「コーチング」という言葉、ビジネスパーソンやスポーツ経験者であれば一度は聞いたことがあるでしょう。
コーチングとは、指導対象が目標を達成するために実践する指導方法のひとつで、ビジネス・スポーツ・ライフスタイルと、ジャンルを問わず活用できます。指導を受ける側の意識が変わることで望む結果を得られるコーチングですが、そのためには指導をする側のコーチングに対する知識や理解、スキルが欠かせません。
本記事では、コーチングの基本や得られる効果、実践方法などについて紹介します。
コーチングの基本 - コーチングとは? ティーチングとの違い
コーチングとは? 由来と実際の指導例
コーチングは「組織や個人がより早くより効率的に、ゴールを達成する助けとなること」です。
「コーチ」は「人を目的地(ゴール)に運ぶ手段」であることから、世界ではじめて大型乗合馬車が走ったハンガリーの「コチ」という地名に由来しています。馬車が「人が行きたいところに送り届ける」ことから、目的を持った人の指導者を「人の目的達成を支援する」という意味でコーチと呼ぶようになりました。
コーチングは、コーチが指導対象者であるクライアントに対して「目標を効率的に達成するために何をしなければいけないか」を気づかせ、行動を促していきます。コーチングを短距離走の指導例でみてみましょう。
■指導例)
「もうちょっとで昨日のタイムを上回れそうだったね。今日と昨日で何か違っているところある? 」
「今日は新しいランニングシューズで走りました」
「走りにくかった? 」
「走りにくさは感じませんでしたが、足がまだ慣れていないかもしれません」
「そうか。じゃあ足を早く慣らした方がいいね」
「もっと走り込みます」
「あと、靴を変えてから少しフォームが変わっていたよ」
「本当ですか。動画を見せてもらえませんか? 」
「ほら、ストライドが少し狭いだろう」
「本当ですね、次はもう少し足の開きを意識してみます」
コーチはクライアントと対話を重ね、どうすれば目標を達成していけるのか、クライアントから引き出していくことがコーチングです。
コーチングとティーチングの違い
さまざまな指導方法において、コーチングと混同されがちな手法に「ティーチング」があります。コーチングとティーチングの違いは、目標達成するための答えが「指導者側にあるかどうか」というところにあります。
ティーチングでは、目標達成のための答えは「指導者側」にあります。目標達成のためにどうすればいいのか、指導者がクライアントに教えることで目標達成を目指します。
一方、コーチングでは、目標達成のための答えは「クライアント」にありますが、指導時点ではクライアントはそれに気づいていません。指導者は目標達成のための答えを、対話や問いかけによってクライアントに気づかせるのです。
指導過程において、ティーチングは指導側の発言が多くなり、コーチングは双方の対話を通して、クライアントの主体的な発言が多くなります。
どちらの指導方法も目標達成に有効ですが、コーチングは目標達成のための答えをクライアントから引き出していくことから、クライアントがある程度スキル・経験がある場合に向いていると言えます。指導対象者のスキルやタイプによって使い分けましょう。
コーチングの効果 - メリット、デメリットは?
コーチングで得られるメリット
コーチングでは、次のような効果・メリットが得られます。
- クライアントの自発性・主体性・考える力を育み、応用力や再現性なども高めることができる
- クライアントの個性を活かし、内に秘められた可能性や潜在能力を引き出す
- 目標達成の過程において、クライアントのモチベーションが維持できる
- クライアントの問題解決能力が向上する
コーチングは、クライアントが自ら考え行動することで目標達成できるようにサポートをしていくために、基本的にはクライアントの意思を尊重します。その結果、クライアントの個性を活かしながら潜在能力・問題可決能力を高め、モチベーションを保つことができるのです。
デメリットはある?
クライアントの意思を尊重し、自発的な目標達成を促すコーチングにも、次のようなデメリットがあります。
- 他の指導方法と比較して、目標達成に時間がかかる
- クライアント自身の経験やスキル・知識が不足している場合に効率が悪い
- 一人ひとりの個性と意思と対話をしながら実施するため、同時に多人数を指導するのが難しい
対話を重ねていくコーチングは、指導者とクライアントとの信頼性が重要です。信頼を構築するためには一定の時間がかかり、またクライアントの個性と意思を尊重する必要があります。そのため、個々のクライアントに合わせた個別の対話が重要です。
知識やスキル・経験には個人差があり、ゴールが同じでも目標を達成するためのリードタイムが必然的に長くなります。
また、コーチングを受けるクライアントのスキルや能力が不足していれば、どんなに対話を重ねても目標達成のための答えに到達できない可能性もあります。