――クランクアップしてホッとして。その後に、「取りこぼしがあった」と聞いた時、率直にどう思いましたか?

うれしい反面、「もう1回終わらなあかん!」と(笑)。でも、最後にちゃんとやり切ることができたので良かったし、感動が何倍にもなりました。2度目のクランクアップでも泣いて。監督さんやプロデューサーさんに、「どんだけ泣くねん」と思われてるでしょうね(笑)。試写の時、監督さんにも「すずがずっと泣いてて」と言われて、すごく泣き虫キャラになっちゃって(笑)。そんなことないんですけどね。『人狼ゲーム』の現場では、うれし泣きしすぎました。

――もともと、涙もろいタイプではなかったんですか?

地元にいるときはそうでもなかったんですけど、こういうお仕事をさせてもらうようになってから。表現する仕事だからなのか、やたらと泣くようになりました。つらくて泣くのと何かの作品に感動して泣くのは全然あったんですけど、こんな幸せで泣くのって……誕生日のサプライズの時くらいじゃないですかね(笑)。「幸せ」という言葉では表しきれんくらいの幸せだったので、なんと言っていいのか本当に分からないんですけど、帰って来てからマネージャーさんと撮影現場でのことを話して、また泣いて。メイクさんと話しても泣いて。しばらく泣き続けて、それくらい自分の中では大きく変わった出来事だったのかなと思います。半年ちょっと経って、やっと落ち着いて話せるようになりました(笑)。

■「自分を好きになる」を経た職業観

――先ほどもおっしゃっていた「自分を好きになる」という目標。今回の経験を経て、かなり近づけたんじゃないですか?

こんなに早く実感できる場所と巡り会えるなんて思ってなくて、10年、20年先じゃないと叶えられないことと覚悟していたんですけど、十代のうちに叶えられてしまいました(笑)。今、自分のこと全然嫌いじゃないですもん(笑)! 人とも楽しく話ができるようにもなりましたし、自分のことも悲観的にならずに考えられるようになったので。ただ、目標にはしていましたが、ゴールはそこじゃない。こういう気持ちになれたからこそ選択肢が広がったとも思いますし、これからまだまだ人生何十年もあるので、いろいろなことにチャレンジしていきたいです。

――デビューされて様々なことに取り組んで、仕事や働くことに対するイメージは変わりましたか?

デビューしたばかりの頃は、将来のビジョンとかも考えたことがなくて。地元の高校に通っているときも、大学に行くのか、専門に行くのか、就職するのかも考えていなかった。とにかく、今を生きることに精一杯で。学校に行って、バイトに行っての繰り返しの日々で考える余裕もなかったんですけど、一人で生きていける道が見えて。

東京に出てきて一人暮らしをしながら、友達もいないので仕事に行って帰っての毎日だったんですけど、毎日見たことないものを見ることができる仕事がすごく楽しくて。仕事のために生きるのもステキですけど、ほかの幸せのために生きることもステキなことだとやっと最近気づくことができました。

だから、自分の時間も大事にしようと。家に帰って、ご飯を作って、ゆっくり過ごして。そういう時間があるからこそ、仕事を前向きにがんばれる。そうやって、余裕を持てるようになったというのがすごく大きくて。もちろん、仕事はこれからも大事にしていくんですけど、誰かに見られていない時の自分も大事にしようと。自分のために生きてもいいんだなってすごく思えた。仕事でいっぱいいっぱいにならずに、余裕をもっていきたいと思います。

人って根本的なものは何も変われへんと思ってました。もともと元気ではあるんですけど、病むようなこともなくなったし、変に考え込んでしまうこともなくなって、すごく前向きになりました。現状維持にすることでいっぱいいっぱいで、前を向くことだけでギリギリでしたが、ちゃんと将来のことを考えられるようになった。今だけじゃなく、先のことも見据えて。それから客観的に自分を見られるようになった。私の中では、本当にすべてが変わりました。言葉の受け止め方も。もっともっと勉強して、いろいろなことに前向きに挑戦していけたらいいなと思います。

■プロフィール
山之内すず
2001年10月3日生まれ。兵庫県神戸市出身。TikTokなどで人気を博し、2019年、AbemaTVの恋愛リアリティーショー『白雪とオオカミくんには騙されない』の出演をきっかけに芸能界デビュー。「ティーンのカリスマ」として注目を集め、2020年は『ヒルナンデス!』水曜シーズンレギュラー(2020年4月~6月)をはじめ、数多くのバラエティ番組でも活躍している。