ばない程度でしかない。前回の考察でも書いたが、とりあえずRay Tracing性能に期待はしない方がいいだろう。
グラフ6のPCI Express Testだが、なんでこうじりじり性能が下がるのかはよくわからない。ただ大きな差とは言えない。とりあえずPCI Express Gen4をちゃんと使っているとは言えるだろう。
◆SuperPosition v1.1(グラフ7~13)
SuperPosition v1.1
Unigine
https://benchmark.unigine.com/superposition
次はこちら。Average(グラフ7)を見ると
GeForce RTX 3090 > Radeon RX 6900 XT > Radeon RX 6800 XT≒GeForce RTX 3080 > Radeon RX 6800 > GeForce RTX 3070
という関係なのが面白い。要するにラインナップによる性能差が、NVIDIAの方が大きめであり、AMDはこれに比べると性能差が小幅である。最大/最小(グラフ8・9)も概ねこの状況がそのままである。
フレームレート変動(グラフ10~13)もこの傾向を裏付けており、GeForce RTX 3090とRadeon RX 6900 XTの差は小さくないというか、明確にグラフがが分離されている。ただそれでもRadeon RX 6800 XT/GeForce RTX 3080との差もやはり明確であり、ちゃんと性能向上はしているのだが、GeForce RTX 3090が更に上回る性能差を出しているという感じだ。
◆Basemark GPU 1.2(グラフ14~19)
Basemark GPU 1.2
Basemark
https://www.basemark.com/products/basemark-gpu/
前回は割愛したBaseMark。GeForce RTX 3000シリーズのテスト同様にCustome Testを利用し
- 解像度:4K・フルスクリーン
- Contents Quality:HIGH
- Texture Compression:bc7
としたうえでDirectX 12/OpenGL/Vulkanの各APIで測定を行っている。
まずグラフ14~16がそれぞれの結果である。DirectX 12(グラフ14)とVulkan(グラフ16)に関しては3DMarkとよく似た傾向だが、相変わらずOpenGL(グラフ15)におけるRadeonの性能は低い。勿論コンシューマ向けGPUカードでOpenGLのサポートはおまけでしかないが、それにしてももう少しAMDには何とかしてほしいところだ。最低フレームレートを見る限りむしろNVIDIAを上回ってるので、ハードウェア的に遅いという訳ではなさそうに見える訳で、恐らくはドライバの出来(というかサポートしているAPIの少なさ)が問題なのだろうと想像される。
フレームレート変動(グラフ17~19)を見ると、グラフ14~16の結果がそのまま反映されているという感じだ。ただグラフ18を見ると、NVIDIAも平均フレームレートこそAMDより高いものの、ドライバの出来はあまり良くなさそうだ。まぁ今時コンシューマ向けでOpenGLが必要とされるシーンは殆ど無いから仕方ないのかもしれないが。
◆Bright Memory Infinite Ray Tracing Benchmark(グラフ20~26)
Bright Memory Infinite Ray Tracing Benchmark
FYQD Personal Studio(飛燕群島個人工作室)
https://store.steampowered.com/
3DMarkのPortRoyal同様、GeForce RTX系が圧倒的なこちらのテスト。平均フレームレート(グラフ20)を見ると、Radeon RX 6900 XTはなんとかGeForce RTX 3070は超えているものの、GeForce RTX 3080には及ばないという程度で、これもPortRoyalと同じ傾向である。フレームレート変動(グラフ23~26)は相変わらずスパイクが多いので傾向が見えにくくなっているが、大きな傾向としては
GeForce RTX 3090 > GeForce RTX 3080 > 残り4つ
という感じである。まぁそれでもRadeon RX 6900 XTはGeForce RTX 3070よりは高いDXRT性能が期待できそうではあるが。