既報の通り、11月6日19時よりRyzen 5000シリーズ4製品が発売となる。正直ハイエンドのRyzen 9 5950Xは10万超えるかなと思っていたので、意外に頑張った印象である(換算レートは概ね120円/ドル前後)。
さてそのRyzen 5000シリーズであるが、今回評価用として借用できたのは、Ryzen 7 5800XとRyzen 9 5900Xの2製品のみであった。残念ながらハイエンドのRyzen 9 5950Xと、エントリ向けのRyzen 5 3600Xは後送りになってしまったが、まずはこの2製品について性能がどんなものか、をお届けしたい。
今回の評価キット
キット、といっても単にCPUの製品パッケージが2つ送付されてきただけであるが。その製品パッケージ(Photo01~04)はやや黒掛かったシルバー基調に変更になった。
Ryzen 7 5800X(Photo05~08)、Ryzen 9 5900X(Photo09~12)ともに問題なく稼働したが、実は今回利用できるマザーボードがかなり限られていた。以前これでもご紹介したが、Ryzen 5000シリーズの性能をフルに活用するためにはAGESA 1.1.0.0に対応したBIOSが必要であり、評価キットが送られてきた時点で、マザーボード4種類のみがこれに対応した状態だったため、その4種類の何れかを利用する事になっていたためだ。そんなわけで今回はASUSのASUS ROG CROSSHAIR VIII HEROを利用した。昨年こちらの記事でもご紹介したX570のハイエンド機種の一つだ。余談ながら現時点では主要なX570マザーボードはほぼAGESA 1.1.0.0対応BIOSがリリースされているようで、筆者手持ちのASUS TUF GAMING X570-PLUS(BIOS 2607)やASRock X570 Pro4(Version 3.40)などでもちゃんと対応BIOSが用意されている。
さてテスト環境は表1の通りである。今回はZen 2ベースのRyzen 7 3800XTとRyzen 9 3900XT、それとComet LakeベースのCore i9-10900Kを用意した。マザーボードのグレードをあわせるため、Core i9-10900Kには同じASUSのROG Maximus XII Extreme(こちらのレビューの際に使ったうちの1枚)を用意した。
■表1 | ||
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CPU | Ryzen 7 3800XT Ryzen 9 3900XT Ryzen 7 5800X Ryzen 9 5900X |
Core i9-10900K |
M/B | ASUS ROG CROSSHAIR VIII HERO | ASUS ROG Maximus XII Extreme |
BIOS | Version 2311 | Version 0707 |
Memory | CFD W4U3200CM-16G×2 | |
DDR4-3200 CL22 | DDR4-2933 CL21 | |
Video | GeForce RTX 3080 Founder Edition GeForce Driver 456.71 WHQL DCH |
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Storaga | Intel SSD 660p 512GB(M.2/PCIe 3.0 x4) (Boot) WD WD20EARS 2TB(SATA 3.0)(Data) |
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OS | Windows 10 Pro 日本語版 Version 2004 Build 19041.572 |
なお、以下のグラフでは
3080XT:Ryzen 7 3800XT
3090XT:Ryzen 9 3900XT
5800X:Ryzen 7 5800XT
5900X:Ryzen 9 5900XT
10900K:Core i9-10900K
と表記している。また解像度表記は何時ものごとく
2K:1920×1080pixel
2.5K:2560×1440pixel
3K:3200×1800pixel
4K:3840×2160pixel
とさせていただく。
◆PCMark 10 v2.1.2506(グラフ1~6)
PCMark 10 v2.1.2506
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/pcmark10
まずはこちらから。Overall(グラフ1)を見る限りRyzen 5000シリーズの圧勝であり、Ryzen 3000シリーズとCore i9-10900Kの両方に少なからぬ差をつけているのがわかる。面白いのはRyzen 9 5900XよりもRyzen 7 5800Xの方が若干ながら性能が上なことである。Ryzen 7 5800Xの方がBase Clockが若干高い事に加え、同じTDP(105W)ながらダイの数が一つ少ない分、より動作周波数を上げやすい、というあたりが関係している様に思える。
もう少し子細に見ると、Test Group(グラフ2)でEssentialsのみ差は少ないが、後は概ね大差という感じ。Gamingは後で3DMarkで見るので措いておくとして、そのEssentials(グラフ3)ではAppStartupで差が縮まっている(というか、これはCore i9-10900Kが最高速)のが、差が少ない要因だろうか。Video ConferencingではOpenCL利用という事もあって差が少ないのも関係しているかもしれない。Productivity(グラフ4)では、特にSpreadsheetsで大差が付いているのが特徴的で、Zen 3のIPCが本当に引きあがった事を実感する。これに比べるとDigital Contents Creation(グラフ5)ではまた差が減っているというか、Rendering & VisualizationでまたCore i9-10900Kが迫っているが、これはPOV-Rayのところで説明したい。
グラフ6のApplication TestはOffice 365そのものであるが、特にExcelで大幅な性能改善がみられるし、WordとかPowerPointでも明確に性能差がある。Ryzen 5000シリーズの性能改善は確かに確認できたと思う。
◆CineBench R20(グラフ7)
CineBench R20
Maxon
https://www.maxon.net/
CineBenchに関して言えば、これが再現できるかを確認したかったのだが、結果はOne Threadの場合で621と、今一つ芳しくない。といっても、Single Threadで600を超えているのは事実であり、Ryzen 3000シリーズは元よりCore i9-10900Kと比較しても十分高いスコアではある。そしてAll Thread場合、Ryzen 7 3800XT→Ryzen 7 5800Xで21%、Ryzen 9 3900XT→Ryzen 9 5900Xでも13%ほどのスコアの伸びがあるのは、やはりIPCの改善によるところと考えて良いかと思う。
◆POV-Ray V3.7.1 Beta9(グラフ8)
POV-Ray V3.7.1 Beta9
Persistence of Vision Raytracer Pty. Ltd
http://www.povray.org/
同じくPOV-Rayであるが、こちらも傾向的には似ているとはいえ、Core i9-10900Kが伸びているのがお判りかと思う。特にOne ThreadではRyzen 5000シリーズを上回る性能になっている。実はこれ、ちゃんと理由がある。POV-Ray V3.7.1からはNoise FunctionにAVX命令を利用するようになっているが、Ryzen 3000/5000シリーズの場合は"avx-generic"という扱いであり、一方Core i9-10900Kの場合は"avx2fma3-intel"となっている。要するにCoreシリーズへの最適化が実装されている結果、Core i9-10900Kの性能が伸びるという話で、これが先のPCMark 10におけるRendering & Visualizationでも効いている形だ。ただその最適化があっても、All ThreadだとRyzen 9 3900XT/Ryzen 9 5900Xには及ばない。
ちなみにこちらでもRyzen 3000シリーズと5000シリーズの差は10~18%と大きい。