――仮面ライダーバルカン/不破諫役の岡田龍太郎さん、仮面ライダーバルキリー/刃唯阿役の井桁弘恵さんも、役の立ち位置が進行と共に変化しながらも、決してブレずに芯を貫き通していたように思えます。お2人についての印象はいかがでしたか。
岡田くんは彼なりに何かしら演技について考えていることがあるようで、それを現場に持ってきてくれて「じゃあそれでいこう」みたいに打ち合わせをすることが多くありましたね。
井桁さんの演じる刃は最初、「ヒューマギアは道具だ」みたいに言っていたんだけど、天津社長から自分が道具のように使われていたと改めて気づいたことで、自分の存在意義について苦悩するシーンが多くなっていきました。井桁さん自身もどう演じたらいいのか、この場面にどうして自分がいるんだろう……と悩んでいて、現場で相談されたこともありました。あのころは、不破や刃を道具のように扱う天津垓がどれだけ"悪い"奴なのか、という部分を視聴者に見せつけるため、刃に辛い思いをさせているんだと説明しました。
――新型コロナウイルス感染拡大にともなう「緊急事態宣言」での自粛期間があり、『ゼロワン』を含むすべてのテレビドラマ、映画の撮影が一時的にできなくなった影響で、5月17日から6月21日(第35.5話)までの6週間は「総集編」的エピソードでつなぐことを余儀なくされました。総集編そのものは各回創意工夫に満ちた内容で非常に面白かったのですが、ストーリーの進行がさまたげられたのは、スタッフさんたちにとって厳しいものだったと思われます。
確かに、6話ぶんがなくなるというのは1年間のストーリーを描く上で、本当に大変なことでした。プロデューサーの大森敬仁さんも脚本の高橋悠也さんもかなり悩まれたのではないでしょうか。しかし、田崎竜太監督(※田崎監督の「崎」の正式表記は立つ崎)と一緒に入った最終4話(田崎監督は第42、43話、杉原監督は第44、45話を演出)では、当初の構想どおりのストーリーを一気に突っ走ったので、もしかしたら"コロナ禍"がなければあそこに至るまでのエピソードを6回分かけて、積み重ねていけたのかもしれませんね。
――最終回に至るまでの4本のエピソードで、まず衝撃的だったのは田崎監督の第42話において、イズが滅の攻撃を受けて"命を失う"ことでした。それをきっかけに、或人から今までの陽気な笑顔が失われていきます。最終回にもつながるお話なのであえて杉原監督にお尋ねしますが、人気キャラに成長したイズを"死なせて"しまうというのはかなり思い切った決断だったのではないでしょうか。
個人的には1年もの間ずっとかわいがってきたキャラですから、田崎組と合同でホン(脚本)打ち合わせをしたとき「ああっ、死んじゃうんだ!?」という動揺がありました。
――『ゼロワン』の最終展開は暗く重々しいドラマが続きますが、魅力的な各キャラクターそれぞれがどのような結末を迎えるのかが気になりすぎて、日曜の朝からかなり緊張感をもってテレビを観ていた方も多かったと思います。
確かに。次の『魔進戦隊キラメイジャー』が底抜けに明るいムードでやっていますから、最終回近くの『ゼロワン』との温度差がすごいことになっていたかもしれません(笑)。それだけ『ゼロワン』に興味を持ってくださり、キャラクターの行く末を心配してくれた方がたくさんいらっしゃったのは、本当にありがたかったですね。