室内や夜間も失敗知らず、自然な色合いで精細に撮影できる
多くの人が日常的に活用するカメラ機能は、広角レンズの明るさが従来のF1.8からF1.6に明るくなったぐらいで、ハードウエア的にはそれほど大きな変化はありません。しかし、処理性能が大幅に高まったA14 Bionicチップの搭載で、撮影体験は劇的に変化すると感じました。
特に改善されるのが、夜間や室内など薄暗い低照度のシーン。誰でもシャッターを切るだけで失敗なく撮影できるようになり、画質もこれまでよりも大幅に高まります。
低照度のシーンで撮影性能や画質が改善するのは、A14 Bionicチップの処理性能やニューラルエンジンの性能が大幅に向上し、「Deep Fusion」の性能が底上げされたため。Deep Fusionは、シャッターを切ると異なる露出の画像を高速連写して最適な露出になるよう画像を合成しつつ、シャープネスや色合い、シャドウなどが不自然にならないように仕上げる複雑な処理をこなします。A14 Bionicによりこの一連の処理がより速く、より精度が高まったわけです。
実際に薄暗い建物内や飲食店で撮影してみても、「こんな薄暗いシーンでもこんな精細に撮れるのか!」と驚きました。高感度特有のノイズやのっぺり感が抑えられているうえ、複数の光源が混ざり合うシチュエーションでも色が転ぶことなく、自然な色合いで撮影できました。もちろん、撮影方法は従来と変わらず、難しいことを考えずにシャッターボタンを押すだけです。
超広角カメラやタイムラプスもナイトモードの撮影に対応
相当暗いシーンでは、1回のシャッターで連続撮影した写真の情報を合成し、手持ちで明るく撮影できるナイトモードが有効になります。iPhone 12では、新たに超広角カメラやポートレート、タイムラプスでもナイトモードの撮影に対応したのが注目できます(ポートレートのナイトモードは広角の「1x」での撮影時のみ有効)。
iPhone 11では、撮影時のブレや揺れを抑えるために手ブレ補正機構を利用しつつ、実際に撮影している画角よりも外の領域の情報を用いて手ブレで欠損した情報を補完し、手持ちでナイトモードが撮影できるようにしていました。そのため、手ブレ補正機構がなく、よりワイドな領域の情報が得られない超広角カメラでは利用できない制約がありました。iPhone 12では、A14 Bionicの高度な処理性能とニューラルエンジンを駆使することで、超広角カメラでもナイトモードが使えるようになりました。ポートレートやタイムラプスがナイトモードに対応したのも、同じくA14 Bionicの存在があります。
これまで撮影を断念しなければならなかった場面や、シャッターを切っても失敗してしまうシーンでも、手持ちで失敗なく撮れるようになったのは大きいと感じます。もともとインパクトのある写真が撮れる超広角カメラで夜景や室内が明るく仕上がるので、さまざまなシーンで撮影が楽しくなると感じました。SNSでも注目されそうです。